1月29日(日)の青山学院記念館にて、強豪ひしめく東地区2位の栃木ブレックスを相手に、中地区4位に低迷するサンロッカーズ渋谷が2回のオーバータイムまでもつれこむ熱戦を繰り広げた。昨シーズンまでNBAロサンゼルス・レイカーズで、コービー・ブライアントらスター選手とともにプレーしていたロバート・サクレ選手が加入したこともあり、試合6日前にはチケット完売。注目のカードは、その期待通りにヒートアップしていった。
残り9秒、SR渋谷の広瀬 健太選手がディフェンスをうまくかわしてジャンプシュートを決めて68-68、同点に追いつく。栃木のエース古川 孝敏選手が逆転の3Pシュートを狙ったが外れ、延長戦に突入した。ダブルオーバータイム、50分にわたる熱戦は78-82で栃木が勝利し、2連勝でこのカードを戦い終えた。ホームのSR渋谷が敗れてしまったが、ルーズボールを追いかけ、気持ちがこもった勝利に向かう熱いプレーは、観客席を埋めた多くのファンを満足させたことだろう。
SR渋谷のキャプテンであり、この試合会場でも配布していただいた弊誌最新号「エースの名にかけて」で紹介している広瀬選手に話を伺った。
ベテランもがんばってるよ!
ーー 前半終了間際の逆転3Pシュート、後半もラストプレーで同点に追いつくジャンプシュートを決め、エースとして自分が決めてやろうという気迫が感じられました。
自分たちのやりたいプレーではなかったですが、その中でも打ち切ることができました。2点をしっかり取って、積み上げていくことがチームとしての課題だと個人的にも思っています。第4クォーター最後の場面でしっかり2点を獲れたのは、個人的にも自信になります。自信を持って打ち切ったことが良かったです。
ーー エースとしての自覚を持って打ち切ろうと思ったのでしょうか?
そういうことではないです。競ったときに、自分が起点にならなければならないという気持ちではやっていますが、無理なシュートを打ってタフショットになってはいけないです。でも、最後のシュートは無理することなく、自分のタイミングで打てました。良い判断をしながらしっかり決められたことで、若手に対しても『ベテランもがんばってるよ』ということを見せられたのかなと思っています。
ーー 敗れはしましたが、SR渋谷として手応えを感じる試合になったのでは?
昨日(1月28日)も含めて、チームとして成長できていることを感じられる試合となりました。あとは勝ち切る力をどうつけていくかという段階に来ています。今までは強豪チームを相手に点差が離されてしまうと、どうしようもできないゲームでしたが、ロブ(ロバート・サクレ選手)の加入により、競ったゲームができるようになってきました。このチームのランクが一つ上がったという実感はあります。
ーー どちらかというと寡黙にプレーするタイプという印象を持っていましたが、昨シーズンからチームのキャプテンになり、日本代表では長谷川 健志ヘッドコーチから誰もがリーダーシップを持つように言われていたことで、コート上で声を出して引っ張る頼もしさを感じました。
キャプテンだからということはあまり意識していません。昨年の日本代表では、試合に出ている出ていないは関係なく、言うべき時にしっかり言うというのがベテランの役目でもあります。そのリーダーシップは、チームに戻っても変えてはいけないと思っていました。若手選手に声をかけるタイミングや、試合中はネガティブなことを言わないように意識はしています。あとは外国籍選手とのコミュニケーションは難しいところもあるので、相手の気持ちを考えながら自分たちがやりたいことをしっかりと伝えていくようにしています。
サクレ加入で「ディフェンス」のチームスピリッツを継承
ーー 新たに加入したサクレ選手をどう活かしながら、チームを向上させていくべきでしょうか?
ロブの一番のポイントは、ディフェンスとリバウンド。彼が加入したことで、すごくディフェンスが激しくできるようになっています。ディフェンスをがんばることができれば、アイラ(ブラウン)もいるしリバウンドを獲れるようになります。昨日の試合では、リバウンド1位の栃木に勝っていました(SR渋谷44本:栃木33本)。今日はロブが獲れなくても、周りの選手たちが絡んでリバウンドを獲ることもできていました。バスケットはリバウンドが大事であり、そこの意識は今後一層高めていきたいです。
ーー 選手は入れ変わりましたが、日立時代からディフェンスのチームという歴史は受け継がれているということですね。
そこはベースであり、『チームスピリッツ』として残していかなければいけない大切な部分です。ディフェンスに対する意識は、OBたちが残してくれたものをしっかりと培っていきたいです。
ーー 前半戦はケガ人がいたり選手が入れ替わったりと、戦力が揃わなかったSR渋谷でしたが、サクレ加入でようやくチームとしてスタートを切ったと言えるのでは?
長いシーズンを戦い、チャンピオンシップに向かいながら、そこで勝ち切るためにもオフェンスよりディフェンスが大事になります。天皇杯で優勝した(千葉)ジェッツもディフェンスが強かったですし、そこがチームとして基礎とならなければならないところです。また、そのディフェンスに対するロブの貢献度はものすごく大きいし、期待しています。ガード陣が前からボールマンプレッシャーをかけ、ウィングはしっかりディナイし、そうすればあとはロブがゴール下を守ってくれる。そういう選手が来ました。
NBA時代から有名であり、見ても分かるようにすごく明るいキャラクターで、試合中もいろんな選手に声をかけています。例えばパスミスしてしまった時も、受け取れなかった選手を攻めることなく、「ゴメン、オレが悪かったけど、お前もこういう風に動いてくれ」というようなコミュニケーションが取れる選手です。それによりチームの雰囲気も良くなっています。
ーー ブラウン選手もそうですが、ゴンザガ大学出身選手はみんなそんな性格なのでしょうか?笑
どうですかね?(笑)(ジョシュ)ハイトベルト(※昨シーズンまで前身となる日立東京でプレー)も陽気なヤツでしたし、アイラもそうですが、人としてすごく良い人間が多いのかもしれないですね。ロブとは練習する機会も限られているので、今後の試合を通してともに成長していきたいです。
ーー Bリーグのシーズンが長かったのが、不幸中の幸いとなるのでは?
チャンピオンシップ出場枠争いも、ワイルドカードに回ると厳しくなります。中地区2位以内を狙うためにも、一つでも強豪チームから勝ち星を挙げていかなければならないです。まだ、オーバーカンファレンスの三河(AWAY3月4日-5日)やA東京(HOME3月18日-19日)など強豪チームとの対戦が残っていますし、もちろん同じ中地区の川崎にも一つでも多く勝ち星を稼げるようにしなければなりません。今日は、それに向かうための自信につながる試合でもありました。あとはどうやって勝ち切るかというところが課題。練習でやったことしか試合には出ないので、練習中から根を詰めてやっていくしかありません。
「ケガ人が多い中で、ポイントガードなど慣れないポジションを務めながらオールラウンドの活躍でチームを支えています。ケガもムラも波もなく、常にチームに貢献している」とクラブが期待を寄せる広瀬選手。栃木戦では、エースとしての活躍を目の当たりすることができた。
60試合と長丁場のBリーグだが、現時点で32試合(または34試合)が終了したばかり。まだ、折り返し地点であり、負けてもやり直せるのがレギュラーシーズンでもある。
2月は北海道から沖縄へ、移動距離激しいアウェーゲームが待っており、コンディションを整えながら、サクレ選手を中心に勝ち星を積み上げていかねばならない。
チャンピオンシップ確定圏内となる中地区2位三遠ネオフェニックスまで4ゲーム差。“サクレ効果”でチームを上向かせることができるか?
今後の巻き返しにファンはもちろんだが、広瀬選手自身も期待していた。
文・泉 誠一/写真・安井 麻実、泉 誠一