創設からの4シーズンにわたり、クラブを代表する選手の1人としてプレーしてきた髙比良寛治が長崎ヴェルカを離れ、今シーズンは秋田ノーザンハピネッツの一員となった。日本人選手に限れば、今シーズンの秋田の新戦力は髙比良と菅原暉の2人のみ。言うまでもなく、秋田の成績向上のカギを握る存在だ。
ただ、秋田にとっては厳しいシーズンスタートとなった。アウェーでサンロッカーズ渋谷と対戦した10月4日の開幕戦を7点差で落とすと、翌5日のGAME2は第1クォーターで10-31と大量ビハインドを背負ったことが響き、17点差で連敗を喫している。GAME1で脳震盪に見舞われた中山拓哉など、欠場選手が発生したことも痛かった。
「相手の外国籍選手に前半で23点取られてしまって、人数が少ない中で20点差を追いかけるというのはすごく難しい状況だったと思います。1クォーターであれだけ差がついてしまって、タレントがあるチームに対してそういう入り方をしてしまうと簡単にはいかないので、出だしから相手にモーメンタムを一気にもっていかれないように、コートに出てる全員が一つひとつのポゼッションを大事にしていかないといけないと思います」
立ち上がりで後手に回ってしまったのは、NBAとブラジル代表を経験しているディディ・ロウザダに縦横無尽の活躍を許してしまったことが最大の要因だった。ベンチスタートの髙比良もロウザダにマッチアップする場面があり、波に乗ったスコアラーを止めるのは困難を極めたが、アウトサイドを主戦場とする外国籍選手やアジア特別枠選手は増加の一途。「ウィングの外国籍選手が増えてきてる中で、どうやって日本人選手でそこを止めていくかというのは、勝つためには絶対に必要なことで、自分はそういう仕事をしないといけない」と自身に課された使命は心得ている。
おそらく、秋田といえばディフェンスのイメージを持つ人が大半だ。前田顕蔵ヘッドコーチが選手に第一に求めるのがディフェンスであり、髙比良についても「ディフェンスがフィジカルなので、秋田にフィットする選手」と評する。前田HCはさらに、「今日のような難しい展開でも諦めずにチームを引っ張ってくれる」とリーダーシップの面も買っている。日本人選手では田口成浩に次ぐ年齢ということもあり、髙比良自身もチームメートを良い方向に導こうという意識は高い。
「ディフェンスでしっかりストップして、そこからトランジションにもっていくのが秋田のスタイルですし、僕もそのスタイルを体現できると思うので、まずはそこに責任を持ちながら自分の役割を果たしていきたいです。バスケはチームスポーツで、タレントのあるチームに対して個々で打開するのは簡単ではないので、チーム全体で守って、5対5で攻めないと勝ちは手に入らない。若い選手が多い中で、僕はシゲさんの次なので、コート上の5人がセームページを向いて全員がステップアップしていけるように、コミュニケーションの部分もしっかりやっていきたいと思います」
移籍初年度といっても、髙比良は秋田のことを全く知らないわけではない。古巣・長崎がB3に参入したシーズン、天皇杯でSR渋谷を撃破した長崎は翌日に秋田と対戦し、そのディフェンスを体感している。そして、当時の前田健滋朗アソシエイトコーチ(現・滋賀レイクスHC)が導入したディフェンスシステムが、前田コーチの古巣でもある秋田に近いものだったため、髙比良も「数年前に戻った感覚はある」ということだ。