10月10日の平日ナイトゲームは延長戦の末、新潟アルビレックスBBに敗れ、今シーズン初黒星を喫した。ルカ・パヴィチェヴィッチヘッドコーチ(以下ルカコーチ)は、練習中から常に「アルバルクは負けられないチームだ」とプレッシャーをかけている。周りからも優勝候補と言われ、その期待に応えるべく取り組んでいるアルバルク東京は、翌10月14日の第5戦で横浜ビー・コルセアーズを79-58と一蹴した。先発で起用し続けてきたキャプテンの湊谷安玲久司朱選手とジェイソン・ウォッシュバーン選手をケガで欠く横浜を相手に、「自分たちが勝つべき試合をしっかりと勝てて、まずは良かった」と記者会見では開口一番、ルカコーチは語っていた。
選手層の厚さを誇るアルバルクは試合毎に活躍選手が変わるシステム
この試合のチームハイとなる18点を挙げたのはジャワッド・ウィリアムズ選手。前節は田中大貴選手が20点、敗れた新潟との2戦目はアレックス・カーク選手が24点を挙げた。「11名の素晴らしい選手が集まっており、選手層が厚い」とルカコーチは自信を持っており、「試合毎に活躍する選手が変わるシステム」が構築されている。
結果的に点差は開いたが、横浜のゾーンディフェンスに対して思うように攻められない時間帯もあった。その悪い流れを打開していったのが正中岳城選手や菊地祥平選手、そして「ゾーンをしてくることは分かっていたので準備してきた」というドライブアタックを見せた竹内譲次選手らベテラン勢の活躍が光った。
互いにオンザコート2の第2クォーター、3つ目のファウルを犯したハシーム・サビート選手を下げ、横浜の外国籍選手はジェフリー・パーマー選手だけ。身長差で優位に立つA東京だったが、「相手がゾーンでインサイドを小さく守ってきたが、外からのシュートが入らなかったときに、自分たちで焦ってしまった」と竹内選手が感じており、攻めあぐむ時間帯でもあった。その結果、第2、第3クォーターの点数は38-40、横浜の方が上回っている。安藤誓哉選手、ケガから復帰した小島元基選手のポイントガード陣に対し、「2人はまだまだ学ぶことは多く、成長して欲しいことがオフェンスとディフェンスともに多くある。ゾーンを攻略するには経験が必要だ」というルカコーチは若手の成長を促している。“負けられないアルバルク“を体現するためにも、彼らのレベルアップが必要不可欠である。
ヘッドコーチの情熱に選手たちはもっとついていく必要がある
ルカコーチの細かい指導スタイルを反映するように、選手一人ひとりに細かな役割が課されている。「もちろん選手の感性でプレーしなければいけない部分もありますが、コーチのフィロソフィーに基づいて、チームとして必要なことをやっているだけ」と竹内選手は言う。それぞれの仕事を全うできたとき、自ずと選手個人としての成果が出るとともに結果に結びついているのが、今のA東京だ。
「真剣に、全力でぶつかってくる」ルカコーチに対し、選手らは「全力で戦わなければならない」とも竹内選手は言っている。当たり前のことではある。だが、その熱量の違いがチーム力の差となり、シーズンが進むにつれて如実に結果として現れてくるだろう。それはチーム内でも同じことであり、「勝利に対してコーチ自身がプレッシャーをかけており、もっと選手たちもその気持ちについていかなければいけない。コーチと選手の間で少しその温度差があるように感じる。コーチの情熱や1試合1試合に懸ける思いをもっと強く持つ必要がある」と竹内選手が話すとおり、その差を埋めることでチーム力は高まっていく。
竹内選手がルカコーチに全幅の信頼を寄せているように、A東京のオフェンスの起点となるのがパワーフォワードであり、「そのポジションでのアドバンテージを生かして得点をもぎ取ることを求めている」。昨年末の日本代表からルカコーチの指導を受けている竹内選手は、自分自身の成長を実感していた。
「練習中から積極的に攻めるよう、コーチには言われている。今、そこが自分の中でもすごく良い感覚でできていると感じている。7月末からコーチの下で本当に良い準備ができ、その差でアーリーカップも優勝できた。ここから先は、さらに良いステップを踏めるかどうかが大事になる。試合には、練習でやってきたことだけしか出せないと常に思っている。練習でやったことを試合で出せるようになることで、その上のレベルである国際試合でもできるようになるとも思っている」
クラブから世界のスタンダードへと引き上げていくことが、悲願である東京オリンピック出場へ向け、明るい光を差すことになる。日本の強化を担うB.LEAGUEであり、A東京は全員で高いレベルへと向かって、日々の練習からインテンションを高めている。
だが、期待値が高いがゆえにどこか物足りなさを感じてしまう。長年支えてきたファンの方々と話せば、同じような感想を持っていた。もちろん、ルカコーチが目指すバスケットはもっともっと高いところにあるはずだ。
文・写真 泉 誠一