泥沼の10連敗中だった横浜ビー・コルセアーズが4月23日、新潟アルビレックスBBを81-73で破り、久しぶりの勝利をつかんだ。『絶対残留』の応援ボードを高く上げるファンや、勝利した後に涙する姿も多く見られた。「昨日も今日もそうですがファンの後押しがあり、この1勝だけでもこれだけ喜んでくれたことは僕たちもうれしい気持ちになります。逆に申し訳ない気持ちもありながら戦ったこの2日間のゲームでした」とキャプテンの山田 謙治選手は感謝していた。
当たり前のことを徹底させ、気持ちを強く持って戦い連敗脱出
今年2月以降は8連敗、その間に青木 勇人ヘッドコーチが体調不良となり、代理として指揮した尺野 将太アシスタントコーチが3月18日に大阪エヴェッサ戦で連敗を止めている。しかし、その後も復調する兆しが見られないまま再び連敗となる中、3月31日付で尺野ヘッドコーチが誕生した。「とにかくしっかり走って、コートを広く使いながらボールをシェアする。当たり前のことですが、以前まではボールに集まってしまう悪いクセがあった」という部分を修正したことで、これまでとは違いボールも人も動くようになっていた。第2クォーターにはフルコートゾーンプレスを敷いて、さらに点差を開いていく。前半は46-27と大きくリードを奪うことに成功した。
「昨日は3点差(●79-82)で負けてしまったが、その差は気持ちの問題。ミーティングでホワイトボードに書かれていることを100%できているかどうか、スカウティングで個人の役割をどう守っているかなど、ちょっとした差で負けてしまいました。そこをもう一回詰めていこうとミーティングで話して試合に臨みました」と言う山田選手。これが功を奏し、良いスタートを切ることができた。
最大25点差をつけていた横浜だったが、後半に入ると新潟の猛追に見舞われる。大量リードしても、山田選手は「安全圏ではない」と言う。それが横浜の現状でもある。
「そこからもう一回エネルギーを出して30点差、35点差と伸ばし、引き離していけるようにならねばならないです。先行逃げ切りではないですが、そうやって戦っていかなければ勝つのも厳しい。今日の出だしはすごく良かったと思うので、それを第4クォーターまで継続できるようになれば、この試合のようなゲームが常にできるようになるのではないかなと思います」
第4クォーターだけで5本の3Pシュートを許した。追い上げる新潟が、最後の場面でベンチテクニカルファウルを犯し、自滅した感も否めない。しかし、気持ちを強く持って戦い抜いたからこそ、勝利を引き寄せることができた大きな1勝でもあった。
申し訳ない気持ちでいっぱいだからこそ、B1に残らなければならない
本日4月24日に誕生日を迎える川村 卓也選手をはじめ、経験豊富なベテラン選手が、若い尺野ヘッドコーチを支えている。「練習中からお互いが思っていることを言い合っており、練習自体はすごく良い雰囲気でできています。それがなかなか結果につながらないのは、僕たちも歯がゆい思いをしていました。ポジション争いもチーム内で切磋琢磨してやっていますし、それにより誰が出てもゲームをコントロールできるのが自分たちの強みでもあります」と山田選手が言うように、ハーフタイム中はJBL2009-2010に栃木ブレックスでともにチャンピオンとなった竹田謙選手と川村選手とともに長い時間をかけて話し合っている姿は頼もしく見えた。
現時点で15位の横浜は残留プレーオフ圏内にいる。bjリーグ2013-14シーズン、前年に優勝していながらプレーオフ進出を逃した状況に似ているように感じていた。だが、試合前のチームの雰囲気や尺野ヘッドコーチの落ち着きを見たら、あの時のような悲壮感は感じられない。当時を知る山田選手は現状をこう話している。
「今回も残留争いになってしまっていることは、自分たちの責任でもあります。逆に言えば、自分たち次第で変われるということをBリーグ1年目の今はすごく感じています。辛いのは辛いですし、ブースターがたくさん応援してくれていますし、支えてくれているのに申し訳ない気持ちでいっぱいです。だからこそ、なんとかB1に残らなければならず、まだ5試合も残っており、その結果次第で変わるチャンスは全然あります」
当たり前だが、誰一人として残留プレーオフでの戦いを想定していない。女子日本代表のテクニカルスタッフとして世界を相手にスカウティングを行ってきた尺野ヘッドコーチだが、「B2の試合は見たことがない」と言い切った。次戦は中地区チャンピオンの川崎ブレイブサンダース、横浜文化体育館で行われる最後のホームゲームは2位の三遠ネオフェニックス、そしてラストはアウェーで再び新潟との2連戦が待っている。残留プレーオフ圏内から脱出するためには、上位チームとの厳しい戦いに勝たなければならない。
自分たちのストロングポイントを生かして勝機を見出す神奈川ダービー
川崎戦へ向け、「相手に合わせるのではなく、自分たちのストロングポイントをしっかり生かして戦っていきたい」と尺野ヘッドコーチは言い、この勝利を自信にしながら弾みをつけたいところだ。隙のない川崎だが、前節は富山グラウジーズに、そして昨日はサンロッカーズ渋谷にも敗れており、勝負に絶対はない。
「先週の三遠戦からミスしても、シュートが入らなくても、しっかりディフェンスに戻ろうということを練習中からコーチ陣からずっと言われており、その点に関してはだいぶできるようになってきています。もちろんまだまだ足りないですが、そこが良い兆しとして見えてきていますし、今日も前半はしっかりディフェンスをがんばって走れたということで最初にアドバンテージを取ることができました。いかにディフェンスで我慢して守れるかというのが、一番のカギになる」
山田選手はこのように話しており、自分たちのバスケットを遂行して、勝機を見出していくだけである。
ゴールデンウィークに突入する次戦はアウェーで神奈川ダービーに挑む。プレミアムフライデーとなる4月28日は、ビール飲み放題付きチケットが用意されているとどろきアリーナ。連敗を抜け出して勝利した後、尺野ヘッドコーチは、「この中に勝利の女神がいるはずです。ぜひ、次戦も応援に来てください」と呼びかけていた。筆者自身、自分の運を試すためにも会場に駆けつけたい。取材で行くか、はたまたビール飲み放題でバスケットを楽しむかが迷いどころである。
文・写真 泉 誠一