東海・北陸アーリーカップで2連敗を喫した三遠ネオフェニックス。3位決定戦では、B2の信州ブレイブウォリアーズに敗れてしまった。
だが、そんな不安を払拭するように、先週9月17日は大阪エヴェッサに78-49で快勝。昨日9月24日に行われた最後のプレシーズンゲームは、強豪多き東地区の中でも優勝候補に挙げられるアルバルク東京を相手に、84-78で接戦をものにしている。いずれの試合も、外国籍選手はスコット・モリソン選手しかいない状況でつかんだこの勝利は大きな自信となった。
勝負のかかる終盤でも、多くの日本人を起用できる層の厚さ
敗れたA東京のルカ・パヴィチェヴィッチヘッドコーチは、「オフェンスが粘り強い」「スムーズにボールが回って、オープンな3Pシュートを決められてしまった」「三遠は2人の外国人選手がいない中で、84点を獲ったことが素晴らしい」と敗因とともに次々と三遠の特長を挙げ、その勝利を称えていた。
一方、藤田弘輝ヘッドコーチはチームの仕上がり具合について「まだ5割」と言う。「チームのやるべきベーシックな部分は変わっていない。昨シーズンの主力メンバーがほとんど残ってくれたこともあり、選手たちがチームの求めるバスケットを理解し、遂行しようとしてくれている。その分、チームとしての完成度は他のチームよりも早い段階で高くなっているだけ」というのが現在地であり、まだまだ積み上げなければならないことも多い。
「昨シーズンはチームのベースを作るために、なるべくハッキリとしたシンプルな戦術だった。だが今シーズンは、その部分の質を細かく詰めていきたい。また、戦術が少なければ相手のレベルも高いので、容易に太刀打ちできないのがB.LEAGUE。ディフェンスでも、攻撃でも、もっとパターンを持っておかなければいかないと実感したので、そこを上積みしていきたい」(藤田ヘッドコーチ)
A東京戦では日本人選手の厚みが増しているように感じられた。それに対し、藤田ヘッドコーチは「川嶋(勇人)のような大きいサイズのガードが加入したことで、チームのバリエーションがすごく増えている。昨シーズンの4クォーターは限られた人数で回していたが、今シーズンはたくさんの選手を起用できるようになってきた。また、チーム内でプレーイングタイムを勝ち獲るために選手同士が競争している。オンコートでは、さらにバランスの取れたバスケットができるようにもなってきている」と日々成長を感じている。
チームスタイルである「ディフェンスからトランジション」の要となるディフェンスで貢献
コンディション不足でアーリーカップを欠場した田渡修人選手だったが、プレシーズンゲームでは元気な姿を見せている。川嶋選手と熾烈なポジション争いしながらも、良いケミストリーが生まれはじめている。
「勇人はインサイドもできるしガードもできる、もちろんシュートも打てる、とても器用な選手です。その中で勇人が困っているときには、自分から崩してアイツが楽にシュート打てるようにしたり、逆のパターンもあったりと良い形ができはじめています。昨シーズンもそうでしたが、今シーズンはさらに誰が出てもみんな同じバスケットを遂行できるようになっているのが強みです」(田渡選手)
昨シーズン、チームを勢いづけた田渡選手の3Pシュートについては、「さらに質を高めていきたいし、動きの部分をもっともっと高めていきたいです。本数が多くなくてもしっかり決められるような選手になりたい」と抱負を語る。加えて、「今日はディフェンスで貢献できた部分が多かったです。チームのベースとなるディフェンスからトランジションというスタイルを忘れずに、今シーズンはディフェンスや3Pシュート以外のプレーでも注目されるように一生懸命やっていきたいです」とその幅を広げていた。
コート内でよくしゃべり、コミュニケーションに長けている三遠の一番の強みはチームワーク。田渡選手も「確かに、それが一番」と胸を張る。
「チームワークと言えば簡単に思えるかもしれませんが、このチームはひとつのことに対してしっかり遂行する能力が本当に高いです。誰もサボることなく、ずっと同じ強度でディフェンスをしたり、誰かがやられればそこはみんなで埋めていくことなど、全員でバスケットをしています」
平均年齢30歳を越える三遠にあって、27歳の田渡選手ら中堅世代の活躍がチームを勢いづけてくれるはずだ。
60勝を目指して全員で戦っていきたい!
プレシーズンゲームにその姿はなかったが、NBAワシントン・ウィザーズ等で活躍したカルティエ・マーティン選手は期待の星である。軽いケガのため、試合に帯同しなかったがチーム練習には参加しているようだ。藤田ヘッドコーチも田渡選手も、マーティン選手のリーダーシップを特長として挙げていた。一方で指揮官は、「今、チームはすごく良い状態であり、そこに2人(マーティン選手とロバート・ドジャー選手)が入ってくることによって流れが変わってしまうかもしれない不安はある。だが、それでもアジャストさせて、今日勝利したバスケットにしっかりと上積みさせていきたい」と話している。チームワークを武器とする三遠ゆえに、「良いケミストリーはすでにできているので、シーズン開幕が楽しみですね」と田渡選手は全く心配していなかった。
田渡選手に目標を伺ったところ、「60勝を目指して全員で戦っていきたい」とサラッと言う。その瞬間はピンと来なかったが、60勝=レギュラーシーズン全勝を指している。東地区のレベルの高さが取り沙汰されているが、チーム力でA東京を破った三遠が『戦ってみなければわからない』ことをしっかりと示してくれた。
「中地区では(シーホース)三河が断トツに強いと言われています。昨シーズンはコテンパンにやられましたがしっかり見返し、60勝を目指して全員で戦っていきたいです。今シーズンが終わったときに『東地区ではなく中地区が強かった』、もっと言えば『三遠が強かった』と言われるように中地区から盛り上げたいです」と田渡選手は燃えている。
三河ダービー、さらに名古屋ダイヤモンドドルフィンズを加えた三つ巴の愛知県勢同士の戦いが中地区を熱くさせる。もう一つ、同じ中地区の横浜ビー・コルセアーズには弟の田渡凌選手が加入したこともホットなトピックスだ。
「意識しないと言えば嘘になります。これまでのミニバスや中学、高校時代は学年がズレていたので、初めて同じ舞台でバスケットできることがすごい楽しみです。一番負けたくない相手であり、チームとしても個人としても負けない自信はある。そこはしっかり見せつけていきたいです」
9.30開幕戦
京都ハンナリーズ vs 三遠ネオフェニックス(ハンナリーズアリーナ)
ホーム開幕戦
10/14-15(豊橋市総合体育館)
三遠ネオフェニックス vs 新潟アルビレックスBB
文・写真 泉 誠一