【今村佳太/琉球ゴールデンキングス】
『希望』という意味では今村佳太もまた今シーズンの琉球ゴールデンキングスを照らした明るい光だったように思う。ルーキーの渡邉飛勇のケガに始まり、牧隼利、田代直希が相次いで長期離脱の大ケガを負う中、間違いなくチームを救ったのは今村の新エースとしての成長だった。スタッツだけを見れば平均得点(9.8→10.5)、リバウンド(2.3→2.6)、アシスト(1.6→1.9)と格段の伸びがあったわけではないが、流れを呼び寄せる、あるいは悪い流れを断ち切る存在として数字を大きく上回る働きを見せた。今村の魅力をひと言で表すなら『アグレシップ』だろう。強いフィジカルを生かした攻めるがごときディフェンスから、躊躇なく放つ3ポイントまですべてのプレーに気持ちの良い躍動感がある。BBSアワードの選考委員の1人であり琉球で今村とプレーした経歴を持つ石崎巧氏によると「非常にまじめに練習に取り組む選手」ということなので、今後への期待はさらに膨らむ。191cmのオールラウンダーとしてまた1つ飛躍する姿を来シーズンのコートで見たいものだ。
【ニック・ファジーカス/川崎ブレイブサンダース】
日本に帰化して4年、36歳(6月17日で37歳)になったニック・ファジーカスは今シーズンも心技で川崎を牽引した。ランキング3位の19.7得点、同10位の8.9リバウンドの数字は昨年よりやや下回るが、フィールドゴール成功率54.1%、3ポイントシュート成功率42.0%は川崎の大黒柱が健在であることを示している。
今季の東地区は終盤まで上位の順位争いが熾烈を極め、CSホーム開催の権利を得るために自力で2位を狙う川崎にとって4月27日の千葉ジェッツ戦、4月30日のアルバルク東京戦は是が非でも勝ち取りたい試合だった。ここで躍動したのがファジーカスだ。ベテランらしい冷静なプレーで内外に得点を重ね、ディフェンスが寄れば絶妙なパスを繰り出す。18得点、14リバウンド、7アシストを記録した千葉戦に続き、A東京戦でも23得点、11リバウンド、5アシストの活躍を見せ、ともに勝利の立役者となった。試合の随所に感じる高いバスケIQは苦境を救う武器であり、スナップを効かせた柔らかなシュートはファジーカスならではのもの。キャプテンの藤井祐眞は尊敬の念を込めて「神の右手を持つ男」と呼んでいるそうだが、川崎の『神の右手』はまだまだ衰えを知らない。
BBS AWARD 2021-22【世界選抜BEST5・Bリーグ】
https://bbspirits.com/bleague/aw22062101/
文 松原貴実
写真 B.LEAGUE
「Basketball Spirits AWARD(BBS AWARD)」は、対象シーズンのバスケットボールシーンを振り返り、バスケットボールスピリッツ編集部とライター陣がまったくの私見と独断、その場のノリと勢いで選出し、表彰しています。選出に当たっては「受賞者が他部門と被らない」ことがルール。できるだけたくさんの選手を表彰してあげたいからなのですが、まあガチガチの賞ではないので肩の力を抜いて「今年、この選手は輝いてたよね」くらいの気持ちで見守ってください。