ともに東京都渋谷区にホームを構えるアルバルク東京vsサンロッカーズ渋谷の“渋谷ダービー”は、A東京が2連勝を飾った。SR渋谷のホーム・青山学院大学記念館に初戦は4,377人、翌日の2戦目は4,662人が、勝利を呼び込むディアンテ・ギャレット選手のブザービーターを目の当たりにした。最後までどっちが勝つか分からない接戦とともに、NBAからやってきた選手たちによる一流のプレーに酔いしれた。
1月18日にデビューしたロバート・サクレ選手は、昨シーズンまでロサンゼルス・レイカーズでプレー。A東京に新たに加わったジェフ・エアーズ選手は、NBA通算253試合出場の経歴を持つ。サンアントニオ・スパーズでは2014年にチャンピオンリングを獲得。昨シーズンはロサンゼルス・クリッパーズでプレーしていた。この2人のマッチアップだけを抜き出せば、“LA対決”が渋谷の地で見られたとも言える。
元NBA選手同士のマッチアップからBリーグをレベルアップ
「NBAでプレーした同士でマッチアップできたことが非常に楽しくて、チャレンジングな試合だった。その中でもサクレは良い活躍をした。でも、僕も自分の役割をして勝利に貢献できて良かった」とエアーズ選手は笑顔を見せる。対するサクレ選手は21点を挙げたが、「後半はみんなでハードにプレーし、自分たちの本来の力を見せることができていた。それなのに最後の場面でディアンテ・ギャレットに素晴らしいシュートを決められてしまった。本当にタフな敗戦だった」と悔しい表情で首を横に振る。
「昨年はクリッパーズでプレーし、本当に能力が高い選手であり、彼のことはしっかりと記憶しているよ」というエアーズ選手は、サクレ選手の印象をこう続ける。
「ビッグガイであり、グレートリバウンダー。NBAで経験を積んだグッドプレーヤーだよ。フィジカルが強いので、簡単に点数を与えないようディフェンスをしたけど、今日はサクレに良いシュートを決められてしまった」
元NBA選手同士のマッチアップを日本で見られる機会を歓迎するのは、ファンだけではない。「日本のリーグ自体がレベルアップしながら大きくなっていく中で、NBAを経験した選手がどんどん入ってくるのはとても良いことだ。ジェフのようなNBA選手とまたこうして日本で戦えることはすごく楽しいよ。それはBリーグにとってもすごく良いことだ」と言うサクレ選手は、同じような話をエアーズ選手とコート上でも交わしていたそうだ。
先に日本でのキャリアをスタートさせ、サクレ選手は17試合を戦い終えた。「レフェリーも一生懸命やってくれているが、コールの部分で試合によって違うことがある。それはどのリーグでも起こってしまうことであり、自分自身からしっかりと対応していかなければいけない」と課題点を挙げている。
8試合を終えたばかりのエアーズ選手は、「コート内はもちろん、コート外でもリーダーシップを取って、チームとして正しいプレーをしていくこと」を心がけながら、A東京とともにまだまだ発展途上段階である。コート上では体を張ってスクリーンをかけ、献身的なプレーに重きを置く。ベンチに下がれば声を出し、率先して盛り上げていた。同時期にやって来たトレント・プレイステッド選手も同じだ。ポイントゲッターのギャレット選手や田中大貴選手をはじめ、タレント豊富なA東京にエアーズ選手という大黒柱が加わったのは大きい。順応性に優れた選手だけに、チャンピオンシップまでにはしっかりと仕上げることで、A東京はワンランクもツーランクも強くなりそうだ。
声援が選手の力になるのはどのリーグでも必要不可欠
“渋谷ダービー”はいずれも5千人近いファンを集客し、NBAの大きなアリーナを経験する2人であっても興奮していた。ホームのサクレ選手は、「この2日間、こんな素晴らしい雰囲気の中でプレーできたことはすごく光栄だった。アウェーにまで来て応援してくれるファンにも感謝しているよ。この観客数と同じ数字を残りのホームゲームでも続けていけるようにしていきたい」と感謝の言葉があふれ出る。エアーズ選手も「アウェーだったが素晴らしいファンがいっぱい来てくれたし、それが自分たちのエネルギーになっている」と話すように、選手の背中を押すファンの声援はNBAも、Bリーグでも必要不可欠である。
NBA選手は一流のプロ選手だ。長くプレーを続けられていればいるほど、ホンモノである。見た目は強面で、コート上では気性が荒い選手であっても、ファンやメディアへのサービスは徹底している。何よりも勝利のために、チームのために汗を流し、職務を全うする。ぜひSR渋谷やA東京の会場で、NBAの迫力を間近で体感してもらいたい。
A東京の次戦は秋田ノーザンハピネッツと代々木第二体育館でホームゲームが行われる。中地区3位のSR渋谷は、アウェーでの大事な試合が控えている。3ゲーム差で追いかけねばならない同2位の三遠ネオフェニックスとの直接対決。前節を欠場したジョシュ・チルドレス選手(フェニックス・サンズやワシントン・ウィザーズなどでプレー)だが、『大事を取って』と発表されているように、SR渋谷戦に向けて調整したとも考えられる。今週末も元NBA選手同士の規格外のマッチアップが見られそうだ。
文・写真 泉 誠一