「河村はどうしましょうか」
BBSアワードはこの議題からスタートした。
一人の選手に複数の栄光が許されていない過酷な賞レースは、本家においてタイトル受賞マシーンと化した河村勇輝といえど例外を適用しない。
河村のノミネート分野は幅広く、MVP、MIP、ベスト5と多岐にわたる。
アシスト王でありながら得点ランキングでも上位に食い込む圧巻のパフォーマンスを鑑みれば、世界選抜の一員としても一考の余地が出てくる。
選考員一同は大いに難しい選択を迫られ、重苦しい空気に包まれたzoomアプリは通信に支障をきたし、会議中のフリーズや音声障害などをもたらした。
事態を重く見た編集部が、苦渋の決断を下す。
「とりあえず他の賞から決めていって、どれも埋まっちゃったら新人賞でいいんじゃないですか?」
「そうっすね」
選考員一同の愛あふれる各賞協議の結果、河村は無事にBBSアワード新人賞の栄誉に輝いた。(3年ぶり2回目)
新人とはどのような存在を指すのか。
言語を生業とする我々はリーグが定めた規定に甘んずることなく、真摯な態度でこの命題に向き合わねばならない。
最近はロクにコラムも書きやしない底辺ライターが、生意気な屁理屈をこしらえて鼻息荒く図書館へ乗り込み、新明解国語辞典(第8版,山田忠雄他編,三省堂,2021)を引く。
しん じん【新人】①新たに(その社会に)現れた人。新顔。ニューフェース。②化石現生人類と現世人類。クロマニョン人はこれに属する。
Bリーグ在籍4シーズン目となる河村が①に該当するとは言い難い。新顔どころかすでに馴染みの常連さんだ。
②は要するに、私たちホモ=サピエンスを指す。
人類進化の最終段階を意味するこの分類は、約20万年前から現在までの全ての人々が対象となる。つまり僕やあなたはもちろん、おとなもこどももおねーさんも、みんな新人賞候補。
そういう意味では河村勇輝だって新人には違いないが、「ホモ=サピエンスで賞」とかいう謎のタイトル戴冠にふさわしいかと言えばそりゃふさわしくなくはないけれども、正直今シーズンのパフォーマンスとは関連が薄い。というか一切関係ない。