本家アワードでも新人賞を獲得した西田優大はこちらBBS AWARDにおいても満場一致で受賞が決まった。議論もなく、反論もなく、決定までに要した時間は1分ほど。ひょっとすると45秒ぐらいだったかもしれない。ともあれ今シーズン西田が残したインパクトはそれほど大きかったということだろう。
西田の経歴を遡れば、「こいつ、ただ者ではない」というのはすぐにわかる。福大大濠高校から東海大といういわゆる “エリートコース” を歩き早々と主力の座を獲得したのもさることながら、U-15から名を連ねた年代別日本代表ではU-16のアジア選手権4位、U-18のアジアカップ準優勝と着実に世界の舞台を踏んでいる。大学1年で出場したU-19ワールドカップでは順位こそ10位だったものの八村塁(ワシントン・ウィザーズ)に次ぐスコアリーダーとしてチームを牽引した。初めてA代表候補になったのもこの年。以後は毎回のように代表合宿に招集されることになる。
しかし、西田の立ち位置はあくまで『代表候補』。正式メンバーへの道が遠いことにもどかしさを感じることもあったのではなかろうか。その西田がようやくチャンスをつかんだのはトム・ホーバスをヘッドコーチに迎えてスタートした新生日本代表においてだ。ワールドカップアジア地区予選Windows2のチャイニーズタイペイ戦で先発出場を果たすと、チームハイの27得点を稼ぎ一躍その名を知らしめた。サウスポーから放たれる高確率の3ポイントシュートやペイント内への果敢なアタックはもとより、足で付く執拗なディフェンスも光り勝利に貢献。まるで開いた扉の向こうへ一気に駆け出したかのような伸びやかで力強いプレーは見る者の胸を躍らせた。
それに呼応するように移籍したシーホース三河でも担った新エースとしての存在感を示す。
中でも6/7の3ポイントを含めキャリアハイとなる30得点をマークした名古屋ダイヤモンドドルフィンズ戦(3月23日)は『圧巻の西田』だったと言えるだろう。
だが、この『圧巻の西田』は当然のごとくいきなり現れたわけではない。10代の早い時期から世代代表メンバーとして経験した世界の舞台、苦手なディフェンスと徹底的に向き合った大学時代、そして “万年候補” と言われながらもトップレベルの日本代表合宿で自分を磨き続けた数年間、そのすべてがあったからこそ『日本の新星』は生まれたのだ。
さらにもう一つ付け加えるならば、ニックネームの『おでんくん』そのままにどこかほんわかとして優しい人柄も魅力の1つだろう。ちょっとユルキャラのおでんくんがコートの上で入れる変身スイッチ。カチッと響くその音を来シーズンも聞いてみたいと思う。
文 松原貴実
写真 B.LEAGUE
「Basketball Spirits AWARD(BBS AWARD)」は、対象シーズンのバスケットボールシーンを振り返り、バスケットボールスピリッツ編集部とライター陣がまったくの私見と独断、その場のノリと勢いで選出し、表彰しています。選出に当たっては「受賞者が他部門と被らない」ことがルール。できるだけたくさんの選手を表彰してあげたいからなのですが、まあガチガチの賞ではないので肩の力を抜いて「今年、この選手は輝いてたよね」くらいの気持ちで見守ってください。