「JAPAN 2024 TASKFORCE」の第5回会議とJBA(公益財団法人 日本バスケットボール協会)の臨時評議員会および臨時理事会が都内で行われた。今回の一連の会議は、FIBA(国際バスケットボール連盟)から求められた3つのテーマ(男子2リーグの統合、JBAのガバナンス強化、男女日本代表の強化体制確立)のうち、「ガバナンス強化」について大きな一歩を踏み出すもの。タスクフォースが新役員の人事案を評議員会に提案し、承認。その後、臨時理事会開催という段取りだ。日本のバスケットボールの未来を担う新しい理事会メンバーが以下の通り決まった。新任の理事・幹事は8名。
【会長】
川淵三郎:日本サッカー協会最高顧問/首都大学東京 理事長/タスクフォースチェアマン/JPBL(ジャパン・プロフェッショナル・バスケットボールリーグ)チェアマン 他
【副会長】
小野清子:元参議院議員/日本オリンピック委員会名誉委員 他
三屋裕子:日本体育協会日本スポーツ少年団副本部長/日本バレーボール協会評議員/サイファ代表取締役 他
【専務理事/事務総長】
大河正明:日本プロサッカーリーグ常務理事/JPBL理事 他
【理事】
山本一郎:JXホールディングス執行役員総務部長
間野義之:早稲田大学スポーツ科学学術院教授/日本体育協会 指導者育成専門委員会委員 他
【監事】境田正樹:弁護士/タスクフォースメンバー/JPBL理事 他
須永 功:税理士/日本スポーツ振興センター 助成事業評価ワーキンググループ委員/日本サッカー協会財務委員
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■“心強いメンバー”で議論する理事会へ
臨時評議員会、臨時理事会に関する報告記者会見は大河専務理事が一人登壇し、記者の質問に対応した(一部抜粋)。
「今日、臨時評議員会、臨時理事会が行われました。今まではオープンにやっていましたが、個人のケースもあると聞いています。今後はしっかりと理事、監事で議論をした後、ブリーフィングをさせていただきます。ブリーフィングに誰も来なくなると寂しいと思っていますので、今後ともよろしくお願いします」
「FIBAのインゴ・ヴァイスさん(タスクフォース コーチェアマン)と打ち合わせをし、資料を作り直して評議員会、理事会に臨みました。まずは臨時評議員会が開かれ、新役員の選任についてお話をしました。理事6人、監事2人について(日本の定款により)個々に討議され承認されました。(JBAの)定款の改正をしておりますので、追ってホームページなどで公表することになります。また、機会があればタスクフォースの振り返りも含め、定款・基本規定がどういう考え方でどういったところを変えたのかをご説明できればと考えております」
臨時理事会では互選により代表理事、業務執行理事の選任が行われた。「事務総長予定」ということで大河専務理事から「タスクフォースチェアマンの川淵氏を会長に」という提案があり、全員賛成。その後、川淵新会長の提案として「副会長に女性2人と専務理事・事務総長の提案」があり、こちらもすんなりと決まった。
「メンバーにおいてはバスケットが本職ではないかも知れませんが、オリンピック選手が6名中3名(川淵氏、小野氏、三屋氏)含まれていたり、ガバナンスの専門家である山本さんがいらっしゃったり、早稲田大の教授でスポーツにお詳しい間野先生もいらっしゃいます。“心強いメンバーで議論が行われていく”ということであります。現状、新役員がすべてバスケット界以外の人間ですが、私も山本さんもバスケットをやっていた、“バスケットを愛する者”ですので、まったく誰もバスケットを知らないということではありません」
今回の人事に関しては、前回のタスクフォースの会議を受けてこんな質問も。「バスケ界の人間を7人目の理事として選ぶかも知れないという話が出ていたが、今現在、人選は進んでいるのか?」大河専務理事の回答こうだ。
「個別の人事になりますので、話せる内容に限りがありますが、拙速に誰かを選ぶことはやらないほうが良いだろうと思います。まずはこの体制で数カ月間やってみた上で、バスケットの本当の専門家がいないと、理事会レベルを技術面のところであげる必要があると感じたら人選を進めていきます。今日はまず、今回決まったこのメンバーでやれることころから様子を見て考えるになると思います
7人目はしばらく白紙ということであろう。いずれにしてもここから本当の改革がスタートする。荒れた海への出航となるが、日本のバスケットボールファミリー全員がクルー。皆が困難を乗り越える覚悟を持たなければならない。より多くのファン・理解者を得て、しっかり土台を築き、世界へチャレンジできる環境を創出することが大切だ。
■“20年後には空を飛ぶ勢い”のバスケへ
この日は「タスクフォース第5回会議」→「臨時評議員会」→「臨時理事会」の順で進み、記者会見はタスクフォースとJBAの共同開催で2部構成。第1部は第5回会議報告とJBA新理事の紹介、第2部として臨時評議員会および臨時理事会に関する報告と2015年度女子日本代表候補選手の発表が行われた。前述の記者会見の前に、新理事の紹介が行われた(一部抜粋)。
川淵:タスクフォースのチェアマンの延長線上で「会長」職を与えられたということ。タスクフォースは第5回会議でしたが、山登りで言うと8合目くらいまで来たかなという感じです。FIBAとは密に連携しており、6月18日~20日の総会(川淵氏が出席予定)ではよほどのことがない限り、対外試合の禁止(制裁)は解除されると思っています。
今日、新しい理事が誕生しました。1月末にスタートして3カ月ちょっと……FIBAの条件も満たし、新しいメンバーで1年間理事会を運営していくわけです。女性の副会長が2人いますが、これは日本の競技団体の中でも初めてだと思いますし、体操界、バレーボール界、サッカー界、バスケットボール界の競技団体の出身者が理事を占めているのも今までにない稀有な例だと思います。それこそが“新しいバスケットボール協会の、新しい誕生”を証明しているものだと思います。1年間でしっかり基礎固めをし、「あの時期が日本のバスケ界のターニングポイントだった」と言われることになるように努力していきたい。
乗りかかった船だからともかく沈まないように。順風満帆で船が動くまでには、まだ時間がかかると思います。でもこの船は勢いよく走り出し、10年後20年後には“空を飛ぶ勢い”になるくらいのバスケットボール界になることは間違いないと、私は確信しています。
リーグの統一にしても、ここが一番の難点と思ったんですが多くの皆さんの協力によってここまで来られました。JOC(日本オリンピック委員会)や日本体育協会、文部科学省もそうですけれど、何と言ってもFIBAという後ろ盾があったから。これは日本のバスケットボール界にとっては本当にラッキーだったと思います。
新リーグの繁栄が、日本代表が世界のひのき舞台で活躍することに直結していきます。バスケットの日本代表が活躍できるよう、われわれはベストを尽くしていきたいと思いますので、今後ともご支援をよろしくお願いします。
小野:役員の一員となり、責任を痛感しています。川淵会長を中心に全力を挙げて、バスケットボール界の発展のために少しでもお役に立っていきたいという気持ち。私どもが躍進できるよう、皆様方からの応援もよろしくお願いをいたします。
三屋:大任であるということはわかっておりましたが、いざこの場に立つとよりひしひしと重責が迫ってくる気もします。私の場合、バレーボールが見え隠れすると思いますが、今回はバレーだからバスケットだからではありません。私は「スポーツに育てていただき、スポーツが大好き」とそういう立場の人間がバスケットの状態を見過ごしてはいない、支えていかなければいけないという思いでいます。バスケットの経験や知識がないことを逆に生かし、FIBAから指摘があったガバナンスの欠如を一日も早く払しょくし、ガバナンスの効いた組織をつくれるように、精いっぱい頑張りたいと思います。
大河:川淵会長が乗りかかった船とおっしゃいましたが、私も乗ってしまうことになりました。この船が沈むと大変なので、一生懸命漕いで前に進んでいきたいと思います。いろいろな方に支えられながら、応援していただきながら、前に漕いでいきたいと思いますのでこれからもよろしくお願いします。
山本:私はJXホールディングスという会社に在籍していますが、この会社は2010年に経営統合してできた会社です。ホールディングスという純粋持ち株会社の傘下に、中核事業会社が3社あり、日々ホールディングスと中核事業会社の間で「どうガバナンスをしていったらいいか」ということを考える職に就いています。5年が経過しましたけど、未だにいろいろ改善すべきところは多く、仕事上、ガバナンスを中心に考えてきております。こうした経験・知見が少しでも生かせればいいなと考えています。ぜひ新しいバスケットボール界の体制を注目していただきたいと思っています。どうぞよろしくお願いします。
間野:早稲田大学でスポーツ政策を教えています。スポーツ政策には幅広い範囲があり、もちろん法案が通過したスポーツ庁のような組織体制もありますけど、それ以外にもスポーツ施設、スポーツ指導者、スポーツイベントなど全般を研究してきました。その成果の一部を、バスケットボール界に生かすことができればと思っています。
2020年東京オリンピックでピークを迎えるのでなく、その後にレガシー(遺産)をどうつくり残していくのか。そのための、今日が第一歩です。小さいけれども、振り返ってみたら大きな一歩になっていたということになるのではないかと思っています。
境田:今年の1月にタスクフォースの委員に(川淵チェアマンとともに)就任させていただき、4カ月間いろいろな課題に取り組んできました。男子リーグの統合が実現できたこと、FIBAから求められているJBAのガバナンス改革がある程度できたことをうれしく思っています。この間、FIBAは(特にインゴ・ヴァイスさんが)一生懸命、日本のことを考えてくださいました。そのことに心から御礼を申し上げたい。それからリーグ統一にあたっては47チームの関係者の方々、JBA、bjリーグの執行部の方々、それ以外にもいろいろな方々が本当に一生懸命支援をしてくださったと思います。そのことに関しても、心より御礼を申し上げます。
引き続き監事という形で関わらせていただきますが、さまざまな課題に取り組んでいきたいと思いますので、引き続きご協力をお願いします。
須永:私はこれまで各種の競技団体や国際大会に携わってきました。スポーツが国や国民を豊かにすることは間違いありません。私はこれまで培ってきた知見を生かし、今回のバスケットボール界の改革、発展にできる限りの尽力していく所存です。
今回はバスケットボール界の改革ですが、ガバナンス改革の基盤となるのは「財政の健全化と透明化」であることは間違いありません。これはJBAのみならず、各都道府県、それから各種連盟も含めたところで、密な連携を取っていく必要があると感じています。どうぞよろしくお願いします。
■制裁解除は“まったく心配していない”
――新体制が発足し、「ガバナンスの強化」と「リーグ統一」、「代表強化」の3点について道筋がついたと思うが、制裁は6月で解除の見通しなのか?
川淵 大丈夫です。バイスさんと詳細を詰め、どこが問題だと言われた時に日本の立場からすればFIBAの言うとおりにはならないという議論も重ね、方向性を合わせながら解決していっています。そういうことから言うとまったく心配していません。
――旧体制の理事が、そのまま各委員会などの委員長として残っているが、このまま担当してもらうのか、ある程度の時期に入れ替えるのか?
大河 理事を外れても、専門委員は専門委員だと思います。その仕事を停滞させるわけにはいかないので、当面は続けていただくことになると思います。一方で専門委員会もいっぱいありますので、それが本当に必要なのか、逆にもっと強化する必要があるのではないかなど、(私が今日、選任されましたので)早急にいろいろと会談しながら見極めたいと思っています。なるべく早く理事会に提案し、議論したいと考えています。
――制裁解除後もガバナンスをさらに整備していかなければいけないと思うが具体策は?
川淵:一番難しいのは、1部2部にチームが振り分けられた時、戦力に相当ギャップが出てくる可能性があります。特にbjリーグはオン・ザ・コート3があるわけですから、外国人選手がいなくなった時の実力は、NBLに比べてかなり非力な感じがあると思う。しかし1部2部にわかれると選手は1部に行きたくなるから、移籍を積極的に、両チームが納得した上で(選手を)動かすことができるような環境整備をどうするのか。(FIBAは)3人は認めないと言っているわけで、少なくとも2人以下にはなるけれど、その場合にピリオドごとの外国人の登場をどう認めるのか。「面白いやり方ができるのではないか」「ファンの興味や関心を集めるやり方は!?」と、クラブの責任者同士で議論をしながら方向を見つけられれば良いと思います。私自身は口出ししないほうがいい(笑)
バスケットボール界においてはトップリーグの成功が一番にあって、それが続けば代表強化は自ずとできるということです。
――ガバナンスについては?
川淵:ガバナンスはあまり言いたくないことがあったりする……契約問題とかいろいろ。その時にはJBAが良いと思ってやった契約なんだろうけれども、僕らの立場から見ればちょっとそれは相手に寄り過ぎではないか、協会の立場をもっと主張して契約をすべきではなかったと(今になって)思うことがあります。提携先、契約先との見直しを積極的にやっていかなければならないと思っています。
――(新リーグへの入会申請を終えた)47クラブを精査すると、結果として入会を認められないケースもあり得るのか? 和歌山トライアンズについてはどうなるのか?
川淵:内容について詳しく聞いていませんけれど、今度の新しいトップリーグでやる条件ははっきりしています。例えば5,000人以上収容のホームアリーナで8割以上のホームゲームを開催することは、1部参入の必須条件です。2部であれ3部であれ、地方自治体と連携を取って、行政サイドがプロと認めるチームという条件や、都道府県のバスケットボール協会からきちんと了解を取って、“わが街のプロチームとして認められている”こと等々。きちんと達成、実現できていないチームは欠格条件となる可能性があり、とりあえず申し込んだら入れるというわけではありません。ヒアリングを通じて、具体的にどうアプローチができるのかを確認した上で、無理だと思ったら入ることはできないということになります。ただし、本当にバスケットボールのクラブをそこで育てていきたいと思うならいつも扉は開けています。門戸を閉めてしまうわけではありません。
――62万人の登録選手、バスケファンの方たちにどう訴えていこうと考えているのか? 新理事会が外に向かってどういう活動をしていくのか?
川淵:登録数62万人というのは、本当にすごい数字で女性が30万人。細部まで知っているわけではないが、そこへの働きかけは無きに等しかったのではないかと思います。僕が観戦した時、女性が2、3人で来ているというのが結構多く、「ボーイフレンドを連れてきてくれれば……」と思ったんだけれども(笑)
サッカーはJリーグをスタートする時に、「ガールフレンドと一緒に来い」と一生懸命言ったんです。プレイしてきた女性たちがバスケを愛しているなという感じはすごくあって、どうすれば仲間をアリーナに連れてくるのか、そういうことを積極的に働きかけなければならないということだと思います。
何度も申し上げたとおり、“バスケットが絶対に成功することは間違いない”し試合を観ても本当に面白い。しかし、バスケットを観たことがない人が圧倒的に多いわけだから、そういう人たちをいかにアリーナに連れてくるか。だから、ホームアリーナで8割やらなきゃダメだと言っているんです。各クラブがようやくわかり始めたと思うんですよ。Jリーグが学んできたことを伝え、各クラブが自分の工夫の中で多くのファンに働きかけていく。どうアリーナに来てもらうか、そこがこれからの一番問題です。協会とクラブが必死になってやらなければならないし、使命感を持ってやってもらいたいと思います。
■プレイヤーズファースト
――各理事の方はどこに問題があって、どうアプローチしたいと考えているか?
小野:身近なところでは、海外に行くとどんな小さな公園にもシュートができるゴールがあります。日本も銀座の真ん中に一個あるのを知っていますが、市民スポーツの原点は一般の人がいかに関われるかということ。そういった意味で、素人考えからの意見も聞いていただき発展のための一石になっていきたいです。
三屋:現在はスポーツの企画運営をする会社の経営など、数社の経営に携わっています。(企業においては)コーポレートガバナンスの強化が言われていますので、その部分で私がやってきたことで多少でもお役に立てればと思っています。それから、元アスリートとして“プレイヤーズファーストの組織を早く回復させないといけない”と思っています。本当にプレイヤーズファーストの組織づくり、透明性を持ちガバナンスの効いた組織づくりのために協会がどうあれば良いのかというのは、今まで経験がありません。この経験が自分の母体にも生かせるよう精いっぱい頑張りたいと思っています。
時間があればバスケットの試合会場に顔を出させていただき、都道府県協会の方々とコミュニケーションを取りたいと思っています。理事会だけではなくて、47都道府県の協会の皆さんと一緒に、バスケットボールをどうやっていくのかということも、これから一緒に考えていかなければならないと思います。川淵さんお一人では無理なので、理事も手分けして、コミュニケーションを密に図っていくためにはどうしたら良いのかということも含めて頑張っていきたいと思っています。
■バスケットボールの社会的価値
大河:Jリーグが始まってしばらく経ち、『Jリーグ百年構想』というのをつくって“スポーツで、もっと、幸せな国へ”というスローガンを掲げました。サッカーの話をすると、J1からJ3まで52のクラブができ、その予備軍に百年構想クラブがあと6つあります。40都道府県に58クラブができ、それが地域に根差したスポーツクラブとして少しずつ成長してきています。
やっとバスケットも、地域に根差したスポーツクラブとして第一歩を踏み出せるし、そのためには47都道府県のサポート、市町村の支援がなければなりません。ファンがいて、応援していただけるスポンサー企業があって……という考え方は、地域に根差していくぞと決めた以上、バスケットもサッカーもまったく一緒だと思います。「スポーツで、もっと、幸せな国へ」が、一歩進むことになるのかなということで、私はそれを自分の夢として、新しいバスケット界でぜひ実現したいなと思っています。
山本:私個人としては、中学生から大学を出るまで(大したプレイヤーではなかったのですが)、バスケットを楽しみました。バスケットが好きですし、バスケットボール協会、バスケットをしている若い子たちに何か貢献ができればという思いがベースにあります。社会人としては、勤務先が企業スポーツとして野球部、女子バスケットボール部という、2つの大きなスポーツクラブを持っています。会社の中の立場上、こうした部が地域の方々にどういう貢献ができるのか、一企業としてやれることには限界がありますが、全国レベルで活動しているバスケット、野球がどういう地域貢献ができるのかというのはいろいろ議論している立場です。そういう経験を、バスケットボール協会の理事という立場で生かせればうれしいと考えています。
間野:私たち理事には特定の所掌業務はなく、全般についてこれまでの知見・経験に基づいて意見を述べるということを聞いています。その中で私は5点ほど考えていることがあります。
1つ目はバスケットボールによる地方創生。東京一極集中を避け、日本全体が繁栄していくためにバスケットボールをどう活用していけるか。
2つ目は新しい体育館、アリーナのあり方。多機能複合化し、従来のスポーツをする、観るだけでない(行政機能や商業機能、医療や福祉もあるような)新しい施設の建設。
3つ目はバスケットボールの産業化。上記の二つとも関係しますが、雇用を生むということが、バスケットの持続的発展には必要になります。産業化をトップリーグからジュニアのスクールまでを含めてどう一貫していくのか。
4つ目は障がい者バスケットボールをどう振興していくのか。障がい者バスケットボールは障がい者のためだけではなく、例えば健常者も車椅子バスケットをやるようなプログラムを展開すること。ダイバーシティーを社会の中で理解できるような、そういったところに貢献できるのではと思っています。
5つ目は2020年の東京オリンピックが終わった後に、レガシーとしてそれをトータルでどう残して継承していくのか。こんなことに取り組めればと思っています。
■ガバナンスと財政基盤
境田:私はこれまでいろいろなスポーツ団体の監査や調査、ガバナンス改革に関わらせていただきました。オリンピック種目でも年間収入には差があります。バスケットボール協会は15億円あるから、小規模な競技団体に比べれば改革できると思いましたが、200億円のサッカー協会に比べると、相当な差があると思いました。それだけの財政規模だと有能の人を雇えるし、いろいろな投資をして、攻めの運営ができる。それによって間野先生の提言のようなスポーツを通しての地方創生、国際競技力アップなどいろいろな取り組みができます。そういったことにチャレンジしていかなければいけないと考えており、川淵チェアマンのリーダーシップの下、さまざまな改革ができることが楽しみです。
須永:個人的なことですが、学生時代にサッカーをやっており、業務でもサッカーに携わっています。近所のスタジアムには必ず足を運んで、非常に幸せな状況……今回、バスケットボールに携わることになり、私も(川淵チェアマン同様)アリーナで観戦しました。非常に面白い。小・中学校時代に授業でやったことはありましたが、バスケットボールを観るスポーツとして認識したことはなかったんです。でも、生で観戦して、非常に面白かった。それをより多くの皆様にわかっていただきたいと思っています。
「理事の職務執行の状況」それから「組織の財政状態を監査する」ことが、監事に与えられた業務であり、それは根本的な業務として行いますが、こちらにいらっしゃる理事の皆様とともに、バスケットボール界の改革、発展に向けて、チームの一員として監事の職のみならずさまざまなことに携わっていきたいと思っています。
第一に(先日の臨時評議委員会で承認された)、各都道府県協会、各種連盟について、法人化を推進する──ガバナンス確立の第一歩は、財政基盤を強固にすることです。そのために法人化は欠かせません。JBAの専門窓口を設け、各都道府県の法人化を支援することが決まっています。個別の業務に関して、監事という職のみならず、私の立場で関わっていけたらと思っております。
■日本代表の強化方針
――(制裁解除を前提に)リオデジャネイロオリンピック予選も間近だが、予選突破に向けた会長なりの秘策、東京オリンピックに向けた強化の方向性は?
川淵 女子は2013年のアジア選手権で優勝しています。渡嘉敷来夢もアメリカに行った(WNBA入り)し、桜花学園を卒業した後にアメリカ留学している選手(ヒル理奈・ルイジアナ州大)、背の高い選手も出てきているので結構いいところまで行くと思っています。制裁が解除されたら予選はすぐに始まるので、海外試合を何とか体験させてあげられればなと思っています。
男子に関しては、かなり悲観的です。率直に言わないと。可能性がないのに可能性があると言うつもりは毛頭ない。男子代表がひょっとしてというなら、渡邊雄太(ジョージ・ワシントン大)が帰国し、そういう将来性のある若手選手を含めて、強化合宿をどう集中的にできるのか。短期間ではあるけれども、勝負の世界だから可能性が絶対ないわけではないという視点で積極的な強化をしていければいいと思っています。男子は女子に比べて可能性は薄いですけれども、可能性はゼロではないので、われわれとしてはプレイヤーズファーストの立場でベストを尽くしていきたいと思っています。
強化担当が(この理事の中で)誰ということはありません。大河専務理事がバスケットボール界で、いろいろ意見を聞きながら……強化担当の責任者はいるわけですけれど、すぐに明日「この人がいい」という発見は簡単にできるわけではない。短期間でそういう人が見つかれば強化担当をしてもらえばいいし、1年間様子を見ながら適任者を見つけていくということです。
■女子バレーボールを成功例とすれば
――女子バレーボールは2000年シドニーオリンピックで出場を逃し、アテネ(2004年)と北京(2008年)はベスト8、2012年ロンドンオリンピックで銅メダルと復活した。強化の大きな方向性、重要なポイントは?
三屋:初めに申し上げますが、私たちは企業でいうとボード(取締役会)で、経営と執行の分離という部分にガバナンスを効かせています。具体的な執行には関わらないと思いますが、強化がうまくいく、いかないということは育成の部分が大きいと思います。そこがシステム化されて、そこから強化に移っていく。バレーボールはそこがうまく機能していると思います。
バスケットの女子も育成から強化のラインが少しうまくいっていると聞いたことがあります。男子ができているのかできていないか、そこは未確認ですが、しっかりした育成システムの上で強化システムが乗っかっていくことが必要だと思います。従来は、たまたまいい選手が見つかった時にはいいけれども、見つからなかった時には成績が残せなかった。われわれの時代はそうでした。今はしっかりとした育成システムが絶対に必要だと思います。その部分を、オブザーバーとしてお手伝いできればと思っています。
バレーボール自体もまだまだ完全ではないと思いますが、そこの部分を俯瞰して見て行ければいいと思っています。
――いろいろな動きが短期間で起こり、賛同者が大半だがバスケ界の中では戸惑っている人もいる。今後、何を大目標とし、何を目指してやっていくというメッセージは?
川淵:どんなことでも、100人が100人賛成はあり得ません。僕の悪口を言おうと関係ないよと初めに言いましたが、「バスケ界を変えるためにやる!」といえばまさにその通り。誰かが悪口を言おうが何をしようが(僕には)あまり関係ない。
将来、何を目指すのかと言われたら、“楽しんでください、スポーツをエンジョイしてください”それがすべてです。スポーツは楽しむためにあって、苦しむためにあるのではない。日本はどちらかというと、練習で苦しむことがスポーツの意味であるというような指導者が結構多いですね。でも、試合を通してリラックスして楽しむことが大切です。上手い下手を問わず、バスケットボールを多くの人が楽しんでくれれば良いと思っています。
特に小学生など子どもたち。ものすごくたくさんの子がバスケットをやっていますよね、その延長線上で、草の根で広がって、その中からトップアスリートが育てばいいなというのが僕の夢です。
Text by M.Hajoda / Photo by M.Futoshi