今大会最初の波乱は拓殖大の1回戦敗退だろう。対戦した名古屋経済大は203cmの#15ジャニパプ・マリックスイラがゴール下を支配し前半を4点リードで折り返すと、後半も試合の主導権を握ったまま94-67で快勝した。この試合で19得点を挙げた#91松本健児リオンはキャプテンとして攻守でチームを牽引。続く札幌大戦にも勝利し、インカレ3回目の出場で初のベスト8進出を果たした。だが、関東1位の筑波大に挑んだ準々決勝ではそれまでの勢いも通じず59-95で完敗。精彩を欠いた松本は「自分が不甲斐ない。チームのみんなに申し訳ない」と、あふれる涙をこらえることができなかった。しかし、翌日の順位決定戦(対関西学院大)のコートにいたのはしっかり気持ちを切り替えたキャプテン。取り戻したアグレッシブなプレーで勝利に貢献すると、その顔に再び明るさが戻った。(※インタビューは11月25日の筑波大戦後)
――筑波大戦はどのような気持ちで臨みましたか?
やはり相手は関東トップの強豪チームなので最初から力の差はわかっていました。だから僕たちはチャレンジャーの気持ちで挑もうとみんなで話していて、僕自身もこの一戦を楽しみたいと思っていたんですが、自分の力が全然出し切れませんでした。周りのみんなはすごく頑張ってくれているのに、自分だけが全然ダメで、キャプテンなのに足を引っ張ってしまって情けない気持ちでいっぱいです。
――点差は開きましたが、随所にいいプレーも見られたと思います。
うちのチームの武器はディフェンスやリバウンドからの速攻とか思い切りのいいシュートなんですが、みんなはそれを頑張ってくれたと思います。ただ僕だけができていなくて、なんでだろう、とにかく全然ダメでした。
――キャプテンとしての責任を感じて、少し硬くなってしまった?
はい、多分そういう部分もあったと思います。コートの上では1番声を出して、プレー以外のところでもチームを引っ張っていくのがキャプテンとしての自分の仕事だと思っているんですが、今日はそれもできていなくて、逆に1年の遠藤(和希)に助けられた感じでした。
――この試合では「発揮できなかった」という自分の持ち味はどういったものでしょう?
まず元気のいいところ。常にリングにアタックする姿勢は自分のいいところだと思っています。プレーで言えばドライブが武器です。果敢に攻めこむところが自分の持ち味です。
――筑波大と差を感じたところは?
やはり個々の技術とかフィジカルの強さとか、そういうところは本当に差があって、大会全体を見ても他のチームより抜きん出てるなあと感じました。自分の力は出し切れなかったですけど、大学の最後にナンバー1のチームと戦えたことはいい経験になったと思います。後輩たちにとっても次に繋がる財産になったと思っています。
――1回戦で関東の強豪チームである拓殖大を破ったことも財産になったのではないですか?
はい、もちろんそうです。1回戦で拓殖大と当たることがわかってから、とにかく「打倒、拓大」の気持ちで練習してきました。(拓殖大のエースであるジョフ・チェイカ・アハマド)バンバがケガで出ていなかったこともあるかもしれませんが、それでもあの試合でうちは120%の力を出せた気がします。
――あらためてインカレを振り返っての感想を聞かせてください。
筑波戦での自分はほんとに不甲斐なかったですが、チームとしてはすごくいい経験になった大会でした。やっぱりインカレは特別で、ここで戦って初めてわかるというか、得るものは大きいと思います。僕は北陸高校の出身ですが、筑波大には(北陸高の)同期の満田(丈太郎)や木林(毅)がいて、試合が終わったあと「お疲れさま」と声をかけに来てくれました。自分は全然ダメだったので情けなくて、そういう自分が悔しくて涙が止まらなくなっちゃったんですけど、大学の最後の大会であいつらと戦えたことはやっぱり嬉しかったです。これからもずっと忘れないと思います。
文・松原 貴実 写真・泉 誠一