8連敗と後半に失速したレバンガ北海道。新潟アルビレックスBBとの最終戦もビハインドを背負う厳しい戦いであったが74-72と逆転勝利し、ホームでファンとともに笑って終えることができた。昨シーズンは東地区4位だったが、大きく順位を落とした今シーズンは最下位(6位)。しかし、26勝34敗と3勝増え、リーグ全体を見ても18チーム中11位と2つ順位を上げている。目標としていたチャンピオンシップ出場は果たせなかったが、強豪ひしめく東地区でも戦えることは証明できた。最終節の新潟戦は1勝1敗だったが、5月6日(日)は過去最多となる6299人を記録。翌月曜日も4883人を集客し、今シーズンの結果以上に今後の期待の現れでもある。
全ての選手にチャンスがあるチーム
若手選手の成長によりベテラン陣も役割に専念
まもなく5月14日にめでたく48歳を迎える”鉄人”折茂武彦選手(兼クラブ代表、兼Bリーグ理事)。昨シーズンの平均8.9点より若干スタッツは下がったが、それでも平均7.9点を挙げた。これは北海道の日本人選手の中ではトップであり、しっかりと戦力として結果を残している。「ケガなく、体調が悪いこともなく、コンディションをしっかり作って全試合に臨めました。でも、それはプロ選手としては当然の仕事であり、内容としては自分が納得するものではなかったです」と今シーズンを振り返る。
折茂選手とルーキーたちは四半世紀もの年齢差がある。その若い選手たちが、臆することなく折茂選手に指示を出したり、対等に話している姿を見ればチームが円滑に回っていることが見て取れた。
「最後に勝ちきれず、チームとしてはつらい時期が続きましたが松島(良豪)や川邉(亮平)たちはこれから未来のある選手であり、彼らにとっては非常にいい経験をしています。厳しい状況の中で自分が何をすべきかということは経験でしか味わえないですし、試合に出て経験することが彼らの成長に繋がります」
川邉選手は平均7.9分から15.7分へ、関野剛平選手は平均7分から18.6分へ、特別指定選手としてやって来た昨シーズンより大幅に出場時間は増えた。自ずとスタッツも伸ばしており、チームとしての厚みも増した。それによって折茂選手や桜井良太選手、野口大介選手らベテラン陣も役割に徹することができ、全体的なパフォーマンスが向上している。
「全ての選手にチャンスがあるチームです。時間をシェアしながら自分の良いところを出しながらも、後輩たちにカバーしてもらうところは任せつつ、我々はチーム力で戦うスタイルなのでそういう面では若手が非常に今期も成長してくれました。楽だという言い方はちょっとおかしいですけども、自分の仕事に専念できたという思いはあります」
他のチームにとってまだ脅威であり続けられていると思えば、ちょっと自信に思って良いのかな
Bリーグではもちろんだが、NBAを見ても47歳以上の現役プレーヤーはいない。そんな折茂選手に対し、「毎年毎年のことですが、昨シーズンよりも今シーズンはよりマークがきつくなっています。なんで(まもなく迎える)48歳のおじさんが、あんなに若い選手たちから思いっきりヘルプにも行かずにマークしてるのかなって。(ディフェンスは)離しておけば良いじゃん、もう年なんだからって思うんですが、ガッチガチに削ってきますからね」と遠慮も容赦もない。
千葉ジェッツ戦で大野篤史ヘッドコーチは、「折茂さんの得点は単なる2点や3点ではなく、レバンガにとって勢いをもたらせるので、そこだけは徹底して抑えるようにした」とあからさまに警戒していた。それこそが現役である以上、折茂選手が求めていることでもある。
「他のチームにとってまだ脅威であり続けられていると思えば、ちょっと自信に思って良いのかな」
だからこそ、「僕自身は得点を獲ることにすごくこだわりを持っているし、それが自分の仕事だと思っています。なかなかそこがうまくいかないとストレスが溜まってしまい、自分でもうまくいかないパターンが多くなってしまっています」と納得はしていない。「来シーズンもまだ続けるとしたら」と前置きをした上で、さらなる意欲を見せていた。
「当然、いろんな形で得点を獲るために自分でどう動けば良いか試行錯誤しながら考えないといけないです。僕はダウンスクリーンを使うから、これまで以上にマークマンは上から張って行かせないようにしてきました。相手もいろんな対策をしてくるので、来シーズンもしやるならば僕自身も進化していなければいけない。新たな得点の獲り方を考えていかなければならないんでしょうけど……とりあえず、疲れましたね」
クラブ運営は上向き、合計入場数は11万人越え
休む間もなくクラブ代表としての新シーズンがスタート!
選手としての仕事が終われば、「当然、代表の仕事が待っており、これからの方がヤバいですからね」と顔をしかめる。すでにスケジュールはビッシリと詰まっているらしい。折茂選手自身は来シーズンの去就について、「ちょっと休ませてもらって、考える時間が欲しい」と明言は避けた。折茂選手より得点を獲る日本人がいない以上、まだまだ働かなければならないはずだ。
クラブ運営では平均3743人と昨シーズンより千人近く増加させ、合計入場者数は11万人を超え、栃木ブレックスや琉球ゴールデンキングスを抜いた。収益増を見込むことができ、ようやく北海道として将来を見据えることができる。
「今季は厳しい戦いになってしまいましたが3年後、5年後、10年後と我々がしっかり上を目指し、上位に居続けるチームになれるようにしたい。そのためにもこの経験は必要だったのかなと思います」
今シーズンのチームをベースに、しっかりと積み上げていくことが大切である。懸念されるのは、マーク・トラソリーニ選手と再契約できるかどうか。バスケットは世界的に移籍金が発生する仕組みがない。Bリーグはサラリーキャップもないので、お金のあるクラブが引き抜くことも簡単にできてしまう。北海道の強化育成は目を見張るものがある。資金力で負けているクラブは時間をかけて戦力を育てなければならない。ようやく芽が出てきたにも関わらず、簡単に他のクラブに摘まれてしまってもきた。サラリーの良い方を選ぶのは選手のためでもあるが、育てたクラブへの恩恵として移籍金が発生する仕組み作りも今後の検討材料となるだろう。折茂理事としてBリーグにどんな提案をし、改革を進めていくかも期待したい。
文・写真 泉 誠一