戦力の揃っているアルバルク東京に対し、リーグからの懲罰で5試合の出場停止処分を受けているジョシュア・スミスを欠く京都ハンナリーズ。
チャンピオンシップのクォーターファイナル、A東京と京都のゲーム1は、インサイドで圧倒的な存在感を放つ、リーグ屈指のセンターがいない京都の不利が予想された。
しかしそんな予想は、本業のジャーナリストでもアナリストでもない筆者の安易な思い込みだったのか。
ふたを開けてみれば、第1Pから岡田のロングレンジが面白いように決まり、アウトサイドを中心に、序盤のゲームは京都ペースだった。
新人王候補の伊藤が、A東京の誇るバックコート陣を相手にスピードと緩急でかき回し、隙をついて放たれる京都のジャンパーは、高確率でネットを揺らした。
レギュラーシーズン中はインサイドを中心に固いハーフコートバスケットを展開する、といったイメージの京都だったが、この日のスリー攻勢はまさに奇襲。A東京のディフェンスは後手に回り、前半だけで京都に45得点を与えてしまった。
前半終了時点で、ホームに詰めかかけたアルバルクファンはやきもきしていたはずだ。
だが、A東京に焦りはなかった。第3P開始直後、エース田中の連続得点で点差を詰める。エースに引っ張られるように、ディフェンスの強度を上げ、京都のターンオーバーを誘発したA東京は、怒濤のオフェンスで一気に点差を縮めることに成功した。
前半ビハインドのA東京だったが、率直に言って筆者はA東京に、”おれたちはいつでもギアを上げられるぜ”といった余裕のようなものを感じていた。
もちろん選手は皆、常に全力でプレーしており、そんな余裕とは無縁だったかもしれない。会見ではルカHCも、京都は手強いチームでありタフなゲームっだったと、険しい表情で話していた(最も、彼の表情はおよそいつでも険しいが…)。
実際、京都も伊藤のフローターや、ハッスルプレーヤー片岡の速攻バスカンなどで簡単には主導権を渡さない。
勝負の分かれ目は第4Pの開始5分だったように思う。
オンザコート2の京都は、得点源となっていた伊藤を休ませ、ジュリアン・マブンガとマーカス・ダブの2メンゲームでスコアしようと試みる。
ルカHCも警戒していたマブンガから始まる攻撃だが、これをA東京はザック・バランスキーのしつこくハードなディフェンスで最小限に食い止めた。
残り5分で、京都は伊藤をコートに戻すが、一度A東京に傾いた流れを取り戻すことはできず、最終スコア82-75でゲーム1を落とす結果となった。
ゲーム後に京都の浜口HCは、プレータイムのマネジメントについて、自身のミスを認める発言をしていた。
京都はロスターに欠員がいるわけだが、調子の良かった前半にもう少し選手を休ませることができていれば、後半の展開は違ったものになっていたかもしれないということである。
京都は伊藤、岡田、永吉が30分以上プレーしている。
しかし例えば伊藤だが、かれは現状まぎれもなく京都の得点源の一人であり、オフェンスを司る絶対的な存在だ。ある程度頼り切りになるのは、チーム事情からしても仕方がないようにも思ってしまう(同じく富山のエースガード、宇都は40分出ずっぱりということがあった)。
そもそもレギュラーシーズンの60試合を闘ってきて、やっとの思いでたどり着いたチャンピオンシップだ。負ければ終わりで結果が全て。”最後の最後だしやってもらわないと”と言いたくもなりそうなものだが、そう言わないのが、浜口HCが浜口HCたる所以なのだろうか。
浜口HCには理論派のプレーヤーズコーチという印象があるが、それを再確認した一言だった。
だが、これも筆者の勝手な印象ながら、bjリーグ時代から京都には、一発勝負にはあまり強くないというイメージがある。
火事場のクソ力的なものを出してでも勝ちにいく、という理屈を超えたエナジーのようなものが京都から出れば、第2戦も充分にチャンスはあるはずだと思っている。
筑波大時代から熱い男、坂東あたりがプレータイムを得て、いい仕事をしないだろうか。まぁこれも筆者の勝手な想像ですので、あしからず。
文・写真 吉田宗彦