1月31日、2月1日の対日立サンロッカーズ東京戦で二ノ宮康平はこれまでにないプレイタイム(1戦目19分57秒、2戦目19分37秒)を得た。
「自分は(トヨタ東京に入って)4年目なんですが、今まで使ってもらえるのは勝負が決まった最後の時間帯とかで、ほとんどゲームに出ていないと言っていいぐらいでしたから。こんなにプレイタイムをもらったのは初めてです」
京北高校から慶應大という名門コースを歩き、慶應大ではルーキーシーズンからレギュラー入り、絶対的司令塔として4年間チームを牽引しインカレ優勝にも輝いた。だが、希望に満ちて入ったトヨタアルバルクで待っていたのは厳しい現実。正中岳城、伊藤大司という力のある先輩ガードがいるなかで、出番はなかなか回って来なかった。
「1年、2年、3年…と、年が過ぎるにつれて思い悩むことも増えました」
昨シーズン終盤からアーリーエントリー選手として大型PG宇都直輝(190cm)が加わったことで自分の出番がまた一歩遠退いたようにも感じた。
しかし、その一方で、これまで常に全力でバスケットに取り組んできたという自負もある。
「ベンチにいる時間が長かった分、チームのプレイの細かい部分も見えていたと思います。ベンチにいても、あっこの時はこのセットプレイをやろうとか、いつも自分がコートに立った時のことを思い描いてゲームを見ていました」
それでも、ベンチを温める時間が続くのはつらい。心が折れそうになるときもあった。
「ああ、自分はこのまま終わっちゃうのかなぁと考えてしまったり…。でも、そういうときもなんとか気持ちを切り替えて、自分なりにいつ呼ばれてもいい準備はしてきたつもりです」
日立戦で使われるという予感は?
「ここしばらく練習で伊藤さんと宇都の調子が今一つだったので、ひょっとすると自分が出るチャンスがあるかもしれないと、それはちょっとだけ思いました。それで、もしチャンスをもらえたとしたら絶対モノにしたいと」
1戦目は3ポイント1本、リバウンド2、アシスト1、ブロックショット!1。2戦目は9得点、リバウンド4、アシスト4、スティール1。しかし、これは数字としての1つの記録。この2連戦を通してコートの上の二ノ宮からは「なんとしてもこのチャンスをものにしたい」という数字以上の気迫が伝わってきた。
メンバーチェンジでベンチに下がるとき、その背中を正中が何度も叩いて声をかける。
「正中さんは今2番ポジションをやっていて、自分もいろいろ大変なんですが、僕にはいつも声をかけてくれます。僕の気持ちを汲み取ってくれていて、そのうえですごくいいアドバイスをしてくれるんです。正中さんに言われると気持ちが引き締まるっていうか、なんか力が湧いてくるっていうか(笑)」
そういう先輩がいるチーム、伸び盛りの後輩たちが揃ったチーム、そのチームでもっと頑張りたい。チームの勝利に貢献できる選手になりたい。
「自分の持ち味は速い展開の流れを演出すること、外角のシュート力、ピック&ロール。それとずっとベンチでゲームを見てきた時間が‟周りを見る„という武器をくれたと思います。今、攻めるところで点を取る、ここは我慢してコントロールする、最近、そういう流れみたいなものが冷静に見えるようになった気がします」
89-66で快勝した1戦目と69-81で完敗した2戦目。コートに立って実感した反省と課題は数多い。16節を終えて、イースタンカンファレンス4位につけるトヨタアルバルクが、これからどう巻き返していくのか、「そのなかで勝利を担うワンピースになりたい」――4年目に賭ける二ノ宮の思いは強い。
松原 貴実