大野ヘッドコーチが警告したにも関わらず、足りなかったエナジー
大阪エヴェッサ戦へ向けた練習時、大野篤史ヘッドコーチは「60試合の中で簡単なゲームは1試合もない」と釘を刺していた。
ピンクリボン月間である10月にちなみ、レディースデーと題した千葉ジェッツはいつもの赤よりも薄いピンクジャージーで登場。10月21日(土)に行われた初戦は気持ちもソフトになってしまったのか、「選手のエナジーも、ディフェンスのインテンシティも足りず、リバウンドでも執着心がなかった。全てが誤算」と大野ヘッドコーチは、怒りを押し殺しながら淡々とコメントを残すしかない結果であった。
桶谷大ヘッドコーチが「出だしはできすぎ」と言ったが、先にアグレッシブに仕掛けたことで第1クォーターは29-14と大阪が先手を取ることに成功する。エナジーが足りないピンクの千葉は、なかなか自分たちの流れを呼び込めない。いつもとは違う状況をベンチで感じていたアキ・チェンバース選手は、交代でコートに入るとアグレッシブにプレーし、オフェンスリバウンドを奪ってチャンスを作る。自らも14点を挙げる活躍をしたが、序盤に引き離された点差が最後まで響き、84-68で逃げ切った大阪が2勝目を挙げた。
大阪のプレッシャーディフェンスに対して千葉のシュートが決まらず、オフェンスがうまくいかない状況が続く。「自分たちがディフェンスでリズムを取れなければオフェンスも乗れません。第1クォーターで29点も獲られてしまったことが全て。失点が多すぎですし、相手に完全にリズムを持って行かれてしまいました」と富樫勇樹選手は反省点を述べる。ディフェンスからチームを立て直さなければならなかったが、その歯止めがきかないまま40分間が過ぎてしまった。
エナジーが足りなかった敗因について富樫選手は、「相手は1勝5敗でこっちは5勝1敗。ほんの少し気持ちの面で、力の差があると全員が思って試合に臨んでしまっていたんだと思います」と振り返るとともに、「選手全員が反省をして、もう一回明日の試合に臨まないといけない」と気を引き締めていた。
初めてのピンクジャージー着用というトリビア
2012年、秋田ノーザンハピネッツでプロの道を歩み始めた富樫選手だけに、ピンクのイメージがある。ピンクジャージーを着用するのは久しぶりかと思っていたら、「実は一度も着たことがないんですよ」という答えが返ってきた。そうだ、あの頃の秋田は稲穂をイメージとした“いなほゴールド”だった。「1度だけDリーグ(NBA育成リーグ。現Gリーグ)では着たことがありました。秋田は今、真っピンクを着ているのでそのイメージが強いとは思いますが、実は僕自身は一回も秋田でピンクを着たことがない」というトリビアを富樫選手自身が披露し、メディアの皆さんとともに「へぇ〜」と頷いてしまったのは言うまでもない。
これまで京都ハンナリーズと大阪に敗れた千葉だが、「やっぱり東地区が強い」と富樫選手は即答しており、下馬評通りの東高西低は揺るぎない。10月21日の試合を終えた時点で東地区27勝17敗、中地区20勝22敗、西地区18勝26敗という結果もそれを示している。また、唯一勝ち越しているのも東地区だけだ。ゆえに、オーバーカンファレンスでの取りこぼしは後々大きく響く可能性もある。
次戦10月25日(水)には、同じ東地区のレバンガ北海道を迎えるホームゲーム(千葉ポートアリーナ)が待っている。「北海道は強い。東地区は大変ですねぇ」と他人事のようにつぶやく富樫選手。だが、千葉が掲げる最初のミッションを達成するためにも東地区を制さなければならない。
「東地区同士でつぶし合う分、もしかすると昨シーズンより負けが多くなるかもしれません。でも、混戦となるシーズンを戦い抜くことで、チームとしての成長はかなりできるとも思っています。昨シーズンも、栃木(ブレックス)が一番タフなスケジュールだったわけですし、千葉とアルバルク(東京)と8試合ずつ戦い抜いたことで良いチームとなり、優勝まで上り詰めました。勝率は気にせずに、でも今シーズンこそ必ずホーム開催でのプレーオフ進出を絶対に成し遂げなければいけない。チームとしての完成度を徐々に高めていきたいです」
文・写真 泉 誠一