文武両道を掲げ、仕事もバスケも全力投球で打ち込む大塚商会アルファーズ。B3リーグを主戦場としているが、企業チームのために昇格は視野に入れていなかった。
企業チームとして唯一、3つのステージすべてに参戦し、B3優勝を目指して臨む今シーズン。ファーストステージこそ6チーム中5位と出遅れたが、他の企業チームも参戦し、全9チームで争われるレギュラーシーズンは23勝9敗の好成績で2位となった。ファイナルステージは半分を終え、6勝4敗で現在3位。B1ライセンスを得て年間ランキング1位でB2昇格へ向かう東京八王子トレインズは(9勝)1敗しかしていない。大塚商会は3ゲーム差で追いかけており、残り10試合あるファイナルステージでの逆転優勝を狙っている。
平均12.5人を起用し、全員バスケで勝利を目指す
前節は八王子とともにB1ライセンスが交付された埼玉ブロンコスと対戦し、1勝1敗。取材した4月22日の2戦目は85-93で痛い一敗を喫した。「負けるときはこんなもんだろう、という試合がある。何度も同じ映画を見ているような感覚」と青野和人ヘッドコーチは表現し、弱点が露呈したことで自ずと結果が見えていた。埼玉戦へ向け、「相手の3Pシュートとピック&ロールからビッグマンがダイブしてくるところを警戒」し、そこを対応しながら得意のオフェンスに持ち込んだ初戦は92-84で勝利している。しかし翌日は9本もの3Pシュートを許し、歯止めがきかなかった。
シーズン全体を通して見れば、大塚商会は躍進を遂げている。現時点で昨シーズンと同じ52試合を終え、33勝19敗(62%)。昨シーズンの27勝25敗(52%)より戦績は上回っている。今シーズンのファイナルステージは10試合増えたことで、今後の結果次第ではさらなる前進が期待される。
青野ヘッドコーチは、「選手たちがどこで攻めれば良いかが昨シーズンよりも明確になってきた。実行力が良くなったことで、オフェンスでイニシアチブを取れたからこそ勝てるようになっている。チームとしてまとまって戦えていることも勝利に結びついている」と好調の要因を挙げた。埼玉に92-84で勝利した試合のアシスト数は27本、3Pシュートは62.5%(10/16本)と高確率で決めているのもその現れである。
B1やB2は12名だが、B3は15名までベンチ入りが可能だ。青野ヘッドコーチのスタイルとして、「1シーズンを通して1試合平均12.5人を必ずコートに立たせている」。チーム練習には半分ほどしか集まらない日がほとんどであり、文武両道を掲げる大塚商会の実情でもある。それでも選手たちは、試合に向けてそれぞれが準備しているからこそ、多くの選手がコートに立てる策をヘッドコーチは考えて週末のゲームに臨む。実戦経験こそが成長への近道であり、「選手の生かし方とコート上で得られる経験がチームにとってはどんどんプラスになっている」ことを実感していた。
仕事もバスケも目標に向かって120%コミットするメンバー
東証1部上場企業のサラリーマンとして忙しい日々を送りながら、週末はB3での戦いを繰り広げている選手たちに対し、「本当に感謝をしている」という青野ヘッドコーチ。
「優勝を目標設定し、それに向かって120%コミットしてくれるメンバーである。B2への昇格がないからといって、真剣にプレーしない選手は一人もいない。なぜここに集まって優勝を目指そうとがんばっているかといえば、単純にバスケが好きで、目の前の試合に勝って仲間と一緒にその喜びを分かち合いたいだけ。そんなメンバーだからこそ、なおさら結果を出したい」
なかなか有望な選手をリクルートするのが難しいB3だが、「選手個人の能力だけで押し返されることはほとんどなく、戦術で仕掛けていけば自ずと結果に表れるので分かりやすい」リーグであり、ヘッドコーチとしても成長できる環境と感じている。試合に向けた準備を怠らなければ、自ずと結果に現れる。それを観るファンにとっては、「人間味溢れるアップダウンが試合中にあるのがおもしろい」。
1997年創部の大塚商会は2004年から2部リーグ(日本リーグ、JBL2、NBDL)に参戦し、昨シーズンからB3で企業チームとして全うする選択をしてきた。しかし、Bリーグの盛り上がりが追い風となったか、プロクラブとなって昇格を目指す体制作りが検討されはじめている。すでに、ユニフォームには新たなホームとなる『越谷市』とプリントされていた。働きながらバスケができる環境も素晴らしいが、高いレベルで戦いたいのがアスリートでもある。
諦めていたB2やB1への希望が見え始めた今、選手たちのモチベーションは自ずと高まっていた。会社を説得させるためにも、結果が必要だ。ファイナルステージ優勝へ向け、さらにチームの結束を高めて残り10試合に臨む。
文・写真 泉 誠一