かねてから今シーズン限りで引退を表明していた田中大地選手だが、予定より早い1月10日、突然の引退を発表した。その身体能力を生かし、3on3のストリートボールリーグ「SOMECITY」でダンクをしていた頃から見続けてきた選手である。その後、プロ選手としての成長とステップアップしていく姿はご存じの通り。まだまだやれるのではないか、と思っていただけに早い引退に寂しさを感じていた。
古巣・滋賀レイクスターズを応援するため、アルバルク東京のホームゲームの観客席にその姿を発見し、声をかけずにはいられなかった。「もう一般人ですよ」と言う田中大地さんに少しだけ時間をいただき、引退の心境を伺った。
ーー引退を決めた要因は?
昨シーズン中に左ヒザを手術し、リハビリも続けていましたが、同じ箇所を3回目の手術でもあったので慢性的な痛みが取れず、完治する見込みもありませんでした。もう元のパフォーマンスに戻れないと感じたのが一番大きいです。
まだ、やれるかもしれないという希望があれば引退を躊躇したかもしれませんが、改善が見られない時点でもう無理だろうなって思いました。プレイングタイムも、練習できる時間も減ってしまい、練習しなければやっぱりうまくならないです。思うように練習できなかったことも大きな要因です。
ーー東京成徳大学と平行してSOMECITYにも出場し、その後はJBL2のデイトリックつくばでプロとなり、そこから這い上がるようにB1の舞台で戦うことができたキャリアはどんなものだったか?
Bリーグという日本バスケの新しい歴史の中でプレーできたことはすごく良かったです。学生時代は、こんな舞台でバスケできるとも思っていませんでした。田臥(勇太)選手(栃木ブレックス)やNBAでプレーしていた外国籍選手など、世界のトップレベルの選手たちと一緒に試合ができたのはすごく良い経験になりました。
ーー引退を発表し、改善されない足の状況もあるが、こうして試合を観ているとウズウズするのでは?
もちろんやりたいですよ。バスケットは大好きだし、これから先もバスケットをしたいという気持ちがなくなることはないです。年を取ってもね。
ーー今後もバスケットを続けるのか?
バスケットを完全に辞めることはないです。クラブチームなどになるとは思いますが、これからもプレーは続けていきたいです。
ただ、遊びでバスケした後や普通に生活していてもヒザの痛みは出てくるので、今後は加減しなければならないですが、それでも続けていきます。
ーー振り返ってみて、印象に残ってるゲームは?
やっぱりbjファイナル(2015-16シーズン/富山グラウジーズ)。今までの日本バスケ界史上最多の観客(11,038人)が入った中でプレーできたことは、今でも思い出すと鳥肌が立つし、興奮しますね。
ーー滋賀の仲間たちへメッセージを!
勝つことがあれば負けることもあるので、気にせずに思い切ってプレーしてもらいたいです。一人ひとりの能力は高いし、メンバーも良いので勝てるチームになると信じてます。デニスヘッドコーチの練習は厳しいけど、すごく勉強になるし、みんなも楽しんで取り組んでいるのがこのチームの良いところです。
ーーファンの皆さんにもメッセージを!!
短いプロ生活でしたが、いろんな方に応援してもらい支えてもらって、厳しい意見もあれば背中を押してくれたことでここまで続けることができました。普通の人では味わうことができない、プロならではの経験をいっぱいできたことは良かったです。ファンの皆さんにはいつも温かく支えていただき、「引退後も応援しているよ」という声もたくさんいただいています。本当に感謝しています。今まで本当にありがとうございました。
ーー今後は?
まだ具体的には決めてませんが、どんな仕事をするにしてもバスケットには何かしら関わっていけたら良いなと思っています。でも今は、ゆっくり体を休めたいです。
文・写真 泉 誠一