B1はチャンピオンへ向けて、B2やB3は昇格を目指し、一戦必勝の戦いが続いている。尻上がりに調子を上げている茨城ロボッツは、目下11連勝中でB2中地区首位に立った。
B2プレーオフへの出場権は、B1とは違い東・中・西地区の上位1位と、ワイルドカードも各地区2位の中から勝率が一番高い1チームを合わせた4チームだけの狭き門である。東地区は秋田ノーザンハピネッツ、西地区はライジングゼファー福岡がすでにプレーオフ出場を決めた。西地区2位の熊本ヴォルターズが37勝16敗でワイルドカード圏内トップを行く。続くファイティングイーグルス名古屋と福島ファイヤーボンズは32勝21敗(茨城も同じ)で5ゲーム差ある。7試合しかない残りを考えれば、熊本が最有力と言えよう。茨城が首位に立っているが、FE名古屋と勝率は並んでいる。B1同様にB2も中地区が混戦状態であり、最後までもつれそうだ。
流れを生み出すコンボガードコンビ
中地区において、唯一B1ライセンスを取得したのが茨城である。「それが相乗効果を生んで良い流れになっていると思います」と平尾充庸選手は言うように、追い風となって連勝を重ねている。
2011年、大学日本一を決めるインカレにおいて、11年ぶりに関東勢以外がベスト4入りした天理大学出身の平尾選手。持ち前の明るさとキャプテンシーでチームを引っ張り、台風の目となって勝ち上がっていった。卒業後、すでに休部が決まっていたパナソニックトライアンズに進み、1シーズン限りではあったが天皇杯優勝を経験している。翌シーズンには東芝(現川崎ブレイブサンダース)、3年目は広島ドラゴンフライズへ移籍。良き指導者の下で学び、トップレベルのライバルたちと切磋琢磨しながらキャリアを積んできた。バンビシャス奈良を経て、今シーズンより茨城に移籍してきた。同じく山形ワイヴァンズから髙橋祐二選手を獲得し、茨城に足りなかったポイントガードを補強。それが功を奏し、平尾選手と髙橋選手のコンボガードコンビが快進撃の起点になっている。
平尾選手は「全員でロボッツの試合をしよう」とチームを引っ張る。その一方で11連勝を挙げているからこそ、「しっかりと自分たちのバスケットとは何なのかを突き詰めて、より強いロボッツを作っていかなければならない」と引き締めていた。
「ディフェンスから速攻につなげること」が茨城のスタイルであり、211cmのリック・リカート選手を軸にインサイドではアドバンテージがある。
「その強みを生かしたり、眞庭(城聖)選手が気持ちよくシュートを打てるようなプレーを心がけています。まずは髙橋選手とともにガード陣がスクリーンをかけたり、アシストしたりすることでそのアドバンテージを生かすことが自分たちのバスケットなのかなと思います」。
平均16.7点のリカート選手をはじめ、思い切り良い3Pシュートでチームを勢いづける眞庭選手は平均13.1点とチームの得点源として活躍している。その流れを生み出しているのが平尾選手と高橋選手のコンビでもある。
「髙橋選手もそうですが、我々ガード陣がアタックしない限り周りの選手が生きてこないです。自分たちが得点を狙っているからこそディフェンスが寄ってきて、周りの選手が空くのでアシストにつながっていきます。僕と髙橋選手がどんどん今のバスケットを続けていくことが、これからのロボッツに必要になってきます」
11連勝目を挙げたFE名古屋戦では髙橋選手が20点、平尾選手はチームハイとなる28点と活躍し、相手にとっては的が絞りにくい状況を作っている。
強いチームっていうのは芯がブレない
中地区首位突破、B2プレーオフ出場はあくまで通過点でしかない。B1昇格へ向けた本当の戦いで負けるわけにはいかない。多くの経験をしてきた平尾選手は、「勝つことの難しさも、優勝するチームの雰囲気も知っています。日ごろの練習から良い雰囲気に持っていけるように、自分自身が率先してできれば良い。また、強いチームっていうのは芯がブレないんですよね。その強さがあるからこそ、勝負どころでターンオーバーもしない。そういうチームにロボッツもしたいと思っています。そのためにも仲が良いだけではダメ。細かい部分も言い合えるからこそ、どんどん絆も深まってくる。強いチームにするためにはコミュニケーションが一番大事です」と指摘し、さらなる高みを目指してチームを引っ張っている。
連勝中のチームは誰もがリーダーになって、勝手にうまく回るものだ。勝ち続けることが一番だが、勝負に絶対はない。負けたときやうまく行かなかったときこそ、それを踏み台にして強くならなければならず、精神的支柱となっている平尾選手がいるからこそ、今シーズンの茨城は負けないチームへと一皮剥けることができつつある。
次節は、今シーズン負けなし2連勝中の岩手ビッグブルズとアウェーで対戦する。連勝を伸ばし、翌週に控える1勝3敗と苦手な群馬クレインサンダーズ戦とのホームラストゲームへ向けて弾みをつけねばならない。その群馬は今週末、FE名古屋を破って2位に浮上するかもしれないし、逆に茨城の結果次第ではふたたびFE名古屋が首位に返り咲くかもしれない。
熾烈な中地区による負けられない三つ巴の戦いの行方やいかに──
B1ライセンスを得たことで、山谷拓志社長は、「観客動員をもう少し伸ばしたい。現時点で平均2千人くらいまでにはならないといけない」と課題を挙げた。ホームの青柳公園市民体育館開催時の平均入場者数は1632人。しかし、連勝中の勢いに乗って、後半戦のここ5試合は平均1924人と目標値に近いところまできている。4月28日-29日に行われる群馬とのラストホームゲームは、連日2千人オーバーすることでB1昇格へ向けても拍車がかかる。
文・写真 泉 誠一