第16回 Wリーグ(WJBL)ファイナルは、レギュラーシーズン1位(26勝4敗)のJX-ENEOSサンフラワーズが同3位(24勝6敗)の富士通レッドウェーブと対戦した。今シーズンの対戦成績は富士通の2勝1敗(オールジャパンはJX-ENEOSが勝利)。JX-ENEOSの連覇を阻むチームがあるとすれば、富士通がその一番手と見られていた。
ファイナルの第1、2戦は大差をつけてJX-ENEOSが連勝。一気に3連勝するかと思われたが、そう簡単ではなかった。第3戦は出だしから富士通がリードし、JX-ENEOSが追いかける展開に。
第4P、JX-ENEOSが逆転に成功し見事7連覇を達成したが、スタート5人のうち4人がフル出場という厳しい戦いになった。
「当然、休ませようと思っていましたし、何度も本人に確認しましたが、頑として首を縦には振りませんでした」苦しかったファイナル第3戦を振り返り、万全のコンディションではない#12吉田亜沙美選手(リュウ)の起用法(フル出場)について質問を受けた佐藤清美ヘッドコーチはこう答えた。メンバーチェンジのタイミングは常に頭にあり、決して無理はさせないと考えていただろう。しかし、佐藤HCの思い以上に、リュウには強い覚悟があった。
「佐藤HCから確認されましたが、とにかく今日はコートに立ち続けたかった。皆を勝たせてあげたい、優勝させてあげたいと思っていたので、絶対に休みたくなかったんです。インサイドの2人を信じてパスを出し続け、アウトサイドの選手もシュートを決めてくれると信じてパスを出し続けました。仲間を信じてパスを出し続けること、それだけを考えてプレイしました」(吉田)
チームメイトやスタッフも含めた「全員が自分を信じお互いを信じ合っていること」が、JX-ENEOSの強さの源。「個人的にはシュートが決まらず……でも、皆の気持ちの強さが出ていて“バスケが楽しかった”」と、笑顔でコメントしたのは#21間宮佑圭選手。
「インサイドに相手のマークが行けば、自分のところでシュートチャンスが来るとわかっていました」と、試合後の記者会見で答えた#52宮澤夕貴選手。レギュラーシーズンとプレイオフのダブルMVPを受賞した#10渡嘉敷来夢選手は「10点差になっても“自分たちは勝てる”そう信じて戦っていたので、優勝することができたと思います」と自信に満ちたコメントを残した。
このような仲間たちに囲まれたリュウは今シーズン、開幕をベンチで迎え懸命のリハビリを経てコートに帰って来た。周りの人たちに何度となく助けられ、励まされて、「自分はプレイすることで恩返しがしたい」そう考えたに違いない。次のことより、今が大事だったのだ。そして、その思いをチーム全員が受け止めたからこそ、優勝という最高の結果を手にすることができた。
この覚悟はそう簡単にできるものではない。辛い思い、嬉しい出来事をたくさん経験したからこそ──試合後に行われた、今シーズンのリーグ表彰(アウォード、リーダーズ)にリュウの姿はなかった。ベンチで仲間を見守り、心からの拍手を贈っていた(※東京運動記者クラブ バスケットボール分科会選出の年間ベスト5受賞)。
ファイナル第2戦で12得点、12リバウンド、8アシストを記録し、第3戦では11得点、6リバウンド、11アシストとトリプルダブルに近づく素晴らしい数字を残したリュウ。しかし、スタッツが大事だったわけではない。今シーズン、「仲間を信じる気持ちの強さ」では間違いなくリュウがMVPだろう。その気持ちを胸に抱き、コンディションをより万全に近づけてから、リュウは次なるチャレンジに挑む。
【16th W LEAGUE PLAYOFF FINAL】
JX-ENEOS 77‐51 富士通
JX-ENEOS 73‐57 富士通
JX-ENEOS 60‐56 富士通
【アウォード】
〈プレイオフMVP〉
渡嘉敷 来夢(JX-ENEOS#10)
〈レギュラーシーズンMVP〉
渡嘉敷 来夢(JX-ENEOS#10)/4年ぶり2回目
〈コーチ・オブ・ザ・イヤー〉
佐藤 清美(JX-ENEOS)/3年連続3回目
〈ルーキー・オブ・ザ・イヤー〉
篠崎 澪(富士通#11)
〈ベスト5〉
G 町田 瑠唯(富士通#10)/初
GF 本川 紗奈生(シャソンソン化粧品#6)/初
F 宮澤 夕貴(JX-ENEOS#52):初
CF 渡嘉敷 来夢(JX-ENEOS#10)/3年連続4回目
C 髙田 真希(デンソー#8)/2年連続4回目
〈レフェリー・オブ・ザ・イヤー〉※新設部門
平 育雄/初
【リーダーズ】
〈得点〉
渡嘉敷 来夢(JX-ENEOS#10):計540点 Avg.18.00点/初
〈アシスト〉
町田 瑠唯(富士通#10):計167本 Avg.5.57本/初
〈リバウンド〉
渡嘉敷 来夢(JX-ENEOS#10):計346本 Avg.11.53本/2年ぶり2回目
〈スティール〉
藤吉 佐緒里(シャンソン化粧品#8):計95本 Avg.3.17本/初
〈ブロック・ショット〉
渡嘉敷 来夢(JX-ENEOS#10):計64本 Avg.2.13本/3年連続4回目
〈フィールドゴール成功率〉
渡嘉敷 来夢(JX-ENEOS#10):213/346本 59.83%/2年ぶり2回目
〈フリースロー成功率〉
伊藤 恭子(デンソー#41):65/74本 87.84%/初
〈3ポイントシュート成功率〉
栗原 三佳(トヨタ自動車#24):84/191本 43.98%/初