文・松原 貴実 写真・圓岡 紀夫
今大会NBDL2位で出場したパスラボ山形ワイヴァンズは登録選手こそ9名だが、ケガなどの理由で事実上プレーできるのは6名という厳しい状況の下での戦いとなった。
初戦は九州電力に(81-71)、2回戦は黒田電気に(85-75)勝利し、迎えた3回戦でトヨタ自動車アルバルク東京(NBL1位)に70-122で敗戦。3戦目は大敗となったものの、初のオールジャパン3連戦を6人で戦い抜いた経験はリーグ後半戦への自信にもつながった。
中でも光ったのは19歳の村上駿斗の活躍だ。3試合ともに40分近くコートに立ち、トヨタ東京戦ではチームハイの26得点をマークした。山形南高校卒業後、漫画家の井上雄彦氏が設立した『スラムダンク奨学生』としてアメリカ・サウスケントスクールに留学。帰国後は自らプロ選手の道を選んだ。
「アメリカで経験したことも生かし、常に全力で戦う選手になりたい」という19歳に、初めて立ったオールジャパンの舞台、これからプロ選手として目指す道について語ってもらった。
――初めてのオールジャパンで戦った感想を聞かせてください。
村上:今回は6人で戦うというチーム状況の中で初戦と2戦目は社会人のチームと戦ったわけですが、自分たちはプロチームだというプライドもあったし、自分はまだ19歳ですがそれでもプロ選手であることには変わりないので社会人チームには負けられないという気持ちでコートに立ちました。
今日の相手はトヨタ(自動車アルバルク東京)という日本でもトップの強豪チームだったので、負けても当然というのはおかしいですが、なにも恐れることはないという気持ちでした。個人的にはたくさんの人が観ている中で活躍したいと思いもあって、最初からガンガン攻めていこうと決めていました。
――結果は敗れたわけですが、自分としては思いどおりに戦えたと感じていますか?
村上:オフェンスの方はまぁ思いどおりに戦えたと思います。(トヨタ東京を相手に)70点取れたのはまぁ合格点ではないかと。でも、ディフェンスでは反省点がたくさんありました。6人で3連戦するという疲れもあったかもしれませんが、ディフェンスの甘さから相手にイージーバスケットをやられてしまい122点も取られたことは悔やまれます。多少疲れていても自分はまだ若いのだから、もっとタフなディフェンスを継続できるようにならなくてはと思いました。トヨタは連係プレーがとてもスムーズで、強いチームというのはこういうプレーをするのだなぁと戦いながら勉強になったこともいろいろありました。そういうことも含め、とてもいい経験になったと思います。
――高校を卒業後、渡米してバスケットを学んだわけですが、そこで得たものはどんなことですか?
村上:コミュニケーション能力と、誰と試合をしても恐れない気持ちの強さです。アメリカでは周りにすごい選手がいっぱいいて、そういう人たちに自分から当たっていかないと負ける世界なので、とにかく練習でも試合でも全力を尽くすしかありません。どんなに相手が強くても自分の持つ力をすべて出し切って、それで負けたらまた練習する、そういう習慣を身に付けられたことはよかったです。今日の相手(トヨタ東京)も強いことはわかっていましたが、それでも全力でぶつかっていけたのはアメリカで身に付けたもののおかげかもしれません。
――コミュニケーション能力というのは具体的にはどんなことですか?
村上:自分はもともとだれとでも仲良くできるような性格なんですが、アメリカに行ったときは英語が全然話せなくて、その分どうやってコミュニケーションを取ればいいのかずっと考えていました。それから必死で英語を勉強して、3ヶ月ぐらい経ってようやく言葉でもコミュニケーションを取れるようになったんですが、そういった経験からいかに言葉が大切かを痛感しました。それからはコミュニケーションを取るとるために自分から進んで話すようになったと思います。
――帰国して『プロ選手』になったわけですが、自分がプロだという自覚はどのように芽生えましたか?
村上:それはチームメイトである#3のウィリアム・ナイト選手の影響が大きいと思います。彼はNBAの選手はどんな食事を摂っているのか、どんな練習をしているのか、どんな生活をしているのか、プロの選手とはどういったものかについて事細かに教えてくれ、彼自身もそれを実践しています。36歳の彼からコートの中でも外でもいろんなことを教わることで自分の中にもプロとしての自覚が芽生えてきました。
――チームの中で自分が求められているのはどんなことだと思いますか?
村上:成長だと思います。
――それをもう少し具体的に言うと。
村上:まずは1対1の突破力ですね。リーグの前半戦が終わってからオールジャパンまでの1ヶ月はナイト選手と毎日1対1の練習をしてきました。それが今日の試合でも生きたと思います。練習を重ねたことで思い切ってプレーすることができました。これからは1対1の能力をもっと上げて、バリエーションを増やして止められない選手になりたいと思っています。
――今大会はプロ選手としていい経験になりましたね。
村上:はい。自分は大学をあきらめてこの道を選びましたが、それが正しかったのかどうかはまだわかりません。この大会はいろんなカテゴリーのチームが集まり、自分と同い年の大学生もいます。その舞台で自分の選択は間違いではなかったことを証明したい気持ちがありました。3日間、ずっと出ずっぱりでプレーができたことはすごい経験になったし、自信にもなりました。今は感謝したい気持ちでいっぱいです。
――これから自分が目指すものについて教えてください。
村上:コートの上で1番ハッスルする選手、チームを元気づける選手になりたいです。今日の試合では相手の外国人選手とちょっとやり合う場面がありましたが、勝ちたい気持ち、絶対負けたくない気持ちはこれからも出していくつもりです。ビビッていては勝負にならないということもアメリカで学んだことの1つだと思っています。来年から新しくBリーグがスタートしますが、その1部チームでプレーできることを目標に頑張っていきたいと思います。