Text & Photo by Seiichi Izumi
アーリーエントリー制度の下、大学の卒業を待たずに今年2月よりチームに合流し、すでにプレーしている選手たちがいる。その一人である京都ハンナリーズの小島 元基選手は、最初の1カ月間でチーム戦術の習得に努め、3月から少しずつプレータイムが与えられるようになった。名門・東海大学出身であり、bjリーグのコート内にいても体格はまったく見劣りしない。浜口 炎ヘッドコーチの期待は高く、プレイオフ ファーストラウンド第2戦(5月1日 vs ライジング福岡)では先発を任された。
■シーズン途中で合流するアーリーエントリー選手の苦悩
試合に出場するようになってからの2カ月間に、この日を含め4度先発の機会を得ている。平均出場時間は約16分。
「名前通りに元気があるし、臆することなくシュートが打てる。本当にハートの強い選手だな、と感じています」と、東海大学の先輩である内海 慎吾選手も高く評価している。
しかしながら当の本人はといえば、プレイオフの大事な場面で先発起用されたことに対し、「正直言って、自分で良いのかな…」と戸惑いを見せていた。東海大学で日本一を争う戦いを4年間続けてきた小島選手は、「勝ちたい気持ちはもちろんあります」と即答しており、けっしてゲームを投げ出すような選手ではない。実際、この日の試合も体を張ってディフェンスし、積極的に攻めて得点も挙げている。
今シーズンへ向け、遅くても昨年8月くらいからチームは始動し、プレイオフまで半年以上、苦楽を共にしながらチームの結束力を高めてきた。そこへ、ポッと入ってきたアーリーエントリーの選手たちにとっては、温度差や戸惑いが生じるのは致し方ない。チームに慣れることが先決であり、ルーキーとして正式に迎えられる来秋へ向けた準備期間ととらえることもできる。
助走段階の小島選手が、いきなりプレイオフでの重責を任されたことで、「みんなとは違って、戦っていても自分の中でエナジーの少なさを感じていました」。
その気持ちの部分がプレーに現れてしまったのか、出場時間はたった9分。浜口ヘッドコーチには、すべてを見透かされていたと言えよう。
「特にみんなメンタル強くアタックしていましたが、自分は気持ちの部分で全然ダメでした。まだプレイオフに入ったという感じがしていなくて、なんかフワフワしてしまっています。そこはしっかり修正して行かなければ、ダメですね」と反省しきりである。
■普通に試合に出られてしまっていることに困惑!?
ビッグマンやポイントゲッターであれば、フリーランスから自分の居場所を見つけることはできるだろう。しかし、小島選手のポジションはポイントガードであり、ゲームを運ぶ中枢を担わねばならない。
「いろんなセットプレーがある中で、まだまだ理解できていない部分もあります。そこがちょっと中途半端な感じがしています」
戸惑いの理由はもう一つある。
NBLに進んだ東海大学の仲間たち、ベンドラメ礼生選手(日立サンロッカーズ東京)や橋本 晃佑選手(リンク栃木ブレックス)が、思うように試合に出られていない状況も影響していた。
「NBLに行った仲間たちがなかなかコートに立てていないのに、自分は普通に試合に出られてしまってる。実際にプレーしていても、まだまだ自分が下手なのはわかっていますが、それなりにできてしまうというところに、ちょっとモヤモヤするというか戸惑いを感じます。もちろん、試合に出たくないわけではけっしてありません」
バスケはコートに立つ5人だけではなく、ベンチメンバーも含めた全ロスターが一丸となって戦わなければ、どこかで綻びが生じてしまうチームスポーツである。東海大学時代にチームワークを叩き込まれてきた小島選手だからこそ、これまで頑張ってきたチームのためにも、「まだまだ自分ではない」というところに戸惑いがある。
「もう全力でやらなければならないし、しっかり気持ちを調えないといけないです」。
ファイナル進出を決めた京都は悲願の優勝へ、あと2勝まで迫っている。ベンチにいても、チームのために戦えることは多い。東海大学時代もその役割を担ってきたはずだ。照準を合わせるBリーグ開幕時から活躍するためにも、“ファイナルズ”を通じて学ぶことは多い。その有明コロシアムでの試合を心待ちにしている。
「有明コロシアムでプレーできるのは、やっぱりモチベーションが上がります。関東にいる仲間たちにまた会えるとも思うので、そこで自分のプレーをしっかり見せたいです。頑張ります!」
強く気持ちを調え、京都ハンナリーズのワンピースであることを証明する小島選手自身の戦いが始まる。学生時代ともに戦った仲間たちには今週末、小島選手の応援のために有明コロシアムへ駆けつけ、力を与えてほしい。