原修太はBリーグ開幕して間もない時期に右足を負傷(右第五足骨不完全骨折)し、全治3ヶ月と診断された。「さぁこれから!」と、気合いが入っていた矢先の戦線離脱。ショックは大きかったが「しっかり治して1日も早い復帰を目指そう」というスタッフの言葉に励まされ手術に踏み切った。そのとき心に決めていたのは「オールジャパンの舞台に立つ」ことだったという。コートに戻ってこられたのは12月の半ば。目標にしていたオールジャパンには間に合ったことで「あとは少しでもチームに貢献することだけを考えていました」その気持ちが全面に表れたのは、相手のエースに対する激しいディフェンスだ。「原があそこまでいいディフェンスをしてくれるとは思わなかった」と大野篤史ヘッドコーチの顔からも思わず笑みがこぼれた。
――優勝おめでとうございます。ケガから復帰して初の大舞台でしたね。
12月にリーグ戦から復帰したんですが、最初はゲーム勘も戻っていなくて、自分が何をやっていいのかもよくわからず、あたふたと焦っていました。自分の中に全然余裕がなかったので、ずっと怒られていました。けど、そのあとにヘッドコーチの大野さんと話して、自分に求められていることは積極的にリバウンドに絡んだり、ディフェンスをハードに頑張ったりすることなんだと再確認してから落ち着いてきたと思います。自分ができることを全力でやろうと決めたことで、このオールジャパンもそれほど緊張せずに戦えた気がします。
――相手のエースを守るという役割は果たせたのではないですか?
そうですね。少なくとも今の自分の力は出せたように思います。まだ、全然足りませんけど。僕は頭が悪いので、試合前日のチームミーティングだけでは相手の特徴を把握しきれないところがあるんですね。初戦の新潟(アルビレックスBB)戦でもディフェンスを間違えたというか、大野さんに求められていることができませんでした。それで、そこからアシスタントコーチの金田さんに「相手のセットプレーはこう守ろう」とか、宿舎で指導してもらうようになって、そのおかげで(シーホース)三河戦や今日の川崎(ブレイブサンダース)戦も焦ることはなくなりました。
――持ち味であるフィジカルの強さも生かせたように感じました。
はい、と言ってもディフェンスというのは自分1人でやるものではなくて、特に相手がシューターの場合はスクリーナーになってくれる人の力も大きいです。うちで言えば、マイク(マイケル・パーカー)だったり、伊藤(俊亮)さんだったり、ヒルトン(アームストロング)だったり、みんなうまい選手なので助けられています。僕は石井(講祐)さんに代わってコートに出ることが多いんですが、石井さんのディフェンスはとてもうまくて同じようにはできません。その代わり自分にはフィジカルの強さという長所があるのでそれを生かすことは意識しました。アグレッシブに相手との距離をどんどん詰めていって、ボールを離させる、ドリブルをつかせる、そのことでリズムを狂わせるということが自分のスタイルというか、石井さんのうまさとはまた違った味を出したいと思っていました。
――その味は出ていたと思います。
そうですか、だと、よかったです。今日の川崎の辻(直人)さんにしろ、昨日の三河の金丸(晃輔)さんにしろ、相手のエースシューターが僕のディフェンスをちょっと嫌がっているのは感じました。自分の仕事は1分でも2分でも相手を嫌がらせることだと思っているので、それは少しできたのではないかと感じています。
――自信にもつながったのではないですか?
そうですね。ディフェンスに関してはこれからもアグレッシブにやっていこうと思っています。それはリバウンドも同じです。課題となるのはシュートですね。三河戦ではいいところで2本決められたのですが、今日はせっかく(富樫)勇樹がノーマークを作ってくれたにもかかわらず決められなかったので、そこはもっとシュート練習をして精度を上げていきたいですね。
――戦列復帰して間もなくの優勝ですから、ことさら喜びも大きいのではないですか。
めちゃくちゃ大きいです。このチームは練習のときから大野さんがとてもいい雰囲気を作ってくれて、ダメなときは本当に真剣に怒ってくれますし、いい時はすごく盛り上げてくれますし、やっていて楽しいです。そういう雰囲気はレギュラーシーズンからできていたので、オールジャパンだから気合いを入れようというのではなくて、オールジャパンでさらに気合いが入ったという感じでした。それも大きかったと思います。
――リーグ後半戦も期待できますね。
はい、東地区ではまた栃木(ブレックス)やアルバルク東京とも戦っていかなくてはならないので、今日の優勝をいい意味で力にしてまた頑張っていくつもりです。さらにチームに貢献できる選手を目指します。
文・松原 貴実 写真・安井 麻実