スポーツには怪我がつきもので、チーム単位で考えると、それをきっかけに失速してしまうケースがあることは確かだ。団体競技とはいっても、個の集合体である以上、たった1人の故障者発生でも何かしらの影響が出ることはある。それは、厳然たる現実として受け止めなければならない。
しかし、時としてその逆の作用も起こり得るということを、12月14日の大阪エヴェッサは証明した。アウェーで横浜ビー・コルセアーズと戦った前日のGAME1、大阪はフィリピン代表に招集されたレイ・パークスジュニアを欠いていたことに加え、マット・ボンズが試合中に負傷。GAME2は得点源の2人を失った状態で戦わなければならなくなった。
その逆境が大阪に火をつけた。前日より多めに使ったというゾーンプレスでディフェンスの強度を上げ、オフェンスでは全員が積極的に得点を狙った結果、71-63で前日のリベンジを達成。その前日が7点差での敗戦だったため、対戦成績の得失点差でも1点上回ることができた。試合後の記者会見で、藤田弘輝ヘッドコーチは選手たちのメンタリティーを称賛している。

「昨日の敗戦やマットの怪我で、今シーズンいろいろとタフな状況にある中、それに対して言い訳せず、背を向けず、立ち向かっていった結果だと思います。選手1人ひとりのハードワークを誇りに思いますし、このチームのHCであることを誇らしく思います」
藤田HCは、日本人選手がいかに得点に絡むかを重視してチームを作る指揮官だ。この日のトップスコアラーはライアン・ルーサーだったが、その数字は13得点。もう1人の外国籍選手であるヴォーディミル・ゲルンが8得点だったため、残る50点は日本人選手が稼いだことになる。日本人選手の得点の内訳は鈴木達也が11得点、竹内譲次と木下誠が9得点、合田怜が7得点、青木保憲が6得点。藤田HCは彼らの名前を挙げ、確固たるフィロソフィーに基づいたチーム作りの成果が出たことを「間違いないです」と認めている。
「マットが取ってくれていた20点を誰かが埋めないといけないですけど、1人というよりは全員でアグレッシブに攻めること。我々はボールを動かしながら2メンゲーム、3メンゲームでオフェンスを展開するチームなので、そこでどうアタックするかを強調しました。ヤスや達也、マコが2メンゲームで引っ張ってくれて、合田も譲次さんも空いたシュートをしっかり打ちきってくれたのが大きかったです」
ゲルンを差し置いてスターターに起用された竹内の働きが大きかったのは言うまでもないが、司令塔である青木の仕事ぶりも見逃せないものだった。この日の数字は3ポイント2本に加えて5リバウンド8アシスト。開幕節GAME2から不動のスターターに置いている藤田HCの信頼に十分応えたと言えるが、本人は「3ターンオーバーしてる部分はすごく課題もあるし、スタッツを見ると正直良くはないですけど、チームメートがミスをカバーしてくれましたし、ペイントタッチしていったところから譲次さんが良い3ポイントを決めてくれたり、ビッグマンがしっかりセットしてくれたズレを使ってアシストできたのは良かったと思います」と仲間を立てる。何より、チームが一丸となって勝利をつかんだことが、青木にとっては重要だった。

「みんなの魂が出た試合かなと思います。マットが怪我して、レイ・パークスもいなくて、怪我明けでまだ本調子じゃない選手もいる中で、『全員がステップアップするしかない』ということを試合前にみんなで話して、勝つイメージを持って臨みました。1人ひとりのボールプレッシャーの強度だったり、リバウンドにいく姿勢だったり、そういう細かい部分の勝利がどんどんつながった試合だと思います。
怪我が起こることは本当に残念で、もちろん望んでることではないですけど、こういうときに僕らがどうあるべきか、それぞれ個人としてもチームとしてもどういうキャラクターを出すかが一番問われていましたし、みんなのメンタルも『やってやろうぜ』と、良い雰囲気になったのは事実です」











