※本記事はバスケットボールスピリッツのWEB化に伴う、2018年4月末発行vol.20からの転載
日本を代表するフォワードからコーチの道へ。就任して2年目、『強い千葉ジェッツ』を育て上げた大野篤史ヘッドコーチが目指し続けるものとは?
── 大野さんのコーチとしての出発点はパナソニックトライアンズのアシスタントコーチですが、チームが休部になった後、早稲田大の大学院に進まれました。そのきっかけは?
パナソニックの休部はまさに寝耳に水で、本当にショックでした。自由交渉が始まると、オファーの有無で選手間もぎくしゃくして、それが辛かったですね。僕自身、次の就職先を見つけなくてはならなかったんですが、そうするとオファーがない選手の気持ちに寄り添えない気がしてなかなか決心できませんでした。
早稲田大スポーツ科学研究科にエリートコーチングコースというのが設立されるのを聞いたのはちょうどそのときです。トップアスリートが持っている暗黙知を形式知にする、つまりアスリートが培ってきた感覚を言葉や文章でしっかり表現できるようにすることを目的とし、それをコーチングに生かすという内容に魅力を感じました。僕は高校でも大学でも勉強は大嫌いだったんですが、この1年は頑張ったんですよ。あんなに図書館に通い、あんなに本を読んだのは人生初めてです(笑)。女子バスケの萩原美樹子さんや他の競技のトップアスリートの人たちと一緒に学んで、いろんな話を聞けたことも財産になりました。
── 卒業後はNBLに新規加入した広島ドラゴンフライズのアシスタントコーチに就任されました。
実はそれより早く北海道の大学から内定をいただいていたんです。もし、(佐古)賢一さんから「俺と一緒にやらないか」と電話をもらわなかったら北海道に行っていたと思います。賢一さんは僕が見てきた中で1番すごいポイントガードですし、その賢一さんがどういうコーチングをするのかとても興味がありました。当時の自分は戦略戦術のみにフォーカスして、その知識が豊富なのが良いコーチだと思い込んでいる節がありましたが、賢一さんと仕事をすることで『チームというのはどうあるべきか』というカルチャーを大事にする姿勢や目先の展開だけではなく『ゲームを逆算する目』といった“気づき”を得ることができました。自分には無い賢一さん特有の感覚を知ることができたのも新鮮でしたね。
── その1年を経て、千葉のヘッドコーチに就任された経緯は?
佐藤博紀GMから連絡をいただいて、まず千葉ジェッツの印象を聞かせてほしいと言われました。それで忌憚のない感想を言ったんですね。「タレントは揃っているが、エナジーが足りない。チームのカルチャーやアイデンティティを作ろうという姿勢が感じられない。あれだけ沢山のファンから沢山のものを提供してもらっているのだから、それに対し自分たちがどう還元していくかをもう少し考えていくべきなんじゃないか」みたいなことを正直に(笑)。そうしたら、佐藤GMが「まさにそのとおり。そういうチームをこれから一緒に作っていこう」と言われたんです。佐藤GMが熱くて、まっすぐな男だという話は聞いていましたし、僕も彼と一緒に新しい千葉ジェッツを作っていきたいと思いました。