恒例となったBBSアワードの選考会において毎年もっとも時間を要するのは『ベスト5』の選考である。今年は『日本選手・帰化選手』に『アジア枠』の選手も加わり、議論はさらにヒートアップ。その中で栄えあるベスト5に選出されたのは以下の選手たちだ。
齋藤拓実(名古屋ダイヤモンドドルフィンズ)
富樫勇樹(千葉ジェッツ)
キーファー・ラベナ(滋賀レイクスターズ)
今村佳太(琉球ゴールデンキングス)
ニック・ファジーカス(川崎ブレイブサンダース)
【齋藤拓実/名古屋ダイヤモンドドルフィンズ】
本家AWARDでMVPに輝いた藤井祐眞(川崎ブレイブサンダース)を始め、鵤誠司(宇都宮ブレックス)、岸本隆一(琉球ゴールデンキングス)、ベンドラメ礼生(サンロッカーズ渋谷)などの名前も挙がったバックヤード陣の中で、最多票を集めたのが齋藤拓実である。バリエーション豊富な得点力に加えピック&ロールの使い手としての評価も高い齋藤はここ数年でトップガードの階段を着実に上ってきた選手だ。今シーズン外国籍選手がガラリと変わった名古屋の中で、いかに早くアジャストして新しい力を引き出すかが課題の1つとなったが、結果として残した平均5.8本のアシスト(ランキング3位)が期待に応える答えとなった。また、初の日本代表メンバーとしてW杯アジア予選の舞台に立った経験も本人が目指す「判断力に長けたガード」へのプラス材料になったはず。移籍2年目で名古屋を3年ぶりのCS(チャンピオンシップ)に牽引した自信が来シーズンさらに鮮やかな花を咲かせることを楽しみに待ちたい。
【富樫勇樹/千葉ジェッツ】
改めて語るまでもなく富樫勇樹はすでに日本を代表するポジションに位置する選手である。そして、毎年成長を感じさせる選手でもある。リーグ一、二を争うスピードスターであり、劣勢を覆す3ポイントシュート決めきる力は誰もが認めるところだが、それに加えて今季はリーグNo1に輝いたアシスト(6.4本)が示すとおり黒子となって味方を生かすプレーが光った。とは言ってもマークした平均得点は13.4。エース本来の仕事はしっかり遂行している。コロナ禍の影響は今シーズンも様々な形で現れたが、千葉を苦しめたのは予定された試合が相次いで中止になったこと。その数はリーグ最多の15試合にのぼり、そのたびにコンディション調整に追われることとなった。そんな状況の中で東地区トップをキープできたのはキャプテン富樫の『ちょっとやそっとなことでは動じない前向きメンタル』によるところが大きいのではないか。目指したリーグ2連覇は叶わなかったが、チームの核となる揺るぎない存在感を発揮したことを評して2年連続のベスト5を授与したい。
【キーファー・ラベナ/滋賀レイクスターズ】
今シーズンの滋賀レイクスターズは途中17連敗の泥沼を味わい西地区14位(14勝43敗)に沈んだが、苦しんだチームの “希望” となったのがアジア枠で加入したキーファー・ラベナだったと言える。フィリピンのバスケット界では誰もが知るスーパースター。三遠ネオフェニックスに加入した弟のサーディ・ラベナとともに日本でプレーするニュースは大きな話題を呼んだ。諸事情より来日は大幅に遅れたものの10月2日の開幕戦では11得点8リバウンド、翌3日には20得点7リバウンドで “本物ぶり” を披露。強豪・千葉ジェッツと対戦した11月の試合では27得点、10アシストとダブルダブルを達成した。
183cmのサイズながら鍛え抜かれたフィジカルを生かしゴール下に果敢に切り込んだかと思えば外から精度の高いシュートを沈める。さらにはアシストパスのうまさも際立ち、ラベナが仲間を生かすことで重い空気が一掃された場面は少なくなかった。高いスキルを持ちながらセルフィッシュに走らないことも魅力の1つだったと言えるだろう。白星が遠い厳しいシーズンであっても応援し続ける滋賀ブースターに与えた “希望” の功績は大きい。できることなら来シーズンも見てみたい選手の1人だ。