今シーズンプレーオフMVPに輝いたセバスチャン・サイズのことを『優勝請負人』と評する声を耳にした。昨シーズンはサンロッカーズ渋谷の一員として天皇杯優勝、今シーズンは千葉ジェッツのメンバーとして初のリーグ優勝、来日してわずか2年で2つのチームを優勝に牽引したことを見れば『優勝請負人』と呼びたくなるのもわからなくない。母国スペインではアンダーカテゴリーから代表メンバーに選ばれ、A代表としてもワールドカップヨーロッパ予選を戦った経歴を持つサイズは走ってよし、跳んでよしのパワーフォワード。レギュラーシーズンは平均17.1得点、11.7リバウンドをマークし、今シーズンのリバウンド部門2位、ブロック部門5位に輝いた。205cm、106kgの強靭な身体と228cmのウイングスパンを武器とし、ゴール下で見せるパワープレーは必見。宇都宮ブレックスと戦ったチャンピオンシップ第1戦では16本のリバウンド(OR6、DR10)をもぎ取り、勝利の立役者となった。そんなサイズの魅力をひと言で表すならばシーズンを通して貫いた “ハードワーク” なのではなかろうか。チームのために常に身体を張り、粘り強くボールを追いかけるのは「勝ちたいという強い気持ちだ」と本人は言う。言葉を変えればそれは「勝利に対するこだわり」であり、「そういった勝利へのこだわり、勝利への欲は1日で育つわけではなく、日々培っていくものだと思う」と続けた。「スポーツの世界には勝者と敗者しかいない。勝者になるためには勝ちにこだわり、言い訳はせず、どんなときも100%の力を発揮できる努力をすること」。父から学んだというアスリートとしての姿勢はサイズの根幹をなすものであり、それは今シーズンのコートでもしっかり示されたと言っていいだろう。
MVP候補としては他に富樫勇樹(千葉ジェッツ)、金丸晃輔(シーホース三河)の名前が挙がったが、チャンピオンシップも含めたすべての試合で力強く、鮮やかにコートを駆け抜けたサイズの姿が前述の2人を制すこととなった。
文 松原貴実
写真 B.LEAGUE