前半や後半の立ち上がりに勢いづける最高のラインナップ
今シーズン挙げた平均得点は84.5点。シーホース三河(85.1点)に次ぐ2番目だが、富樫勇樹選手がケガから復帰し、アキ・チェンバース選手が先発を任されるようになった3月以降は平均92.3点と爆発力を誇るのが今の千葉ジェッツである。強豪揃いの東地区を制するまでマジック1が点灯した。大きく得点力が向上した点について、本誌フリーペーパー今月号をスタイリッシュに飾る大野篤史ヘッドコーチに説明していただいた。
「ディフェンスのインテンシティ(強度)レベルを上げ、走れるビッグマンがいるので、速攻につなげることができている。そこを対応されても、コーナーやウィングで3Pシュートを打てる選手がいることが僕らのトランジションオフェンスの肝になっている。あとはハイピックから(富樫)勇樹の1on1など、スペースを使って攻めることもできる。ディフェンスがハードにできており、そこにアキ(チェンバース)がしっかりセットしてくれているからこそオフェンスにも良い影響が出ている」
富樫選手も「今年のジェッツは、数字的には分からないけど第3クォーターに離しているイメージがある」と爆発力の要因を感じていた。富樫選手が復帰した3月3日のサンロッカーズ渋谷戦から前節のレバンガ北海道戦までを振り返ってみると、その答えがハッキリする。19試合中、第3クォーターが最多得点となったことは9回とほぼ半数に及ぶ。オンザコート数がすべて1-2-1-2であり、同じオンザコート1の時間帯となる第1クォーターでスタートダッシュできた試合も7回あった。第3クォーターだけではなく、大事な立ち上がりに勢いづける最高の組合せが確立できている。
ヘッドコーチと話し合って決めたことなので、特にネガティブな感情はありません
今シーズン、開幕戦から13試合の先発を任されていたのは石井講祐選手だった。昨シーズンもほとんどの試合を先発で起用されていたが、14試合目以降はシックスマンに回っている。その心境について聞けば、「ヘッドコーチと話し合って決めたことなので、特にネガティブな感情はありません」。「スタメンでもベンチスタートでも、僕の場合はどっちでも大丈夫かな」と余裕の笑顔を見せ、チームの勝利に向かって自分の役割に徹している。
前節はゾーンディフェンスを多用してきた北海道に対し、大野ヘッドコーチは「コーナーが必ず空くことはわかっていた。最初はうまくボールが入らなかったけど使い続けたことで、良い3Pシュートを打てるようになった。今後に向けて良い練習にもなった」と石井選手を18分間出場させ、その期待通りに8点を挙げている。味方のオフェンスファウルによってノーカウントになってしまったが、幻の3Pシュートも決めており、調子は良さそうだ。
「千葉のオフェンスは激しいディフェンスやリバウンドからはじまっています。トランジションを出すためにも、ディフェンスから僕やアキがしっかり体現しないといけないですし、そこを常に意識しています」
先発はチェンバース選手になったが、石井選手はこれまでと変わらずにディフェンスから入るスタイルで持ち味を発揮している。平均92.3点の爆発力あるオフェンスは、シックスマンである石井選手らがセカンドブースターとしてつないでいるからこそ、その威力が増している。
東地区チャンピオンまであと1勝!チャンピオンシップでも対戦濃厚な川崎と対戦
千葉はすでにチャンピオンシップ・クォーターファイナルのホーム開催(5月12-13日/船橋アリーナ)が決まっている。シーホース三河の46勝11敗に次ぐ44勝13敗であり、勝ち上がったセミファイナルもホーム開催射程圏内にいる。残りの3試合は、現在の結果にあてはめるとチャンピオンシップの前哨戦になりそうだ。5月2日は川崎ブレイブサンダース、最終戦の5月5-6日は琉球ゴールデンキングスと対戦。指揮官はこれまでと変わらない戦いを明言していた。
「今持っている自分たちの力を発揮したい。誰かを休ませるとか、チャンピオンシップでどこと当たるかなどは僕らがコントロールできるわけでもない。僕らは60試合を通して成長し、課題と収穫を見つけてチャンピオンシップに臨むだけ。次の川崎戦はニック(ファジーカス)が帰化選手としてはじめての試合になると思うので、そこは良い前哨戦になると思っている。良いチャレンジをしていきたい」
琉球は42勝15敗で2勝差しかない。仮に2連敗してしまえば、セミファイナルに勝ち進んだ場合は沖縄旅行が待っている。富樫選手は台風に伴う順延となった今シーズンのアウェーゲームを引き合いに出し、「また台風が来るかもしれないので、クォーターファイナルに勝たなければならないことはもちろんですが、ホームでできることが一番大きい。そこを目指していきたいです」。
今シーズン限りでの引退を表明した伊藤俊亮選手とは、昨シーズンからともに戦ってきた石井選手。「最後に優勝できるチャンスがあり、優勝という結果を最後のプレゼントではないですが、それを花道に引退させたいという気持ちはチーム全体としてあります。最後まで一緒に、チーム一丸となって戦いたいです」と大きなモチベーションになっている。次節の川崎は伊藤選手にとっては古巣との対戦となる。その試合に勝てば、東地区チャンピオンが決まる。天皇杯に続き、リーグ制覇へ向けても追い風になるはずだ。
文・写真 泉 誠一