「ホーム開幕戦・緊急ご支援のお願い」。
ショッキングな見出しのリリースを岩手ビッグブルズはオフィシャルサイトを通じて配信した。それを受けるように、オフィシャルfacebookでは少しずつブースターの意見が集まって来ている。
昨年、東日本大震災の被災地ながらもファーストシーズンをスタートさせ、プレイオフ進出こそ逃したが、後半はチームとしての成長を感じられた。そして迎えた2年目となる今シーズンは、開幕から4連勝と波に乗る。昨シーズン、琉球ゴールデンキングスをリーグの頂点まで導いた桶谷 大を新たなる指揮官に迎え、順風満帆なスタートかと思われた矢先の緊急告知に朝から驚かされている。
岩手県営体育館での開幕戦チケットが1/10も売れていない
昨シーズン、山本吉昭選手にインタビューした際、「なかなか会場に来られない人たちも新聞やテレビを通じて、がんばってるんだなと分かってもらえています」と話していた。その岩手の新聞やテレビといった各媒体のスポンサーが、新しくなった岩手ビッグブルズのオフィシャルサイトには見あたらない。しかし、岩手日報には岩手ビッグブルズコーナーがあり、岩手朝日テレビの塚本京平アナウンサーもブログでしっかり開幕をアピールしてくれている。
それにも関わらず、「当社の営業不足が原因でチケットの前売り状況が昨シーズン同様に大変伸び悩んでいます。パートナー企業の皆様にはすでにチケット購入をお願いをしておりましたが、10月15日現在、10月20日(土)125名、10月21日(日)101名の前売り状況にあり、このままでは昨シーズン同様の危機的状況を迎える状態です」(岩手ビッグブルズ オフィシャルサイトより抜粋)と訴えている。 今週末10月20日(土)、21日(日)の会場となる岩手県営体育館の客席数は2,145人。1/10も前売り券が売れていない状況に危機感を持ち、この緊急ご支援のお願いが発信されたわけだ。
良かれ悪しかれ、透明性を持って現状を伝えることは公的なスポーツチームには必要なことである。バスケにおいては、これまでも「お願いリリース」は必要だと感じていた。ピンチなのに「プロだから…」と変なプライドを持って弱味をさらけ出さずにつぶれてしまっては元も子もない。この訴えがぜひとも岩手のブースターに届いて欲しいと願う。
と同時に、シーズンを通してみても集客が見込めるはずの開幕戦でこの危機的状況は、幸先良いスタートを切ったオンザコートとは反比例し、黄信号が点ったと言える。
日本でのバスケビジネスの目指す先とは…
この問題は岩手ビッグブルズだけの話でない。宮崎は10月14日の試合で1,000人を割っており、今シーズンも集客面で苦戦しそうだ。bjリーグだけに留まらず、JBLはパナソニックトライアンズが母体企業の経営不振により休部に向かっており、また動画配信がスタートしたことで観客席が埋まっていないことも露呈されている。さて、日本におけるバスケットボールビジネスはどこに向かって訴求すべきなのか?
トヨタ自動車アルバルクが、12月9日のパナソニック戦のホームゲームにおいて前座試合を行う。一般参加として6チームを募集したところ、あっという間に締め切られていた。これが観客席を埋め尽くすまでの効果があるかどうかはまだまだ未知数だが、やはり「見る」よりも「やる」方がニーズがある日本バスケ。子供たちの前座試合はよくあるが、大人が参加費を払ってプレイでき、そして観客として囲い込むこの試みは注目したい。
現場(ホームゲーム)へ行こう!
会場が埋まらなければスポンサーも集まらず、テレビ放送もあり得ない。運営側はスポンサーを、ファンはテレビ放送を待望しており、一番大事な『現場』が疎かになっている気がしてならない。
先月、記者会見を行った新リーグNBLは、「まずは会場を埋めることが一番。スポンサーやテレビはボーナスであり、そこに比重を置いてはいけない」と、リンク栃木ブレックスを築いた山谷 拓志 NBL副本部長は言う。この当たり前のことがなかなか難しい状況ではあるが、観客と向き合って座席ひとつひとつを埋めていくしかない。それでも集客ができなければ、違う土地へチームを移転することも一つの手段である。
日本のリーグより知名度もレベルもウンと高いNBAが、ネットを介してこれまで以上に気軽に見られるようになり、そこで日本におけるバスケットボールのエンターテイメントは事足りてしまっている。NBAだけではない。ユーロリーグやNCAA、アジアのリーグも含めて、簡単に見られる時代。日本の各チームやリーグは、独自性を持って集客を目指さなければならず、NBAや諸外国リーグと同じようなことをしていても、本家には勝てない。
「事件は会議室で起きてるんじゃない。現場で起きてるんだ」という格言通り、NBAで事足りている方もぜひお近くの現場へ駆けつけて、日本のバスケ事情をまずは目の当たりにして欲しい。
音楽もヘッドフォンして有名アーティストを聞くのも良いが、路上で演奏されているアマチュアアーティストのライブの方が俄然感動することもある。もしかすると小さな画面でのダンクよりも、コートサイドで見るレイアップシュートの方が迫力があるかもしれない!
さぁ今週末は、それぞれの地域で行われている現場(ホームゲーム)へ足を運ぼう!
日本のバスケを少しでも盛り上げるためにも──。
岩手ビッグブルズ ホームゲーム
- 岩手 vs 千葉@盛岡市・岩手県営体育館
10月20日(土) 18:00
10月21日(日) 14:00 - チケット好評発売中
今週末行われる その他のホームゲーム
- 大分 vs 京都@べっぷアリーナ
- 秋田 vs 群馬@由利本荘市総合体育館
- 新潟 vs 東京@聖籠町町民会館
- 富山 vs 仙台@高岡市竹平記念体育館
- 長野 vs 埼玉@伊那勤労者福祉センター体育館
- 滋賀 vs 大阪@野洲市総合体育館
- 島根 vs 宮崎@雲南市・三刀屋文化体育館
- 高松 vs 沖縄@高松市総合体育館
- 福岡 vs 浜松@福岡市九電記念体育館
text by IZUMI