リーグ制覇を成し遂げた2012-2013シーズン以来となるプレイオフ(以下、PO)進出を目指す横浜ビー・コルセアーズ(以下、横浜)にとってはここからが正念場。3月に入ってアウェイ4連戦(群馬クレインサンダース、青森ワッツ)を1勝3敗で終え、翌週東地区2位の仙台89ersをホームに迎えるも連敗。敵地で福島ファイヤーボンズとの対戦のあと、強豪を相手にするホームでの4連戦が待っているからだ。
Text by Hiroyuki Ohashi / Photo by Tomoko Osawa ©B-CORSAIRS/bj-league
■ケガ人続出で「悪夢」再来!?
2月はたった1勝に終わり、1月末に6位だった順位をPO進出ラインの8位まで落とした。しかも、6日に信州ブレイブウォリアーズに79-92で敗れたのを皮切り、長いトンネルに突入。ホームの新潟アルビレックスBB戦、アウェイの岩手ビックブルズ戦で白星を挙げられず、必勝を期した27日のホーム・埼玉ブロンコスとの対戦も前半からリードを許して7敗戦を喫してしまった。
1月末までのチームスタッツと比較すると、この期間の平均得点は8.3点減り(78.7点→70.4点)、平均失点は9.1点増え(78.6点→87.7点)、攻守とも崩壊した。それに追い打ちをかけるようにケガ人が続出……13日の新潟戦から#7堀川竜一が故障者リストに入ると、#12稲垣 敦も続き、27日の埼玉戦では試合終盤に#3蒲谷正之、#37河野誠司までもが負傷退場となってしまった。
また、#73久山智志も2月は試合中の負傷で1試合の欠場を余儀なくされるなど、チームにとってもブースターにとっても、過去2シーズンを思い起こさせるような悪夢となった。特に昨シーズンは外国籍選手のケガが相次ぎ、球団ワーストの12連敗。1カ月以上も黒星が続き、それが再び起こってしまうのかと悪い予感が頭をよぎったことだろう。
■若手の台頭で「悪夢」払拭!
しかし、今シーズンは違った。翌28日の埼玉戦ではケガ人続出で追い込まれたことが逆にチームの結束力を高め、勝利に対するベクトルが定まった。これまでベテランの蒲谷や#13山田謙治、外国籍選手に頼りがちだったチームは大きく変化する。20代の日本人選手たちが試合をつくり、83-74で逆転勝ちを収めたが、83点のうち32.5%にあたる27点を#33喜久山貴一、#15兵頭健斗、久山、#32前田陽介の4選手でマーク。開幕から前日の埼玉戦まで、この4選手の得点が占める割合はわずか2.3%だったことを見れば、チーム全体に浸透した危機感が、彼らの奮起につながったといえる。
試合後、主将の山田は若手の活躍について、「全体的に見ても一人ひとりがステップアップしたと思います。兵頭もしっかり(試合の流れを)つないでくれましたし、喜一(喜久山)もつないでくれて、本当にいるメンバーが“何をしなければいけないのか”ということが伝わった試合だったと思います」と評した。
そしてガード陣に故障者が多い中、この連戦で経験を積んだ喜久山。ターンオーバーは最小限に留め、ボール運びやスティール、3Pシュートなど随所に持ち味を発揮した。「(ミスがなかった前日の試合と対照的に)今日は自分のシュートの入りがエアーボール。ミスもあって……それでも青木ヘッドコーチは自分を使ってくました。そこは(起用に)応えないといけない、という気持ちの部分で自分なりに立て直したつもりです」と、チームが苦しい状況で、ルーキーながらもしっかり自覚を持って試合に臨んだことが感じられた。
ただ、山田は喜久山のプレーについて、「練習では(積極的に)シュートを打っているのに、試合になるといろいろと考え過ぎになっています。チームをしっかりコントロールしなくちゃいけないという気持ちが最初にあり過ぎ、意識し過ぎています。自分がシュートを打たなければいけないときに打たなかったりすることがまだまだあるので、その点はこれからも経験を積んで、いろいろできるようになっていくと思っています。そんなに心配はしていませんが、もっとアグレッシブにやっていいと思っています」とコメント。さらなる発奮を期待して、注文を忘れなかった。
さて、横浜はPO圏外である10位に順位を下げ、最終局面に突入する。結果は結果として、厳しいものであると受け止めなければならない。が、3月6日の群馬戦(延長の末、96-102で敗れた)では、喜久山が初のスターターに抜擢され、34分間の出場でターンオーバーを2つに抑え、16得点(3P:4/7本、2P:2/4本、FT:2/2本)をあげる活躍を見せた。翌週12日の青森戦でも4本の3Pを含む12得点をマークするなど、先輩からの注文に応えようと積極的なプレーが増えてきた。
閉塞的な雰囲気になりそうな状況ではあるが、このような時だからこそ、若い力でそれを打破し、3シーズンぶりのPO進出をつかみ取りたい。