第7節を終え、3勝10敗。昨シーズンと変わらぬ定位置の中地区最下位にいる。湊谷安玲久司朱選手とジェイソン・ウォッシュバーン選手を早々にケガで欠いたのは誤算だったが、最下位を抜けられない現状はある意味では想定内。古田悟ヘッドコーチは、第1段階としてトランジションを速くすることから着手し、改革を始めたばかり。三遠ネオフェニックス戦ではフルコートディフェンスから速攻に切り替えるスタイルの向上は見られ、初戦は69-65で接戦を制し3勝目を挙げた。翌日も最後まで追い上げを試みたが70-76で敗れ、連勝には至らなかった。それでも少なからず、ポジティブな部分が見られている。
敗れはしたが、スタッツを見ればポジティブな数字が目立つ
敗れていること以上に前節のサンロッカーズ渋谷戦も含め、外国籍選手が2人しかいない中でも勝ち星を挙げた方を褒めたい。三遠に敗れた2戦目のスタッツを見ても、アシスト27本、スティール10本、ターンオーバー7本と上出来な数字を残している。「細かいシュートミスの部分が入っていれば80点近くに点数を伸ばすこともできていた」と古田ヘッドコーチが振り返るとおり、最終的に42.9%まで伸ばしたフィールドゴール率だが、第3クォーターまでは38.9%とシュートが決まらないもどかしい試合でもあった。
勝敗を分けた第3クォーターは、14-28とダブルスコアで大きく点差を開かれている。古田ヘッドコーチは「ソフトなディフェンスになってしまった」ことを敗因に挙げた。後半もさることながら、試合の入り方が良くない。第1クォーター開始4分までの間にタイムアウトを取った試合が、3戦連続していることがその状況をよく表していた。トランジションバスケットの意識改革とともに、個々のディフェンスのレベルアップを図るのも古田ヘッドコーチが課す第1段階の課題である。
「チームディフェンスよりもまずは1on1でボールを持たせないことができておらず、そこから崩れてしまった。チームの前に、個人で身体を張ってがんばらないといけない部分があり、練習から徹底させていきたい」
ほぼフル出場でプレーし続けたジェフリー・パーマーの献身
外国籍選手が2人しかおらず、ハシーム・サビート・マンカ選手が「ブロックに行ってもどうしてもファウルを取られてしまうケースが多い」と古田ヘッドコーチも頭を悩ませ、三遠との2戦目はファウルトラブルにより早々に交代させるしかなかった。それによりジェフリー・パーマー選手は孤軍奮闘。最後の最後でファウルアウトしたが、ほぼフル出場となる39分43秒間コートに立ち、献身的にプレーし続けていた。
その活躍を労うとともに、現状を伺いたくパーマー選手を取材に指名。目の前に現れた瞬間、淡いパープルのハットにハッとさせられる。上から順になめるように見ていくとかわいらしいシャツを着ており、暖かな素材がミックスされたシューズが秋の装いを演出。あまりにオシャレな出で立ちに、急きょ写真を撮らせていただく時間を取った。
さて、話題をバスケットに戻そう。外国籍選手が一人足りず、パーマー選手への負担は増えている現状だが、それを嘆くようなコメントは一切ない。「チームのために戦っているわけであり、勝つためにやるべきことをするだけ」と淡々と笑顔で応えてくれた。パーマー選手への負担は今シーズンに始まった話ではない。昨シーズンも途中でウォッシュバーン選手が戦線離脱し、ファイ・パプ月瑠選手(ライジング福岡)とともに30分以上プレーし、奮闘していた。
Bリーグとなり、NBAでのキャリアを持つ猛者が増え、三遠戦もマッチアップしたカルティエ・マーティン選手はNBA経験者である。来日8年目を迎え、日本のバスケットを熟知するベテランは、「どの選手に対しても自分の仕事をするだけなので、NBA選手だからとかは関係ない」と言い切る。その言葉どおりの活躍を示し、22点/12リバウンドを挙げた三遠との初戦は勝利に導いてくれた。
プレーだけではない。率先して選手とのコミュニケーションも取っており、英語での意思疎通ができる田渡凌選手とは「お互いにチームを良い方向に持って行こうと話し合っている」と言い、その頻度も多い。さらに、「まだまだいろんな経験が必要であり、そのサポートができるようにいろんなことを伝えているよ」とルーキーを育てる役割も買って出ている。
横浜の最大の強みは昨シーズンからメンバーが大きく変わっていないところだ。パーマー選手もそこをメリットとして捉えており、「間違いなくチームケミストリーは良いし、昨シーズンの同時期に比べたらやるべきことはすでに分かっている。ただ、シュートが入らなかったりアンラッキーな部分はあるが、絶対に上向くと信じているよ」と心強い。「大きな支えになっている」と感謝するファンを安心させるためにも一つひとつ勝利を積み上げていくだけだ。
次こそ2連勝!次戦は2ゲーム差で追う富山グラウジーズと対戦
60試合と長いシーズンの20%を消化した現時点をどう受け止めるかで、今後の成長は大きく変わる。同じメンバーで2シーズン目を迎えながら、同じ成績では選手たちの力量を疑うしかない。それを覆すための戦いが次々とやって来る。次戦は、ともに昨シーズンの残留争いをしていた富山グラウジーズをホームに迎える。「僅差の相手であり、連勝すれば順位で上回ることもできる。試合後のミーティングで選手たちは、次こそ2連勝するという強い気持ちが表れていた」と古田ヘッドコーチは言い、すでに気持ちを切り替えていた。
外国籍選手が2人しかいないビハインドの状況に指をくわえているわけではなく、新戦力獲得に向けてすでに動いているそうだ。敗れた三遠戦でシュート率とともに足りなかったのはリバウンド。そこを補える選手さえいれば、自ずと上向く可能性を秘めている。
文・泉 誠一 写真・安井麻実