NCAA Division1 ジョージ・ワシントン大学で活躍する渡邊 雄太選手のレギュラーシーズンが終わった。
チーム戦績は20勝11敗。アトランティック10カンファレンス(以下A-10)同士の対戦は10勝8敗であり、6位。
今シーズンを振り返れば、3戦目にランキング9位(11月21日当時)のバージニア大学に42-59で敗れたが、渡邊選手自身は10点を挙げ、初の2桁得点をマーク。開幕後約1ヶ月を経て、ハワイで行われたトーナメント「ハワイアンエアラインズ ダイアモンドヘッド クラシック」は決勝まで勝ち進む。ランキング11位(12月25日当時)のウィチタ大学と対戦。残り3分33秒、左45度から3Pシュートを沈め、逆転に導く。チームを勢いづけたこの活躍により、60-54で勝利。ウィンターカップでは2年連続、そしてプレップスクールでも準優勝に甘んじていた渡邊選手が、初めて“優勝”を手に入れた。
決勝戦の模様は全米に中継され、一目置かれる存在となった。その分、マークが厳しくなるも、トーナメント以降4試合連続2桁得点を挙げる。しかし1月末から渡邊選手も、チームもスランプに陥った。1月27日、VCUに48-72と大敗してから2月28日のデビッドソン大学に66-77で敗れるまでの1ヶ月間の戦績は、2勝7敗。その間、渡邊選手の得点も平均4.8点に落ち込み、2桁得点は一度もない。
レギュラーシーズン終盤にようやく息を吹き返す。下位のジョージ・メイソン大学戦は、キャリアハイとなる30分出場(6点)。最終戦には21点(全て3Pシュート:7/10)を叩き出し、こちらもキャリアハイでマサチューセッツ大学を87-65で下し、良い形で終えることができた。この2試合の活躍が評価され、ハワイでのトーナメント優勝後に続き、2度目のルーキー・オブ・ザ・ウィークを受賞。レギュラーシーズン31試合全てに出場し、2月18日デビッドソン大学戦から最終戦までの6試合は先発で起用されている。
渡邊選手のスタッツは以下の通り。
渡邊雄太選手レギュラーシーズンスタッツ:平均(総数)
- 得点:7.1点(219点)
- フィールドゴール:38.4%(73/190)
- 3Pシュート:35.5%(33/93)
- フリースロー:81.6%(40/49)
- リバウンド:3.6本(112本/オフェンス25本)
- アシスト:1.7本(18本)
- ターンオーバー:1.4本(22本)
- ブロックショット:1.6本(19本)
- スティール:2.4本(13本)
- 出場時間:21.9分(680分)
現地3月11日より始まるA-10チャンピオンシップには、カンファレンスに属する14チーム全てが出場する。6位のジョージ・ワシントン大学は2回戦から登場し、このトーナメントを制してマーチマッドネス(NCAAトーナメント)への出場権を勝ち獲りたい。ジョージ・ワシントン大学女子バスケチームは、すでにA-10チャンピオンシップで優勝を決めており、アベック優勝を狙えっ!
2回戦の相手は、デュケイン大学(11位)とセントルイス大学(14位)の勝者。下位チームだが、デュケイン大学との戦績は1勝1敗であり、予断を許さない。勝ち上がるとシード校・3位ロードアイランド大学が準々決勝で待っている。ちょうどスランプに陥り始めた1月31日に対戦し、55-59で惜敗した相手。
昨年のジョージ・ワシントン大学はシーズン3位、A-10チャンピオンシップは準決勝で敗れながらも、NCAAトーナメント出場を果たした。つまり、ここで優勝できなくても、マーチマッドネスに出場できないわけではない。推薦枠が用意されている。
昨年のNCAAトーナメントにはA-10から5チームが出場。チャンピオンシップを制したセントジョセフズ大学は文句なし、準優勝のVCUも出場した。準決勝で敗れたジョージ・ワシントン大学(シーズン3位)とセントボナベントゥラ大学(シーズン9位)であったが、推薦されたのはジョージ・ワシントン大学のみ。準々決勝で敗れたセントルイス大学だったが、シーズン1位が考慮されてか、出場権を得ている。もう1チームは同じく準々決勝敗退のデイトン大学。シーズン成績も6位と振るわなかったが、カンファレンス外での勝率が良かったためか、こちらも選出された。推薦理由は定かではないことをご了承願いたい。
ジョージ・ワシントン大学がマーチマッドネスに出場するためには、A-10チャンピオンシップを制することが第一だが、決勝に進出すれば光が見えてくるかもしれない。頼みの綱は、ハワイのトーナメントを制したところを評価してもらえるかどうか。それでも決勝進出が最低限のハードルとなるだろう。
A-10 Standings(AP TOP25/USA Today/ESPN)(RPI)(BPI)
1位:Davidson(24位)(131位)(25位)
2位:Dayton(ー)(137位)(33位)
3位:Rhode Island(ー)(173位)(51位)
4位:VCU(ー)(7位)(29位)
5位:Richmond(ー)(35位)(60位)
6位:George Washington(ー)(162位)(70位)
7位:St. Bonaventure
8位:Massachusetts
9位:La Salle
10位:Saint Joseph’s
11位:Duquesne
12位:Fordham
13位:George Mason
14位:Saint Louis
カンファレンス以外の全チームと対戦するわけではないので、様々な手法で全米ランキングが発表されるのもNCAAの楽しみ方のひとつである。
AP Top25はAP通信のバスケットボール担当記者が、USA Today/ESPNはコーチらがそれぞれ投票した結果に基づいてランキングが発表されている。「RPI(Ratings Percentage Index) Rankings」や「BPI(Basketball Power Index) Rankings」は、様々なデータを元に算出し、客観的に評価されるので、先に挙げた2つのランキングやシーズン成績とは結果が異なる場合もある。RPI Rankingsでのジョージ・ワシントン大学は162位であり、準々決勝であたるロードアイランド大学の173位より上に位置している。
ESPN.com等で全てのランキングを見られるので、楽しんでいただきたい。
ランキングと言えば、大学もランクづけされている。現地の方には、“ジョージ・ワシントン大学は京都大学と同じくらいの位置づけだ”と伺っていた。慶應大学の教授にその旨を話したところ、確かに日本の大学は世界的にはランクが低いと納得されている。調べてみたところ、U.S. NEWSが選ぶグローバル大学ランキングというのがあった。そこでのジョージ・ワシントン大学は281位、京都大学は60位と開きがある。ジョージ・ワシントン大学の上に立つ日本勢は、9つの国立大学がおり、284位には早稲田大学がランクイン。いずれにしても優秀な大学群にいることは間違いない。
日本ではどのスポーツにおいても、セカンドキャリアが心配されている。だが、アメリカの文武両道の仕組みを大学だけではなく、高校や中学から採用すれば、引退後の世界も少しは明るくなるのではないだろうか。
バスケも、勉強も、ハイレベルのところで努力してクリアできている渡邊選手は、一言で言って“スゴイ”!
コートに立ち続けられているからこそ、ルーキーシーズンから様々な壁にぶつかり、もがきながらも一歩一歩着実に前へ進んでいる。
マーチマッドネスでさらにその勇姿を見られるよう、まずはA-10チャンピオンシップ制覇へ向けて応援しよう!
渡邊雄太選手のインタビューは3月18日発売のバスケットボールスピリッツvol.5に掲載されます。
A-10 チャンピオンシップ(NYブルックリン/バークレイセンター)
- 2015年3月12日(木)21時
2回戦:vs デュケイン大学(11位)とセントルイス大学(14位)の勝者 - 2015年3月13日(金)21時
準々決勝:vs ロードアイランド大学(3位) - 2015年3月14日(土)準決勝
- 2015年3月15日(日)決勝
※日時は現地
ジョージ・ワシントン大学
A-10チャンピオンシップ
マーチマッドネス
泉 誠一