若手選手は1つのチャンスを契機に大きく花開くことがある。角野亮伍は藤枝明誠高校時代から高い得点能力が光る逸材としてA代表候補にも選出された選手。高校卒業後に渡米し、サザンニューハンプシャー大学を卒業した2020-21シーズンから大阪エヴェッサでプロキャリアをスタートさせた。開幕戦には先発メンバーに抜擢され2桁得点の好発進を見せるが、その後伸び悩んだ得点に比例して徐々にプレータイムも削られていく。その間、自分のプレーに迷いを感じることもあったようだが、リーグ終盤から『覚醒』とも呼べる力強いプレーで再び2桁得点を連発した。大阪にとって初めてのチャンピオンシップはクォーターファイナルで川崎に敗れる結果となったが、角野はこの2連戦で平均36.22分コートに立ち、平均17.6得点(3ポイント6/10)をマーク。証明した高いポテンシャルは移籍を決めたシーホース三河でどう発揮されるか。本領発揮を予感させる来シーズンが楽しみだ。
千葉ジェッツのコー・フリッピンもまたチャンピオンシップの “ラッキーボーイ” として存在感を示した選手だ。日本国籍を持つが生まれも育ちもアメリカ。2019-20年シーズンから千葉に在籍して、卓越したボールハンドラーとして注目を集めた。だが、2020-21シーズンに入ってからは今一つ精彩を欠いた印象がある。ところが、チャンピオンシップに入るとその印象が一変。宇都宮ブレックスとの頂上決戦ではゴール下の外国籍選手の下に潜り込んでリバウンドを奪い、味方に絶妙にパスを供給すると、自らもショットクロックぎりぎりでタフなシュートを沈めるなど攻守でチームを勢いづけた。その活躍は平均出場時間9.23分→15.19分、平均得点3.0→6.6とレギュラーシーズンに比べ大幅に伸びたスタッツにも表れているが、何よりも光ったのはチャンスに持ち味を発揮した “勝負強さ” だったと言えるだろう。2021-22シーズン移籍を決めた琉球ゴールデンキングスでの活躍にも今から大きな期待が膨らむ。
文 松原貴実
写真 B.LEAGUE