今季のコートでもう一度自分の力を証明したい(前編) より続く
激戦区を勝ち抜くのは至難の業。だが、そのポテンシャルはある
今シーズンのサンロッカーズ渋谷は新しく5名の選手が加わり、ルカ体制2年目のスタートを切った。「優勝する自信は全くない」と答えた田中大貴だが、それは開幕前の現時点でのこと。このチームで戦うわくわく感は昨シーズンに増して大きいらしい。
「新しい外国籍選手としてはリード・トラビスと1年ぶりに渋谷に戻ったKJ(ケビン・ジョーンズ)がいますが、2人ともフィジカルが強く、去年の反省点の1つでもあったリバウンドの部分を改善してくれるのではと思っています。KJとはアルバルクで一緒にプレーした経験があるので、彼の良さはよくわかっていますし、真摯に練習に取り組むトラビスを見ていると彼の人間性のすばらしさを感じます。2年目になるジョシュ(ホーキンソン)、(アンソニー)クレモンズや、レオ(ベンドラメ礼生)などとはお互いにやりたいことは理解できているので、一緒にコートに立つのが楽しみですね。そのほかにも全体的に見て、今年は動けるメンバーがそろっているなあという印象があるかな。そういったことをあれこれ挙げていくと、自分はかなり今年のチームに期待してるなあって思います(笑)」
そこでもう一度「本当に優勝できる自信はないのか?」という質問をしてみたのだが、答えは同じ。「いや、いや、ないです」と、すげなく首を振られた。
「そりゃそうですよ。自分たちはまだ何もやっていませんからね。自分の中では優勝候補の一角にも入っていません。だって、ざっと見渡しただけでも周りには強力なチームがいっぱいいるじゃないですか。特にうちのカテゴリー(中地区)は激戦区と言われてますが、まあ、ほんとにすごい(笑)。名古屋(ダイヤモンドドルフィンズ)、アルバルク(東京)、三遠(ネオフェニックス)、(シーホース)三河と、1つずつ挙げていくと全部のチーム名を言わなきゃならなくなるほどで、うちが優勝できるかどうかなんて話ができるレベルではありません。シーズンを通してやるべきことは去年と同じ、ルカの下でコツコツ練習に励み、自分たちのバスケットを積み上げていくことです。そこからまずはCS出場を目指す。簡単なことではないですが、うちにはそれができるポテンシャルはあると思っています」
おかしな言い方になるが、田中の話を聞いていると、ああ、もうすっかりSR渋谷の選手なのだなという気がする。移籍して1年が過ぎたのだからあたりまえだろうと言われればそのとおりなのだが、後輩たちに真剣な顔でアドバイスを与えている姿を見ると、すでにしっかりチームに根づいた太い柱のように感じるのだ。東海大の2年後輩であるベンドラメ礼生や小島元基など気心が知れたチームメイトがいるせいかオフコートでもリラックスした笑顔が目立つ。