昨シーズンのプレーオフに進んだB3クラブは、B2に昇格した横浜エクセレンスと岩手ビッグブルズを除く6クラブ。第7節を終えた現在、その中でプレーオフ枠の8位以内につけているのは香川ファイブアローズと新潟アルビレックスBBの2クラブしかない。まだ4分の1程度しか試合を消化していないとはいえ、昨シーズンとは異なる様相を呈している。
東京八王子ビートレインズは、そんな状況を生み出しているクラブの1つ。2017-18シーズンには当時存在した3つのステージを全て制し、入替戦で岩手を破ってB2昇格を果たした経験を持つが、1年でB3に舞い戻るとその後の成績は芳しくなく、2022-23シーズンから実施されているB3プレーオフには一度も進出していない。
それが、今シーズンは開幕6連勝という絶好のスタート。第7節のヴィアティン三重戦もGAME1を84-69で制すると、GAME2は後半の20分間を20失点にとどめ、103-60という圧勝だった。ここまでの1試合平均失点は香川に次いで2番目に少ない71.8点。新任の亀﨑光博ヘッドコーチも、12試合目で早くも10勝に到達した要因にディフェンスを挙げている。

「HCとして初めて指揮を執ってるんですけど、今シーズンはディフェンスをチームのアイデンティティーにしたいということを7月の始動から言い続けながら取り組んできて、ちょっとずつ浸透してきている。チームとしてやりたいディフェンスができてるからゲームが崩れることなく、自分たちのペースで戦っていけてるのがこの勝ち星につながってると思います」
この日16得点6アシストでゲームMVPに選ばれた山本楓己に加え、工藤貴哉も3ポイント5本を含む17得点を挙げ、ドノバン・クレイとジョナサン・ジャンセンも2ケタ得点と、新加入選手の働きが大きいことは確かだ。ただ、個の能力が高いだけでは勝てないのがバスケット。亀﨑HCが大事にしているのは、チーム全体の方向性を明確に示すという点だ。チームが始動した7月から「自分の考えも伝えてますし、逆に選手がどう思ってるのかということもこまめに聞くようにしてます」とコミュニケーションを重ねてきたという。
「みんなが同じ方向を向こう、セームページで、同じ価値観でバスケットをしようということはオフシーズンから言ってきましたし、選手それぞれの役割、彼らに何を求めてるかということも個人の面談などで伝えていたので、チームとして同じ方向を見ながら戦えているということは実感してきてます」
亀﨑HCは現役最後のシーズンにアシスタントコーチを兼任し、専任となった翌シーズンの後半にはHC代行も務めている。「あのときはコーチになって1年目だったので、本当に大変でしたね。選手としてのキャリアは長かったですけど、コーチとしては自分はまだ何もわかってないんだなと、壁にぶつかることも多々ありました」と本人は当時を振り返るが、あらゆる面に目を配る必要があるHC業の難しさを短期間でも体感できたことで、「そういう経験が自信にもつながってますし、今に生きてる部分は少なからずあると思います」とのこと。一体感を醸成するチーム作りはもとより、試合中の落ち着きを感じさせる采配ぶりもルーキーHCらしからぬところだ。

現在39歳の亀﨑HCは本人の言う通り、長い選手生活を送った。プロバスケットボール選手のキャリアが15年に及ぶのは、今でこそ珍しくないものだが、亀﨑HCが他の選手と異なるのは、高卒でプロの門を叩いたという点だ。男子は今も大学からプロに進むのが主流だが、当時はその傾向がより強く、高校から直接プロになるケースは皆無に近かった。そんな中、市立柏高という強豪校出身ながら、故障で大学に進むことができなかった亀﨑HCは、バスケットを続けたいという心の声に蓋をしようとせず、新潟の練習生としてキャリアをスタートさせる。











