誕生から25年が過ぎたWリーグは、2024-25シーズンから新たなフェーズに突入。2ディビジョン制とそれに伴う入替戦が復活し、ユナイテッドカップという新タイトルも創設された。シーズンの締めくくりがオールスターであることはここ数年の慣例通りだが、今回はその前日、5月4日にW LEAGUE AWARDSなるイベントも初開催。Wプレミア・Wフューチャーの各個人タイトル受賞者と表彰対象者が一堂に会した。
Wフューチャーでは、優勝の東京羽田ヴィッキーズから萩原美樹子ヘッドコーチがコーチオブザイヤーを受賞したほか、選手も4人が登壇。その中で、スモールフォワード部門のベスト5に選ばれた髙原春季は、他のポジションも含めて最多となる77点の得票ポイントを獲得し、MVP投票も三菱電機・笠置晴菜に3点差の2位という結果だった。チームで唯一1試合平均得点を2ケタに乗せたことを考えると、この評価は当然とも言えるが、当の本人は「ベスト5に入ると思ってなかったので、聞いたときはビックリしました」と意外な反応だった。
「チームメートがいてこその私。今日のスピーチでナコ(本橋菜子)さんも言ってましたけど、ヴィッキーズは誰が出ても大丈夫だろうっていう安心感が常にあって、信頼できるチームメートに支えられながら私なりにプレーできた。みんながいなかったら受賞できなかったし、ファンの皆さんも含めて感謝の気持ちでいっぱいです」
ただ、今回の取材で筆者が最も聞きたかったのは、受賞の喜びでもなければ、シーズンの振り返りでもない。優勝と昇格がかかった、2月の三菱電機戦の話である。1勝1敗でも不利になってしまう中、髙原はGAME1でキャリアハイの30得点を挙げ、ゲームMVPに選ばれている。もちろん得点は髙原に課された役割の1つだが、試合中は自身の得点がそこまで伸びていることを全く認識していなかったそうだ。
「三菱さんとは3試合やって1勝しかしてなかったので、私たちは後がないというか、1試合でも負けちゃうと次につなげられないから、何としてでも勝つというその気持ち一本でやってたというのがありました。練習も、三菱戦に向けて1人ひとりが自分と向き合って、殻を破ろうとしてたのを私も見ているし、たぶんみんなも見てくれていた。その気持ちが一つだったのが全て試合に出たと思います。1試合目に勝つと自分たちの流れにもっていけるという確信があったので、『絶対に勝つ、負けるわけがない』という一心でプレーした結果が、後で振り返ってみたら30点だったんですけど、私自身は点を取ってる自覚は全然なくて、本当にただ『勝ちたい』の気持ちだけで一瞬一瞬、無我夢中で向かっていったという感じです」
残り1.6秒で加藤優希が決勝のプルアップを決め、一時は13点差をつけられたGAME1を1点差で先勝。試合が終わった途端に涙を浮かべていた髙原は、第一関門をクリアできたことに胸をなで下ろしていたという。
「ナウ(加藤)さんが打った瞬間に『決めてくれる』と思ったし、勝った瞬間は、今までつらいこともあったけどそれが報われたと思いました。ブザーが鳴った瞬間にいろんな感情が下りてきたんですけど、一番は首の皮一枚つながってホッとしたっていうか、安心したっていうか……どういう表現が良いのかわからないんですけど、とにかく『ああ、良かった』って」