2シーズンぶりに現役復帰を果たした竹田謙選手(タケさん)、38歳。4チームを渡り歩き、15シーズン目を迎えた204cmの伊藤俊亮選手(イートン)、37歳。
栃木ブレックス時代はチームメイトとして優勝に貢献し、日本代表としても様々な経験をしてきた。仲の良い二人の息の合った対談は本誌フリーペーパー誌面(好評配布中!無料)では全く足りない。楽しい話はWEB版にて延長戦スタート。
ラスベガスで見たルーキー時代のステフィン・カリー
ーー ブレックスや日本代表ではチームメイトとして国内外の遠征を一緒に行った二人だけど、同部屋だったことも多かったのでは?
竹田:部屋が一緒だったのはアジア大会(2010年中国広州)のときだけじゃない?
伊藤:いや、ラスベガス(2009年NBAサマーリーグ遠征。Dリーグ選抜チームなどと対戦)もそうだよ。
竹田:おぉ〜、あれはすごかったなぁ。
伊藤:ラスベガスのホテルで枕に埋もれて寝てたのを隣で見てた。
竹田:なにそれ?
伊藤:ベッドルームとリビングがあるほど部屋が広いラスベガスの豪華ホテル。リビングのソファの上にはすごい量のクッションがワァーって置いてあって、そこに倒れ込めばパサッてできるくらい。部屋に戻るなり、タケさんがそこにスッて行き、そのままクッションの間に挟まった状態でご就寝されてた。
竹田:え、オレの話?
伊藤:そうですよ。クッションの間にスッと入った髪が立ち上がったまま寝てたので、お疲れなんだなって思ってた。
竹田:メッチャ良いホテルだったし、あれは楽しかった。
伊藤:あのとき、(ステフィン)カリーがいたよね。
竹田:そうそうカリーや(ブレイク)グリフィンがサマーリーグに出てた。当時のカリーはまだ全然で、線も細いし普通のガードだったけど、今は本当にすごいよね。
伊藤:あのときはシュートするっていうよりも、ドライブでガッチャガッチャやってるイメージだったけど、そんなことない?
竹田:あまり覚えてない。それくらいの印象しか残ってない。その後のアジア選手権はどこでやったっけ?あ、天津だ。あれは違う意味でやばかった。
伊藤:天津も同じ部屋だったじゃん。
竹田:あっ、そうだ。途中でイートンが熱を出しちゃって隣で死んでるし、次はオレだって思ってすごいイヤだった。染ったら危ないからって、途中で部屋を移動したんだ。あの年が初の日本代表であり、「こんな大変なのか」って思ったし、あれは辛かった。
伊藤:外に出ると黄砂か何かで前が見えないくらいの状況だった。天津タワーという大きなタワーがあるんだけど、全く見えない。何日かに1回くらい空気の状況が良いときがあり、あんな近くにあるの?って言うくらいすごい。それにノドをやられて、日本に帰ってからも咳が止まらなかった。
レバノンの“ズルズル”のコート、“ウン“をつけたスロベニアのトレーニング
竹田:その翌年がアジア大会だ。木下(博之/大阪エヴェッサ)と(山田)大治(広島ドラゴンフライズ)も同じ部屋で、イートンが掃除係だった。
伊藤:掃除係っていうか、他の誰も掃除しないんだもん。
竹田:あのときも楽しかったなぁ〜。あと一歩でメダルに届かなかったことは悔やまれる(4位)。その前のレバノン(2010年スタンコビッチカップ)には行ってないんだっけ?
伊藤:それは行ってない。
竹田:レバノンが一番おもしろかった。成績も準優勝で良かったし。
伊藤:なんかズルズルのコートでやったところでしょ?
竹田:最後のレバノンとの決勝ね。その試合にレバノンの大統領が来るってことで、会場パンパンに人が入ってた。イスラム圏だから観客は男しかいない。みんなで歌を唄って、メッチャ盛り上がってたけど、急ごしらえで取り付けたようなエアコンのせいで、湿気がたまりコートがツルッツル。ビックリした。ディフェンスの時、ポストアップされて押し込まれると、そのままツーって下がるんだもん。
伊藤:踏ん張れないの?
竹田:踏ん張れない。重い方が勝つ感じでツーって滑って、もうバスケじゃ無かったね。移動も大変だった。小さなマイクロバスに全員詰め込まれて、山道を超飛ばす運転手のもと、それでも1時間かけて体育館まで行くという。「危ねぇー」って言いながらの移動だったけど、あのときもおもしろかったなぁ。イートンはジェリコ(パブリセヴィッチ)がヘッドコーチのときにクロアチアとかに行ってるよね。
伊藤:クロアチアにも行ったし、そこから車で山を登って行って国境を越えたスロベニアでトレーニング。ログラってところで、冬はスキー場なんだけど、夏場のトレーニングを受け入れしてる。そこに放牧されている牛の隣をクロスカントリー。もちろん牛は草を食べ、当然のように排出もするわけで…。なんとなくイヤだから最初のうちは避けて遠回りしていたけど、草食動物なのでさほどニオイはきつくない。走ってる間にしんどくなってくるとそれも気にならなくなってきて、もうその上をバンバン走っていく。コースが一定なので、みんな同じところを走ることになり、前を走ってる選手が蹴り上げたそれが後ろにいるとバシャッてかかってくる。そんなクロスカントリーをさせられてたね。
文・泉 誠一 写真・羽田 寛幸