バスケットボール・スピリッツはおかげさまで第5号が完成した。「エースの名にかけて」というテーマのもと、各クラブのエースを特集している。表紙はアルバルク東京の田中 大貴選手。中をめくると、シーホース三河の比江島 慎選手のインタビューを紹介。比江島選手は、Bリーグで燃えるライバルとしてA東京を挙げていた。
今シーズン初顔合わせとなった三河vsA東京戦は、1勝1敗の痛み分け。初戦はA東京が堅守から勝利をもぎ取り、対策を練って臨んだ三河が翌日にリベンジを果たした。両エースは初戦でともに20点を挙げる活躍。2戦目は比江島選手が21点、1ゴール少ない19点の田中選手だったがアシストを5本決めている。レギュラーシーズンにおいて、オーバーカンファレンスの対戦は2試合しかない。このライバル対決が次に見られる可能性があるのは、チャンピオンシップとなる。
ギャレット選手とのマッチアップは楽しかったが、勝たなければいけない相手
比江島選手はライバル対決とともに、同じポジションの外国人選手であるディアンテ・ギャレット選手とのマッチアップを心待ちにしていた。
「今までマッチアップしてきた相手とはリズムから何から全て違うと感じました。ギャレット選手は余裕を持ってプレイしていましたし、上手いというのは分かっていましたが、実際にマッチアップしていて楽しかったです。でも、勝たなければいけない相手。明日はしっかり抑えたいです」
「抑えたい」という言葉通り、ディフェンスに意識を集中させて向かい、最初から“比江島スイッチ”をオンにしていたように見えた。
「ディフェンスから入ろうという意識はものすごく高かったです。最初は思ったより向こうも仕掛けてこなかったような感じもありましたけど、うまく守れていたとも思っています。でも、勝負どころはさすがだなと思いました」
平均17.8点のギャレット選手を、初戦は11点に抑えることができ(翌日は16点)、そのマッチアップは見応えがあった。ギャレット選手にも比江島選手の印象を聞いてみた。
「自分からクリエイトして得点でき、シュートの確率も高い。オールスターで彼のムーヴを見ていましたが、非常に得点能力が高い選手です」
この2人の対戦を心待ちにしていたのは、比江島選手やファンだけではない。三河の鈴木貴美一ヘッドコーチも同じ気持ちでコートに送り出していた。
「比江島vsギャレットの戦いは私自身も楽しみにしていました。比江島も点数を獲ってくれましたが、勝負どころで相手の駆け引きにやられた感じです。けっして負けていたわけではなく、今後も楽しみです」
「エースの名にかけて」チームを高みに登らせていく
東地区1位のA東京vs西地区1位の三河戦だけあり、非常に緊張感ある好ゲームであった。『比江島vsギャレット』 だけではなく、A東京の竹内譲次選手が桜木ジェイアール選手やギャビン・エドワーズ選手に体を張って守り、リバウンドを奪ったマッチアップも見応えがあった。新戦力たちの役割が明確になり、フィットし始めている。チーム力が上向いていることを田中選手も実感していた。
「前半戦は、例えばうまくボールをシェアできなかったり、ディアンテが3人マークがいるところに突っ込んでしまったり、あまり良いとは言えない判断が見えていました。バランスを見てプレイしようと心がけていますし、自分が積極的に仕掛けることによって彼もやりやすくなります。トロイ(ギレンウォーター)も含めて、お互いに良くなってきているし、良いコミュニケーションが取れてきています。この質をもっともっと上げていきたいです」
三河vsA東京の初戦も、翌日に行われたダブルオーバータイムまでもつれたサンロッカーズ渋谷vs栃木ブレックス戦も、Bリーグを取材してから初めてというくらい満足させられるゲーム内容であった。チーム力が向上し始め、より強固なものへと変貌を遂げる時期にさしかかっている。
“エースの名にかけて”
今号で紹介する各クラブのエースたちが牽引し、チームをさらなる高みに登らせていく。その激しい戦いが、Bリーグをさらに白熱させたものにすることだろう。
文・写真/泉 誠一