MIPの “I” には2つの意味があるという。1つは成長の意味を持つ『Improved』、もう1つは印象の意味を持つ『Impression』。今回BBS AWARD選考委員会が西村文男に授与する チャンピオンシップMIP賞は『Impression』の “I” であり、チャンピオンシップでもっとも印象に残った選手であることを称える賞である。ご存知のとおり、今シーズンのBリーグの覇者となったのは千葉ジェッツ。チャンピオンシップMVPにはファイナル第1戦で16本のリバウンドを記録したセバスチャン・サイズが選ばれた。それに異論をはさむつもりはない。が、BBS AWARDでは「今回のチャンピオンシップの西村の活躍は際立っていたんじゃね?」の意見の下、特別に設けたチャンピオンシップMIP賞を西村に授与することを決めた。『必要な賞は迷わず作る』というのがBBSのポリシーだ。
卓越したボールハンドリングと絶妙なアシストパス。氷上のスケーターのごとく滑らかにコートを走る西村には洗練されたスマートなイメージがある。しかし、今季のファイナルのコートでは一変して泥臭いプレーに徹する姿を披露した。中でも先発でエースの富樫勇樹が試合開始5分で2つのファウルを犯し早々と出番が回ってきた第3戦は、普段通りの冷静なパス回しと要所で沈めた2本の3ポイントシュートで流れを作る。さらには宇都宮ブレックスの重戦車ジェフ・ギブスと激しいルーズボール争いを見せるなど「終わってみたら身体中痣だらけだった」(本人)という熱いプレーで場内を沸かせた。この試合のプレータイムは富樫(17.51分)を上回る21.41分。「ファウルが混んで迷惑をかけたが、文男さんにはこれまでもずっと助けられてきたし、不安は一切なかった」という富樫はこの日の西村を「すばらしいパフォーマンスでチームを鼓舞してくれた」と称えた。頂上決戦で見せつけたベテランガードの心意気。涼しい顔のふーみんから熱い男に変身した西村の活躍は “初優勝のキーマン” と呼べるほどの強い印象を残した。
文 松原貴実
写真 B.LEAGUE