アウェイでのアースフレンズ東京Z戦に勝利し、14連勝中の島根スサノオマジック。Fイーグルス名古屋に一敗しただけのオーバーカンファレンスで17勝を積み上げて32勝6敗とし、B2トップの勝率を誇る。西地区同士の対戦時、ライバルの広島ドラゴンフライズに3勝1敗と勝ち越したが、熊本ヴォルターズには1勝3敗とリードを許している。オーバーカンファレンスが始まるまでは熊本が17勝3敗で西地区首位におり、直接対決で上回ったとは言え、15勝5敗で広島と並んでいた。
「オーバーカンファレンスが始まった時の順位は我々の方が下でした。広島や熊本の強さは分かっていますし、彼らは(他の対戦で)負けないだろうという気持ちで、1試合1試合『危機感』を持って臨んでいます」
勝久マイケルヘッドコーチは、「危機感」という言葉で今のチーム状況を表す。「ここ数週間はアウェイでのタフなゲームが続いています。『負けたら終わり』という気持ちで毎試合臨んでいることが、今のチームの強みにもなっています。オーバーカンファレンスで負けてしまったら、その後の西地区での直接対決では取り戻すことができない状況でもあります」と話していた。常に危機感を持ち、高い集中力で試合に臨めていることが、これまで勝ち切って来られた要因と言えよう。
「一番大事なのは焦らないこと」ゲームをコントロールできるベテランの安心感
東京Zとの2連戦はリードを奪われる状況でもあった。山本エドワード選手はこう振り返っている。
「2日間とも試合の入り方が悪く、後半にようやくスイッチが入ったことで自分たちのバスケットが徐々にできるようになっていきました。反省点も多かったですが、勝ち切ることができたというのは本当にデカいことだと思っています。また、最初から自分たちのバスケットができれば、もっともっと強くなれると感じさせられた2日間でした」
島根のストロングポイントとして「インサイド」を山本選手は挙げている。211cmのウェイン・マーシャル選手、機動力ある2mのジョシュ・デービス選手とライアン・リード選手はいずれも、bjリーグを通じて日本のバスケットを知っていることも利点である。
「インサイドをしっかり突いて戦えれば『負けない』と、自信を持って言えます。逆にインサイドで止められても、アウトサイド陣はシュート力もあるので、そこも自分たちの強みです」
山本選手を始め、各ポジションでベテランがしっかりとゲームを組み立てており、簡単には崩れない安心感もある。「一番大事なのは焦らないこと」と山本選手は話しており、そこが東京Zとの差でもあった。
「時間が無くなるにつれて、チームとしてやらなければならないことをコートに出ている5人が意思疎通し、遂行できるようにしなければゲームプランも組み立てられません。7年間、島根でプレーしてきてゲームプランは分かっているつもりです。今はそれを(岡本)飛竜に教えていくのも自分の役割です」
山本選手がしっかり状況を見極めてコントロールできていたからこそ、岡本選手が思い切り良く12点を挙げた活躍につながっている。
B1昇格を賭けたプレーオフは絶対に盛り上がる!
2試合しかないオーバーカンファレンスの戦いは3月12日まで続く。その後、西地区同士の争いが再びスタートする。広島と熊本のライバルたちとの直接対決は、たった2試合ずつしかない。B2からB1への昇格争いとなるプレーオフに出場できるのは、各地区上位1位の3クラブと2位の中から一番勝率が良いクラブの4つ。その4クラブでトーナメントを行い、上位2クラブはB1に適したクラブライセンスがあれば自動昇格できる。3位となったクラブは、B1残留プレーオフ下位3位のクラブとの入替戦が待っている。島根の尾﨑代表は、「クラブとしてはB1に上がれるだけの準備をしてきました。アリーナの計画もあります」と話しており、準備は万全。3月に予定されている理事会で、最終的な判断が下されるそうだ。
三つ巴の争いが続く西地区であり、現在3位の熊本は29勝9敗。東・中地区の1位クラブより勝率が良くても、昇格争いには進めないルールなのだ。山本選手も、「それが厳しいところです。正直な気持ちを言えば、B2全体の上位3クラブがプレーオフに出れば良いのではないかな、という思いもありますが、ルールなので仕方ない」と話し、最初で最後のB2でのシーズンと覚悟を決めて上を目指すのみ。
「そのためにも1位通過が一番ベスト。ブースターとともにB1に上がることが今の目標です。本当に今回が昇格できる最大のチャンス。勝ち上がりたい強い気持ちは選手だけではなく、ブースターや地域全体も同じ思いだと思っています」
東京Z戦はアウェイにも関わらず、多くのブースターと共闘していた。それが島根の強みでもある。
華々しく開幕したBリーグだが、B1とはあからさまな格差が生じているB2。山本選手は、「B2が置いて行かれている寂しさ」も感じていた。だが、B1昇格争いへ向けた熱い戦いが始まるB2は、これからがおもしろくなっていく。
「試合をするだけがプロの仕事ではないとも思っています。クラブ全体でBリーグを盛り上げることをしていけば、もっともっとB2自体も盛り上がるでしょうし、これから始まるプレーオフは絶対に盛り上がると思うので、楽しみの一つでもあります」
混戦なのは西地区だけではない。東地区は首位群馬クレインサンダーズから2位福島ファイヤーボンズを挟み、3位の山形ワイヴァンズまで5ゲーム差。中地区も1位Fイーグルス名古屋と2位西宮ストークスは2ゲーム差でひしめき合っている。西地区の3クラブが勝率でリードしている状況を鑑みれば、東・中地区は2位では上がれず、必然的に1位を目指さなければならない。厳しい戦いが続くB2こそが、Bリーグのレベルを上げていく大事な存在でもある。必死になってもがき戦い続けるB2に注目だ。
文・写真 泉 誠一