今シーズンの新人王候補に名前が挙がったのは小酒部泰暉(アルバルク東京)、寺嶋良(京都ハンナリーズ)、テーブス海(宇都宮ブレックス)、大浦颯太(秋田ノーザンハピネッツ)、アイザイア・マーフィー(広島ドラゴンフライズ)の5人。いずれもルーキーらしからぬ存在感を発揮しチームの勝利に貢献したが、その中で「1年目にしてチームの核となった」の声のもと寺嶋が選出された。振り返れば2019年-20年シーズンに特別指定選手としてチームに加わったときから寺嶋の評価は高かった。当時京都は13連敗の泥沼であえいでいたが、加入した寺嶋の活躍で連敗脱出。そこから9連勝の快進撃を見せた。本人は「あのときの自分は出来過ぎです」と笑うが、持ち前のスピードと攻め気がチームを勢いづかせたことに間違いはないだろう。そして、今シーズン、村上直(引退)、綿貫瞬(アースフレンズ東京Z)というベテランガードが抜けた中でメインガードの役割を担い、全55試合にスタメン出場。平均21.48分のプレータイムを得て平均8.1得点、3.2アシストの数字を残した。また、特筆に値するのはルーキーの身でありながらチームをまとめる副キャプテンに任命されたことだ。洛南高校、東海大学でもキャプテンを務めた経験を持つが「どちらも先輩たちが作り上げてきたチームを引き継いで…という形でした。キャプテンの永吉佑也さんがいてくれたとはいえ、今シーズンのようにヘッドコーチもメンバーも大幅に変わったチームを牽引するのは初めての経験でした」(寺嶋)。しかも自分はルーキー。担った重責とチームにおける立ち位置に戸惑ったり、悩んだりすることも少なくなかったのではないか。それでもコートに立てばアグレッシブにゴールを狙い、劣勢のときには大声で仲間を鼓舞しながら55試合を走り抜いた。
京都の最終成績は西地区8位(21勝36敗)と掲げた目標には大きく及ばなかったが、今シーズンの経験は必ず今後の糧になるはず。発表された広島ドラゴンフライズへの移籍は京都ファンにとってショックだっただろうが、新天地で躍動する寺嶋の2年目のシーズンに期待したい。
京都ハンナリーズ #0 寺嶋良
“新生京都” の副キャプテンは23歳の負けず嫌い
前編 中学生のころから将来の夢は『バスケのプロ選手』
後編 苦しいときこそリーダーシップを発揮できる選手になりたい
文 松原貴実
写真 B.LEAGUE