課題に向き合いPDCAサイクルを回してつかんだ全国への切符
11月29日から大学日本一を決める第76回全日本大学バスケットボール選手権大会(インカレ)が開幕。女子40校のうち、初出場は2つ。2017年は鹿屋体育大学、昨年は日本経済大学が4強入りする激戦区の九州予選を突破した九州産業大学が全国への切符をはじめて勝ち獲った。高校時代に全国の舞台に上がった経験ある選手も多く、仙台大学との初陣を74-70で競り勝ち、初勝利を飾った。もう1チームは中国地区代表の広島都市学園大学。2021年創部、今の4年生が入学したときにバスケ部が誕生した。
中国地区のリーグは2部までしかなく、初年度はその2部リーグで負けなしの6連勝で1位。広島文教大学との入替戦も92-63で圧倒し、1年生しかいないチームが1部昇格を決めた。結果とは裏腹に、開拓者に悩みはつきものでもある。7人からスタートしたが、結局4年間を全うしたのは2人だけ。チームを去る選手がいる中、2年次からキャプテンを任された #12 関口奈優は、「どうすれば良いチームになるのかを常に話し合って、それを実践しながら作ってきました。本当に大変だったんですけど、やっぱり後輩たちが自分たちの姿について来てくれたので、こういう場(インカレ)で戦えたと思います」と振り返る。同じく4年生の #0 科野有沙だけが最後まで一緒に歩み、常にキャプテンを支えていた。
進学動機について関口は、「バスケを続けたいと思って進学先を探したときに、バスケ部ができると聞いて決めました」という。科野も「バスケ部ができるから」とゼロから作ることに楽しさを見出す。2人とも高校まで全国大会出場の経験はない。だが、入学時から漠然とその舞台を思い描いていた。
「『全国に行く』という強い気持ちがあったので、その思いをやっぱり口だけではなくしっかり行動で示して、後輩たちもついてきてくれるようにがんばっていました」(関口)
「1年生としてこの大学に入ってきたときから、本当に全国に行きたくて、どうやったら行けるんだろうとずっと考えていました。今年のはじめに、『みんなで計画を立てるしかないよね』という話になり、月ごとに計画を立て、『これがクリアできたら、次はここまでいけるよね』って見通しを立て、それをクリアして行ったらここまで来られました」(科野)
計画して実行に移し、評価と改善を行うPDCAサイクルを回し、チームを成長させる。昨年のインカレ予選となるリーグ戦は1勝4敗に終わり、このままではラストイヤーに目標を達成できない不安や焦りもあった。今年の春季大会は6位に終わり、全国区の多くのチームと対戦できる西日本大会にも出場できていない。結果が出なかったことに向き合い、「そこで見えた課題をクリアしていったら全国に行けるんじゃないか、と考えていたことを実践してきました」と科野は言い、全員であきらめずに自分たちを信じて前へ進み続ける。もがき苦しみながら、必死に手も足も動かしてきたからこそ、悲願のインカレにたどり着いた。
対照的な表情で初戦を終えた2人の4年生
今年7月、トップアドバイザリーコーチとして広島ドラゴンフライズの朝山正悟ヘッドコーチを迎えたのも大きな起点となった。「朝山さんからは、自分たちが気づけないところにアドバイスをしていただきました。自分たちは身長がちっちゃいので、スピードを生かすためにもシュートを打たれた後のインバウンドを早くしたり、まわりはスペースを広く取って走ったり、リバウンドの体の当て方とか本当に具体的なことを教えてくださいました。朝山さんが来られたことで、一気に改善できました」と練習メニューを考え、チームを引っ張る関口キャプテンにとってもチームが上向くきっかけを得た。科野に同じく感想を問えば、「メッチャ良い人で大好きです」とまん丸な目をさらに輝かせ、興奮していた。