Text & Photo by F.Mikami
日立サンロッカーズ東京とトヨタ自動車アルバルク東京との間でおこなわれた、NBLのプレイオフ・セミファイナル第3戦。結果は81-72でトヨタ東京が勝ち、NBLとしては初のファイナル進出を決めた。
その試合のスタッツを見てみると、トヨタ東京がレギュラーシーズンの平均得点83.7点の日立東京を72点に抑え、また日立東京最大の武器ともいうべき高さを生かしたリバウンドでも2本勝っている(46-44)。またセカンドチャンスポイントはトヨタ東京の「19」に対して、日立東京は「4」。相手のターンオーバーからの得点もトヨタ東京が「14」で、日立東京は「2」である。これだけでも勝負を分けた要因は見えてくるが、ここでは少し違うところにも目を向けてみたい。
ゲームをごく簡単にたどれば、下記のようになる。
前半を終えてスコアは34-34。第3ピリオドにトヨタ東京が一時11点のリードを奪うものの、終わってみれば5点のリードに縮まっている。
ラスト10分でどちらに転ぶのか、最後までわかりそうにない。
案の定、第4ピリオドで先に得点を動かしたのは日立東京。フリースローで3点差。が、そこでトヨタ東京も踏ん張り、そこからの数分間は3点から6点の点差で推移していく。
次の流れはどちらが奪うのか――。そんなことが頭をよぎった残り6分17秒、日立東京のアイラ・ブラウン(193センチ・105キロ)が取ったリバウンドに、トヨタ東京の伊藤大司(184センチ・78キロ)が下から飛びつき、両者はそのままコート上で縺れ合う。ボールの動きが止まるヘルドボールになったが、ルールによりボールの保持はトヨタ東京へと移る。
1つ目のポイントがここ。一回りくらい体の大きいブラウンに対して、伊藤は隙あらばボールを奪おうと考えていた。果敢なるボールへの執着心。
伊藤は振り返る。
「あの場面は取ることに必死です。もちろん高さでは勝てないので、今までの経験というか、勘というか、降りてくる瞬間に飛びついたり、下に転がっているボールは取ろうという考えでした。何としても取ってやるという気持ちでしたね」
そのプレイで得た次のオフェンスで、伊藤は菊地祥平のミスショットをリバウンドし、残り5分55秒、セカンドチャンスからの3ポイントシュートを沈めている。ここが2つ目のポイント。自ら奪ったボールを、直後の攻撃機会ではオフェンスリバウンドに絡むことによって相手へ渡さず、さらにリードを4点差から7点差に拡げるシュートを決めているのだ。吠える伊藤。
しかし、彼はそのシーンをあまり覚えていない。
「とりあえず勝ちたいという思いだけです。もちろん前半に3Pを2本決めていたので気持ち的にはよかったんですけど、あの3ポイントは勝ちたいという強い思いが体を動かしてくれたんだと思います」
気持ちでボールを奪い、気持ちでシュートを沈めたということか。しかし、それこそが伊藤の真骨頂。時間にしてわずか“22秒”の出来事だが、彼の一連のプレイがファイナル進出を決めた要因の1つになったと言っていい。
今週末から始まるファイナルでは、アイシンシーホース三河と対戦する。伊藤はトヨタ東京の武器であるチームディフェンスでアイシン三河の攻撃を止めたいと言う。そして自身に目を向けて、こう続ける。
「僕の持ち味はダーティーワーク(泥臭いプレイ)やハッスルプレイ。スピードや身体能力ではほかのPGに勝てない分、そういったところでチームに勢いを与えたい。ファイナルでも、ひたすらに自分の役割を果たすだけです」
リーグ最大の脚光を浴びるファイナルだが、最大で5戦あるだけに好調をキープするのは難しい。となれば、シリーズを通して泥にまみれ、ハッスルできる選手の多いチームが勝つのではないか。そんなことを感じさせる“22秒”だった。
■NBL 2014-2015 ファイナル
GAME1 5/23(土) トヨタ東京vsアイシン三河 15:00
GAME2 5/24(日) トヨタ東京vsアイシン三河 15:00
GAME3 5/25(月) トヨタ東京vsアイシン三河 19:15
GAEM4※5/30(土) トヨタ東京vsアイシン三河 15:00
GAME5※5/31(日) トヨタ東京vsアイシン三河 15:00
会場はいずれも国立競技場代々木第二体育館(東京都渋谷区)
3戦先勝方式のため、4戦、5戦は開催されない可能性があります。
NBL PLAYOFFS 特設サイト ⇒ http://www.nbl.or.jp/playoffs2015