週末、Bリーグ「アーリーカップ2018」が6地区同時開催で行われた。東北地区は仙台89ERS(B2)、関東地区はアルバルク東京が2連覇、東海地区は名古屋ダイヤモンドドルフィンズ、北信越地区は富山グラウジーズ、関西地区では琉球ゴールデンキングスも2連覇し、西日本地区は熊本ヴォルターズ(B2)がそれぞれ優勝を飾った。天皇杯、Bリーグ・チャンピオンシップに次ぐ三大タイトルのひとつと銘打たれている。しかし、ヘッドコーチや選手たちはプレシーズンゲームの一環として捉えており、勝っても負けても「この時期に課題点が浮き彫りになって良かった」という声が多く聞かれた。新戦力のお披露目とともに、今大会で得た課題を開幕戦までにどれだけ修正し、精度を高めていけるか。ここからが本当の戦いのはじまりである。
オンザコート3を試す三河に対し、名古屋Dは「逆に走ってやれ」
平均年齢27歳の名古屋Dは、B1西地区において平均年齢が一番若い。9月13日(木)にはFIBAワールドカップ アジア地区2次予選でのカザフスタン戦が近づいていることもあり、張本天傑選手が不在だった。また、笹山貴哉選手もケガをしており、10人での戦いを強いられる。逆に、決勝を戦ったシーホース三河はめずらしく日本代表選手が一人もおらず、フルメンバーで参戦できていた。
今シーズンから、試合中は常に外国籍選手を2人同時に起用できる『オンザコート2』に変更された。しかし、ベンチメンバーも2人しか認められず、その起用法は「難しい」とヘッドコーチたちは声を揃える。決勝戦では、第1クォーター早々に名古屋Dに新加入したマーキース・カミングス選手が2つ目のファウルを犯してしまう。そのために、1クォーターはオンザコート1で凌ぐしかない状況を強いられる。逆に三河には帰化枠の桜木ジェイアール選手がいる。昨シーズンと違い、外国籍選手に加えて帰化選手も1人まで保有でき、なおかつ同時に起用できるのも新ルールだ。追いかける三河は、第3クォーターに桜木選手を含むオンザコート3を投入した。
「昨日(準決勝・茨城ロボッツ戦)は短い時間だったがうまくいった。しかし、今日はマイナスだった。主力選手が抜けた部分を、そこで埋め合わせしていかなければならない。でも、それだけに頼るつもりはないが、オンザコート3の時間帯も必要になる。試していきたい」と鈴木貴美一ヘッドコーチは、高さでイニシアティブを取る手法だった。しかし、インサイドが逆に混み合ってしまってうまく機能せず、まだまだ模索段階である。
対する名古屋Dの梶山信吾ヘッドコーチは「試合前、もしオンザコート3で来たら『逆に走ってやれ』と言った。そうすれば必然的にアウトナンバーができる」と準備していた。自信を持って真っ向勝負したことが功を奏し、その時間帯に二桁点差まで開く。決勝戦の名古屋Dvs三河は、10月6日-7日にドルフィンズアリーナで行われる開幕戦と同じカードだ。その中においても、「出し惜しみすることなく全部出しきろうと話して臨み、それを選手たちが遂行してくれた」という梶山ヘッドコーチ自身も、この無鉄砲な戦いを楽しんでいた。
うれしい初優勝!若いチームが得た大きな自信
名古屋Dの5人の新戦力たちは、「チーム意識がすごく高い選手ばかり。選手たちが自然とまとまっているのはすごく大きい」と梶山ヘッドコーチが感謝するほどのチームワークの良さで優勝をつかむことができた。「アーリーカップとはいえ、はじめての優勝なので素直にうれしい。選手たちにとってもはじめて優勝を経験する選手も多いので、過信にならずに、若いチームなのでこれを自信にしてもらいたい」と来たるべき新シーズンへ向けて、良い弾みとなる。
敵将の鈴木ヘッドコーチは、名古屋Dのマーキース・カミングス選手を「これまでなかった新しいタイプの選手であり、あのようなプレーをするとは思わなかった。体も強いし、速い選手」と評価している。パワフルなプレーで20点を挙げた。
滋賀レイクスターズから移籍してきた新戦力の一人であり、先発ポイントガードを任された小林遥太選手。昨シーズンまでは出場機会も、勝ち星にも恵まれなかったが、思い切って一歩踏み出したことで状況が一変した今を喜んでいた。
「今回は天傑とササ(笹山)がいない中でしたが、それでも優勝できたことは自信にもなりますし、あいつらが帰ってきたらまたさらに強くなることは確実です。このメンバーでも優勝できたことがうれしいです」
Bリーグ公式サイトでは『第三のタイトル』と明記されているが、クラブや選手、そしてファンとともにその温度差を感じている。それでも小林選手は「全部のタイトルを獲れるチャンスがあるので、全部優勝できるようにがんばっていきたいです」としっかりと欲張っていたのは心強い。開幕まですでに1ヶ月を切っている。暑い夏が過ぎ、熱いバスケシーズンがやって来るのもまもなくだ!
文・写真 泉 誠一