2021年、第1回Jr.ウインターカップで秋田市立城南中学校を日本一へと導いた小川瑛次郎は、その後の羽黒高校でも全国大会はもとよりFIBA U17ワールドカップや、昨年のFIBA U19ワールドカップでは飛び級の18歳で選出され、ジェイコブス晶や川島悠翔らとともに世界を肌で感じた。秋田ノーザンハピネッツでの特別指定を経て、高校屈指のスコアラーは昨年のインカレチャンピオンである白鷗大学へ進学。高校まではヘッドバンドがトレードマークだったが、ボビー・ブラウンよろしく眉毛からサイドヘアへつながる “頭にラインなヤツ” となり、「大学デビューしちゃった」とクリクリした目をさらに大きくさせ、照れくさそうに笑った。
関東大学スプリングトーナメントからチャンスをもらい、ベスト8進出をかけた神奈川大学戦は約23分出場し、3ポイントシュートを2本成功させた。「言い訳になってしまいますが、スプリングトーナメントのときはまだチームに溶け込めていませんでした。関東大学バスケ1部のレベルをまだ感じ取れず、高校レベルのままプレーをしたことで、あのような結果になってしまいました」と入学まもない小川が言うのも無理はない。結果は61-93、前年の準優勝校が早々に姿を消した。
ルーキーにとっては、巻き返しを図る第64回関東大学バスケットボール新人戦が待っている。「同世代同士の試合であり、あらためて気合いを入れ直しました。自分がメインのプレーヤーになるので、活躍してやろうという気持ちで臨みました」とエースとして引っ張ってきた高校時代を踏襲しつつ、春の大会で学んだ大学レベルを上乗せする。
カテゴリーが上がったことで、「スクリーンをかける側から使う側に変わって、その中でドライブとかシュートすることを大学に入ってからは練習してきました。それによって得点パターンが増えたと思います」と述べ、新人戦ラストゲームとなった5位決定戦では日本大学を相手に26点と活躍。しかし、前日の山梨学院大学は無得点に終わり、安定感が今後の課題と言える。5試合で38点を決め、3ポイントシュートは24本放って6本成功(25%)。FIBA U19ワールドカップでは9/18本、50%の確率で決めていた。スタッツを残した日本大学戦だが66-74で敗れ、物足りなささえ感じてしまう。関東地区の狭い大会だが、大学トップレベルを感じる戦いを小川は楽しんでいた。
「毎回、相手ベンチの後ろにいる3〜4年生やベンチからも『シューター』という声がプレーをしていても聞こえて、警戒されているのが自分自身にとってはうれしいです。それでも入れるよっていう覚悟でバスケをしたいです」
白鷗大学は、「前からついて40分間厳しいディフェンスを相手に与えること」がチームのスタイルであり、小川も分かっている。オフェンス以上にレベルの差を感じる部分であり、「相手も強度が高く、ディフェンスはもちろん難しくて全然まだ慣れないですけど、これからもっと練習して、新人インカレに向けてがんばりたいです」と攻守ともに磨きをかける。
羽黒高校時代はエースとして、ファーストオプションを担ってきた。屈指の強豪である白鷗大学には、高校のエース級が揃っている。「ガードには日本トップクラスの選手がいて、良いパスを自分に出してくれるので、しっかりシュートを決めることをまずは心がけています。高校に比べて自分の小ささ(185cm)がさらに目立つので、ハンドラーとしての役割をもっと意識していかないといけないと思います」と可能性は無限大だ。
「チームの流れが悪くても、自分が出たときに流れを変えて勢いづけるのが役割」とエースの信条を胸に、早くも全国大会が待っている。7月8日から北海道で開催される第2回全日本大学バスケットボール新人戦(新人インカレ)の組み合わせが決まった。24チームが出場し、各3チームが8つのグループに分かれてリーグ戦を行い、決勝トーナメントを争うベスト8を決める。白鷗大学は青森中央学院大学と、地元北海道代表の星槎道都大学とのグループステージから熱い夏がはじまる。
文・写真 泉誠一