昨年4月から本格的に始まった電力自由化から1年が経とうとしている。そんな中、B2のプロバスケクラブであるアースフレンズ東京Zが、電力事業をスタートさせた。
その名も「Z電気」!
レジェンド電力株式会社と提携し、東京Zによる電力事業が実現。その詳細や電力自由化のことを、まずはレジェンド電力株式会社の立石光昭社長にやさしく紹介してもらおう。
電気は価格差が付きにくく、サービスにも大差がない
電力自由化という言葉は聞いたことがあるかと思います。でも、実際に電力会社を切り替えた方は全体の4%と言われており、まだまだ浸透していません。その理由の一つとして「サービスに大差がないこと」が挙げられています。
電力事業と言っても、私たちが電線を作るわけでも、電気を発電していくわけでもありません。東京電力に管理費や使用量をお支払いしながら、サービスを新たに生み出していくのが新電力という事業の骨格になります。
CMを見ても、携帯キャリアのような「どこよりも安い」という表現はあまり見ないでしょう。同じ電気であり、同じ送電線を利用しているので、企業ごとの価格差がつきにくいのです。
そこで私たちは見る角度を変えて、「消費者の方々が電気を変える動機」に着目しました。
前職でスポーツクラブのプロモーションやコンサルを請け負うことが多く、そのスポーツクラブが自主的な財源確保やもっと地域や子どもたちに還元したいというニーズがありながら、なかなかそこまで手が回りにくい現状を見てきました。
そのスポーツクラブのケースと電力事業を組み合わせたらおもしろいのではないか、と思ったわけです。
実質負担ゼロでクラブ支援!「Z電気」で財源確保と地域貢献を担う
実質負担がなく、いずれにしても払わなければならず、なおかつ品質に大差の無い電気代の払い先を「Z電気」に変えるだけ。
それにより
・チームやホームタウン大田区の子どもたちを支援
・状況によっては現在よりも電気料金が安くなる
「Z電気」がもたらす東京Zへのメリットは大きく2つある。
1.練習環境の向上=チームの強化+スクールの発展
2.地域還元=子どもたちがスポーツを楽しめる環境提供
東京Zの山野勝行代表は、「この街と地域の皆さん、そして子どもたちがスポーツを通じて笑顔で遊べる環境をどう広げていけるかを日々考えていた中で、このお話をいただきました。電力事業で収益をあげられるようにし、その一部を大田区の皆様に還元させていただきます。大田区のシンボルチームにより一層なれるよう、そして自立していけるように、この電力事業の発表をさせていただきました」ときっかけについて説明した。
立川社長は、「Bリーグという形で新たに船出した中で、Jリーグ同様に急激に成長していくのではないか」と期待を寄せている。東京Zに白羽の矢を立てた理由としては、「地域に根ざし、地域の育成も考えながら長い視野で山野代表が物事を見ているのに感銘を受けました。私がヨーロッパのスポーツクラブで見てきたような視点で考えておられ、いずれ親子3世代にわたって応援し、生活の一部になっていくようなクラブになるのではないかとすごく期待しています」とも話している。
大田区の松原忠義区長も地域密着でクラブをコツコツと成長させてきた姿を目の当たりにしていた。
「一般的にプロスポーツというと、特別大きなスポンサーがついているのが結構多いです。しかし東京Zの特徴は、町の中に入って、一つひとつ皆さんとふれあい、試合を見てもらいながら一歩一歩、一年一年その輪が大きくなっているのを私も見てきました。今回、レジェンド電力さんと東京Zが組んで電力事業を行っていくことは、さらにひとつ大きな輪が重なっていくわけですから、着実に伸びていくひとつの段階だと思っています。東京Z自身が強くなっていくことであり、私たちとしては歓迎しています」
電力がスポーツの力を変える可能性がある
スポンサーではなく、事業提携として東京Zを支援するには立川社長なりの明快な理由がある。
「様々な支援の形はありますが、私たちができるのは今回のようなスキームを作っていくこと。例えば、スポンサーとしてお金を出したとしても、この先も永続的に支援し続ける保証はないですし、社員のボーナスを削ってまで支援していくようなことが後々出てくるようでは安定性が保てません。しかし今回の電力事業では、スポンサーほど高いハードルではなく、気持ちでは支援しているけど気持ち以上に実質的な支援がなかなかできないという方や企業にとっては、このスキームが当てはまると思っています。私たちも営利企業ですから、戦略的に電力の契約数を増やしていこうという思惑はもちろんあります。でも、それ以上に長い目で見たときにこの事業が、『スポーツの力を変えるだけの力がある』のではないかと期待をしています」
電力事業を始めたからには、契約件数を増やしていかなければならず、その知名度を高めるためにも東京Zが集客数を増やすことが先決と言えよう。山野代表に目標件数を伺ってみた。
「ここは声を大にして、『大田区民70万件』と言いたいところですが、件数は僕らもやってみないと分からないのが正直なところです。僕らは皆様の愛と心の輪で成り立っているクラブです。観客数も確実に増えてきており、皆様のお気持ちで『どうせ同じ電気代を払うならば』と思って契約していただけるよう、まずは最初の1件をしっかり取れるようにしたいです」
すでに募集は始まっている。東京Zを支えたい気持ちをチケットやグッズ購入などだけではなく、生活に欠かせない電気代としてクラブを支える新しい試みに注目だ。
文・写真 泉 誠一