「完敗です」──千葉ジェッツの大野篤史ヘッドコーチは潔く負けを認めた。大晦日と元日に行われた東地区1位のアルバルク東京ホームゲーム。1ゲーム差で追う千葉が、2連勝すれば首位に入れ替わることもできた直接対決。しかし結果は初戦57-56、元日ゲームは67-49とA東京の堅守の前に2連敗を喫した。
「エネルギーとインテンシティを持ったディフェンスをし、アグレッシブかつスマートに40分間を戦い続けてくれた」とルカ・パヴィチェヴィッチヘッドコーチは勝因を挙げていく。週末連戦となるBリーグのスタイルに対し、「前の試合が終わってから24時間も経っていないことでリカバーも難しいが、それでも1戦目以上のインテンシティでディフェンスレベルを落とすな」と士気を高めて2戦目に臨む。「メンタル的にもフィジカル的にも昨日以上の2倍の力で戦った結果」として、強豪千葉を49点に抑えるクラブ史上最少失点記録(Bリーグのみ)を更新して勝利をつかんだ。千葉にとっても50点以下に抑えられたのは初めてのことである。
エースを欠いても守れば勝てることを証明
この2連戦は体調不良のためエースの田中大貴選手を欠き、2戦目は馬場雄大選手が足を痛め、途中で戦線離脱している。それでも守り抜けば、試合に勝てることを証明してみせた。得点がたくさん入ることがバスケットの醍醐味でもある。それを覆すディフェンシブなゲームではあったが、そのレベルやインテンシティの高さとともに、攻めるようなディフェンスにファンは魅了されていた。年末年始のホームゲームで勝利を飾れたことは、何よりのプレゼントになったはずだ。
ディフェンスに重きを置くルカヘッドコーチ。ヘルプディフェンスを極力選択させず、選手一人ひとりに責任を持たせてマークマンを守りきることを日頃から徹底させている。49点に抑えたA東京のディフェンスはフリースローのときさえ、プレッシャーをかけ続けているのかと思わされた。タフなディフェンスとファウルは隣り合わせにある。千葉に26本のフリースローを与えたが、これをことごとく外し16本しか決められないほどだった。
「千葉は小野(龍猛)のポストプレーが他のチームも苦戦している部分だが、(菊地)祥平がよく抑えてくれた」とルカヘッドコーチはキープレーヤーを挙げた。その菊地選手のスタッツを見ると、アシストこそ3本とチーム2番目の働きだったが、自身は1得点しか挙げていない。それでもこの日の殊勲者は菊地選手だった。
「チームとしてオフェンス目線では見てはおらず、とにかくディフェンスを徹底させている。その中で祥平はディフェンスで素晴らしい仕事をしてくれた。マッチアップする小野に対して快適にプレーさせなかったことは大きなキーとなった。この2戦とも、祥平の働きは万全だったと評価している」
ルカヘッドコーチも全幅の信頼を寄せるキャプテンシーを発揮し、チームを円滑に動かしていた。
タレント豊富なA東京だが若い選手が多く、不安定な部分は否めない。そこを菊地選手や正中岳城選手といったベテランがしっかりと声をかけ、または自ら汚れ役となって体を張ることがA東京の負けない強さである。
よりタフに、よりエナジーを高め、よりボールに対する執着心のある、泥臭いことができるチームへ
「この2連戦はA東京の方がタフだった。そのタフさに屈してしまった」と敗れた千葉の大野ヘッドコーチは言い、そのタフさこそ選手たちに求めている部分でもある。
「ディフェンスは一生懸命やっていたとは思うが、最後のボールに対する執着心やルーズボール、セカンドチャンスまでをディフェンスと捉えて、しっかりとボールを獲りきってから自分たちの展開を生まなければいけない」
49点しか挙げられなかったうち21点のギャビン・エドワーズ選手、13点のレオ・ライオンズ選手はそれぞれ1on1から打開する場面が目立った。チーム平均19本を誇るアシスト数も、たった8本に終わっている。対するA東京はチームオフェンスでパスをつなぎ、15本と倍近い。12点のファストブレイクポイントを挙げたA東京に対し、同じく武器であるはずの千葉は5点に抑えられていたのもディフェンスでのタフさの違いが際立ってしまった。
この2戦により、今シーズンの通算成績は3勝1敗でA東京が上回った。「でも、これが最後ではないので、しっかり僕たちも彼らよりもタフなチームになれるように今後は修正していかなければならない」と大野ヘッドコーチは前を向く。試合後のミーティングでは、「ゲームだけタフにやれば良い、いつでもスイッチが入ると思ってたら大間違いだ」と檄を飛ばした。
「今まで練習中にはできていたことが試合に出せなかったのは、相手の方がよりタフだった何よりもの証拠。そこを自分たちでどう練習から準備し、毎回の練習を大切にしていくことが大事な部分。よりタフに、よりエナジーを高め、よりボールに対する執着心のある、泥臭いことができるチームになっていきたい」
それぞれ違う道を進む天皇杯〜オールスターの約2週間
千葉にとっては目が覚める敗戦として捉え、すぐさま訪れる天皇杯での二連覇に挑むだけだ。その千葉の初戦は、いきなり東地区同士の対戦となる栃木ブレックス。日本一を争う一発勝負のトーナメントだからこそ、さらなるディフェンシブな戦いが予想される。よりタフな戦いをしなければならないことに気付かされた千葉が、どう切り替えて臨めるかが注目である。国内最高峰となるさいたまスーパーアリーナでの日本一決定戦とあり、これまでとは異なる環境の中で、自分たちの実力を出し切るためにもタフさが必要だ。
一方、日本代表3人を欠いた状態で臨んだ3次ラウンドで、惜しくも敗れたA東京は束の間のオフ期間に突入する。天皇杯にA東京がいないのは残念ではあるが、「この期間を利用して、チーム練習を積み重ねて磨きをかける時間にしたい」とルカヘッドコーチは話しており、2部練習も辞さない構えである。練習からタフなチームが強さを証明した東地区首位決戦をだった。それを目の当たりにしただけに、強化期間にあてられるA東京の後半戦での変化が楽しみである。
文・写真 泉 誠一