開幕4連勝、B1復帰へ向けて好スタートを切った秋田ノーザンハピネッツ。この4試合だけに留まらず、プレシーズンゲームや東北アーリーカップを含め、これまで全て勝利している。「連勝しているだけあって雰囲気は良いですし、大きなケガもなくみんな健康に来ており“絶好調”です!」と田口成浩選手は笑顔を見せた。
“ペップ流”の斬新なディフェンススタイルと選手起用
平均身長192.1cmとB2トップの高さを誇り、B1経験者が残る秋田はハーフコートバスケットでも盤石な強さを示すことはできるだろう。しかし、新指揮官であるジョゼップ・クラロス・カナルス(以下ペップ)ヘッドコーチは、「私は12名全員を使うスタイルであり、アップテンポなバスケットをするためにもアグレッシブなディフェンスとトランジションゲームが必要です」という信念を持っていた。
プレータイムを見れば、目指すべきスタイルが顕著に表れている。過去3シーズンにおいて全ての試合で先発を務めてきた田口選手は、これまで30分以上のプレータイムを与えられていた。しかし今シーズンは平均23.2分。当初はワンサイドゲームになることが多く、ラクしているのではないかと疑念を抱くも、「しんどいですよ」と即答。試合を見れば一目瞭然、オフェンスはもちろんだが、ディフェンスやリバウンド争いも超攻撃的であった。
「今までバスケットをしてきた中でも初めてであり、斬新なディフェンススタイル」という印象を持つ田口選手。多くの時間をフルコートでプレッシャーをかけ続けるディフェンスに対し、コートに立つ選手たちは100%の力を出し切り、消耗すればどんどん交代させながらチーム全員で戦っていた。それにより田口選手のプレータイムは減ったが、確かにこれまで以上にしんどそうだ。
「先発メンバーを固定するつもりはない」とペップヘッドコーチは断言する。これまでの4試合で、先発を任された選手が9人いるのも斬新な“ペップ流”だ。選手たちの士気を高め続けながら危機感を持たせ、役割を固定させないことを意図している。さらに、「選手たちは練習で100%の努力をしており、どの選手も先発で出られる権利を持っている」とペップヘッドコーチが言うように、チーム全員でハードワークしている証でもある。試合毎に変わる先発メンバーだが、それを言い渡されるのは試合直前であったり、「先発メンバーを紹介するアナウンスで知る」こともあると田口選手は打ち明け、笑いを誘った。全てにおいて斬新な“ペップ流”に興味が沸き、オフシーズン中のトレーニングについて田口選手に遡ってもらった。
勝手に体が作られていった“ペップ流”の規則正しい2部練習
「基本的に2部練習ですが、練習時間は午前と夜でした。ヘッドコーチ曰く、午前中に練習することで必然的に早起きしなければならず、規則的な生活が送れる。時間を空けて夜に練習をするのも、昼間はゆっくり休ませることとプライベートな時間として過ごして欲しいと、ペップヘッドコーチは言ってました。夜練をした後は、翌日も練習があるから早く寝なければならず、食事もしっかり摂ることができたことで、勝手に体が作られていったのも“ペップ流”なのかなと、今思えばそう感じます」
“ペップ流”が功を奏し、体が大きくなった選手たちがコンディション良く開幕を迎えられたことも、この快進撃につながっている。
田口選手自身のプレーにフォーカスすると、これまで以上にドリブルを突くなどと変化が感じられた。「ピック&ロールが多くなり、ピックがうまく使えないと自分の武器であるシュートも打てないです。また、パスを出せるようにならないとその後の自分のプレーにもつながりません。そこは練習中から細かい部分を指導してくれています。こんなプレーもあるのかという新たな発見も多いですし、それもまたすごく斬新です」とレベルアップしている。B1復帰もさることながら、田口選手にとっては日本代表に返り咲くことも見据えている。日本代表と同じようなスタイルとなったことは大きなメリットと言えよう。
「FIBAアジアカップでの日本代表戦を見ましたが、今はピック&ロールが増えてきています。もし、自分がその一員になったらどう動けば良いかを当てはめながら見るのですが、今の田中大貴(アルバルク東京)や比江島(慎/シーホース三河)のようなプレーができるのかと照らし合わせたときに、まだまだそこには達していないと自覚しています。でも、そこに近づくためにも自分の良さを生かしながら、しっかりとビジョンを持って取り組んでいます」
常にB1レベルを意識させる“ペップ流”とともに、B2全体のレベルを上げる使命
B1に比べてディフェンスの強度やシュート率の低さがB2のレベルであると田口選手は感じている。「ペップヘッドコーチは今のままではB1のレベルではないと常に言ってますし、自分たちもB1で戦ったときにこのレベルで良いのかと常に考えています」と言うように、B2レベルを基準に勝利だけを求めるような準備はしていない。それだけではない。「自分たちのレベルアップとともに、ハードにプレーしなければ秋田とは戦えないと思わせることでB2全体のレベルも上げていきたいです」と田口選手は高い志を持ち、B.LEAGUE全体を高める役目を自らに課していた。
11月25日にトッケイセキュリティ平塚総合体育館で行われる天皇杯では、富山グラウジーズと対戦する。だが、「今のままでは負ける」という危機感を持っていた。対戦までの2ヶ月弱で、「少しずつ積み重ねていきながら最高の状態で富山戦を迎え、その勢いで川崎(ブレイブサンダース)にも勝つという目標があります。自分たちのバスケットができれば結果はついてくると思いますし、自分たちを信じるだけです」。ぶっちぎりの勝利でB1昇格が期待される秋田だが、田口選手はキャプテンとして「何連勝とかは関係なく、先を見すぎないようにしています。一つひとつの試合に全力を出して勝つことに目標を置きながらみんなを鼓舞していきたいです」と浮き足だってはいない。
B2での戦いを糧にしっかりとバネを縮めて、大きな反動でB1昇格を狙っている。「本当に強いチームになってB1に戻らなければならないですし、昇格してもまた下位争いしていては同じことの繰り返しです。今はB1昇格だけではなく、その舞台でどう勝つかを考え、模索している段階です」と高いレベルでの課題を持って日々ハードワークしている。
東・中・西地区の首位チームは全て4連勝を挙げた。秋田は今週末、ホームのCNAアリーナ★あきたに中地区首位の信州ブレイブウォリアーズを迎え、負けられない戦いが続く。
秋田ノーザンハピネッツ
第93回天皇杯・第84回皇后杯 全日本バスケットボール選手権大会
文・写真 泉 誠一
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Vol.13(10月号)特集「2017-18 B.LEAGUE 2ND SEASON開幕」