対戦1巡目を終えたWリーグフューチャーで最も良いスタートを切ったのは、開幕7連勝をマークした東京羽田ヴィッキーズだ。全勝という目標は叶わなくなってしまったものの、第5週の時点で8勝2敗の首位。この10試合はスターターの5人を完全に固定し、そのことで試合運びも安定している印象がある。Wプレミア昇格に向け、ここまでは概ね順調にきていると言って差し支えない。
リーグ戦が2巡目に入った11月16日の山梨クィーンビーズ戦も不動のスターターで臨んだ東京羽田は、競った展開でも落ち着いて試合を進め、66-59で勝利。勝率で並んでいた三菱電機が同日、同会場で先に敗れていたため、この時点で再び単独での首位となった。ただ、試合内容には必ずしも満足していない。
「1巡目は負けてしまった試合もあるので、同じ気持ちを味わわないためにというところで、練習から全員で声をかけ合って高め合ってきたんですけど、ターンオーバーがチームで21本あって、そこからの失点が結構あったので、相手にやられたというよりは自分たちのミスで相手に点を与えてしまったのが反省点。最終的に勝てたとはいえ、もっと良い試合ができたんじゃないかなと思います」
そう語る加藤優希自身は、不動のスターターの1人として役割を全うした。パスカットからワンマン速攻でのレイアップ、相手が勢いづきそうな局面での得点、体を張ったリバウンドやスクリーンなど、献身的にプレー。この日は15得点の本橋菜子に次ぐ14得点を挙げ、試合後のインタビューに指名されている。戦況をよく見極めたプレーぶりを、自身ではこう振り返っている。
「得点が停滞してしまうときは、リングにアタックすることが必要だと思ってるので、コートに出てる以上は自分もリングにアタックし続けるし、一緒に出てるチームメートにも『アタックしていくよー』って前向きな言葉をかけることを意識してました」
東京羽田がスターターを固定できていたのも、加藤の存在によるところが大きい。開幕して間もない段階で、萩原美樹子ヘッドコーチは加藤の働きを称賛していた。
「今シーズンは4番ポジションが安定してるんですよ。加藤は頭が良くて、オフェンスで起点にもなってくれるし、周りを動かすことができる。4番が機能してるのは、昨シーズンと違うところ。スタッツに残らない部分も頑張ってくれるし、加藤がボールを持つと安心して任せられるところがありますね」
試合の流れを見た上での状況判断、コートの5人の中で自分が何をすべきかをよく理解しているところが加藤の持ち味。そのバランス感覚はシャンソン化粧品、トヨタ紡織といった上位チームで培ってきた経験が生かされているのだろう。移籍1年目の今シーズンは、チームメートのことをよく知るということを特に意識して過ごしてきたようだ。
「自分がゲームメイクしなきゃ、みたいな意識は全くないって言ったら怒られるんですけど(笑)、みんなの性格とか、どういうプレースタイルが好きなのかということは、移籍してきてからいっぱいコミュニケーションを取って、こういうときはこうしたい、私はこういうプレーが好きというのを私ももちろん話して、たくさん話し合いをして、というのは心がけてきました」
加藤がコートに立っているときは、チームが大崩れすることがない。加藤が常に冷静さを保つことで、周囲を落ち着かせているからだ。それは、ここまで積み上げられてきた加藤のキャリアの為せる業であると同時に、加藤の性格からきているものでもあるだろう。加藤自身「落ち着いてるねとはよく言われます」ということだが、自身を俯瞰できるのは大きな強みだ。