創造とは、夢ある未来を想像するところから始まる。
その夢が、これまで何度か行われた統一プロバスケリーグの記者会見では全く持って感じられなかった。ビジョン無き話し合いは暖簾に腕押しであり、豆腐ににかすがいである。
JBA+両リーグのトップ会談で話をまとめ、トップダウンで迅速に遂行できる有意義な統一プロバスケリーグへ向けた組織委員会かと思われていた。しかし実態はご存じの通り、話はいつも同じことを繰り返すばかり。着地点無き話し合いに業を煮やしたFIBAが国際舞台から閉め出す制裁を課し、現状を打破するためのタスクフォースを発足。そして昨日、その顔ぶれが明らかになった。
最高責任者に任命された川淵三郎チェアマン。テレビや書籍等で見ていた以上に、バイタリティに溢れている。今回のバスケの問題に立ち向かうにあたっても、サッカー同様のパッションで挑む気合がビンビンと伝わってきた。
一つ質問すれば、10は返ってくる持論、そして経験がある。その話を聞いているだけで、これまで悶々と覆われていたバスケ界の暗雲が、取り払われていく……そんな印象を覚えた。組織委員会のトップの方々も、川淵チェアマンも同じトップアスリートとして活躍し、体育会にも関わらず、このビジネスセンスはどの時点で身についたのか?とても興味深い。
「日本バスケットボール界を愛する全ての方々がタスクフォースメンバーであると考えています」と、ファンへ向けて発信した。
ならば、バスケを愛する皆さんがより良いアイディアを出せるよう、チェアマンたちの情熱やその思いをしっかりと伝えたい。3時間に及ぶ会見だったために、長文となるがそれぞれの意見をそのまま掲載する。
日本バスケットボール界への発展的なご意見は、タスクフォースの公式サイト等にて寄せることができる。
- 公式ウェブサイト:http://www.japan2024.jp/
- 公式facebook:http://www.facebook.com/japan2024/
- 意見募集メールアドレス:vision@japan2024.jp
また、その内容をぜひバスケットボールスピリッツにも教えていただきたい。
次号(3月中旬発売予定)に皆さんのアイディアをご紹介できればと、考えている。
ご意見投稿フォーム:http://bbspirits.com/aboutbbs/
川淵 三郎チェアマン(公益財団法人日本サッカー協会キャプテン)
ー これまでリーグが統合できなかったバスケ界の大きな問題点とは?
NBL自体の歴史は浅いですが、JBL(日本リーグ)からの延長線上として考えると、給料が高い、そして強い、しかし人気が無い。bjリーグはお金が無い、給料が安い、そんなに強くはない、ところが人気はある。その差です。
最初(2004年)にプロリーグを作るにあたってJBAは反対し、発足後はbjリーグを除名までしたわけです。しかしながら、bjリーグは10年間かけて一生懸命努力し、中には黒字経営をする立派な経営者もいるわけです。そこはリスペクトしなければならない。その中にも玉石混淆で、bjリーグのチームだから新リーグに全て入らなければいけないということでもない。
その辺がなかなか両者が相容れないところでもあった。かたや企業チームとして、親会社からお金をもらってバスケットボールだけしてれば良い状況と、かたやしっかり稼がなければ運営できないというその差が、どうしても一つになりにくいポイントであったのではないかと思います。
ー 企業チームの扱いについて
Jリーグのスタート時に企業名を外すと言った時もそうとうな反発があり、半分以上は外すようならば入らないという意見があった。とにかくスタートして、そこから考えていけば良いのではないか、という形で始まりました。そのスタート時点で、我々からマスコミの皆さんに企業名を外す形での掲載に協力していただき、そこからスムーズに移行できたわけです。
企業チームとチームチームの差は、企業名をチーム名にしているかどうかが区分けのポイント。企業チームがどれだけ地域社会に密着し、その地に根差したチームになっているかは、まだ把握できていない。
イメージ的に企業の中で自分たちは努力もせずに、そこそこ予算をもらってバスケだけに専念してれば良いんだという感覚でいることに対し、法人から独立していない、または中途半端な独立の仕方で、一つのトップリーグになろうとしているように僕には見える。そのことがbjリーグ側にしてみれば、全然努力していないと見えてしまっており、そこがうまくいかなかった大きな理由だと思う。努力して、地域に根ざした活動をしていけば、企業名が入っていたとしても絶対にダメではないのではないか、と今、僕は思っています。
ー バスケにおける地域密着とは?
三位一体という形に、今のbjリーグも必ずしもなっていないところが結構ある。行政を巻き込めていないがために、やたらに高いアリーナの使用料を払っているようです。また、一つの体育館だけでやってるチームが一つもなく、調べたところでは最小でも3つを使用しています。だいたいが5〜6つの体育館を周りながらbjリーグは試合を行っているので、それではアリーナの中での物販や、会場に行ったときの懐かしさなど「ここが僕の場所だ」というのが生まれにくいのが、チームが使っているアリーナの現状。
行政サイドと地方が一体となってチームを支え、市民がバックアップする。いわゆるJリーグの三位一体方式こそが、成功の元である。使用料金の免除とは言いませんが、最優先でアリーナを使わせてもらうようにすること。自分たちのアリーナそのものとしての飾り付けができるようにする。そこに行けば、楽しい思いができる場所を作らなければならない。
三位一体の状況を作らねばならないし、行政を通じてチェックしていかねばならない。Jリーグ発足時同様、各市区町村長や知事など皆さんに会いに行き、地域に根差したプロスポーツの価値というものを伝えることによって理解が深まり、支援してもらえる方向に行くのではないか。そんな簡単なものではないのは分かっていますが、そこに向かって努力していかねばならない。しかも、たった4ヶ月しかない中でやらなければいけないのは、かなりしんどい話だな、という理解でいます。
ー 目指すべきリーグ像とは?
まだ提案もしていないし、みんなの合意を得られるかどうかは別として、僕個人としての考えは、アリーナの収容人員が確保でき、練習場もしっかり確保でき、ホームアリーナとして使えるアリーナが確保できているかどうか。
財源的な問題として選手の年俸も、今はbjリーグのサラリーキャップは7千万円前後、対してNBLは1億5000万円。選手の年俸は少なくとも平均1千万円をもらわなければプロとは言えない。魅力あるチームになるわけがない。そのくらいの年俸が確保できるだけの収入が見込めるのかどうか。
例えば年俸が、総収入の50%以下でなければいけないとか、いろんな僕の中でのイメージはある。現状、チーム力が弱くても、補強していけば良い。選手の補強をするにも今は移籍金も無いと聞いています。あまり詳しくはまだ知りませんが、そこも含めて新しい仕組みを作って、チームがトップリーグとして活躍するに足る十分な資格を持っていたら、そこからまずは選ぶ。それが10チームになるか、20チームあるのかはまだ分からないし、あくまで個人的な考えでしかない。
選手年俸が500万円以下であるのが現状であり、12人総額で6千万円の人件費でやってるのがプロと言えるかと言えば、それはプロとは言わないでしょ。そのところから一つひとつ、最低限世間が認め、可能性あるチーム、地域や行政の全面的なバックアップを得て、アリーナを安く借りれること。練習場すらあるのかどうか?そこを確保できていないで、なにがプロだ。
いろんなことを考えており、ここではあまり言いませんが、そういう条件をカバーできたチームがいくつあるのか。それを踏まえて現状の実力等を比較検討しながら、最終的にこのくらいで良いのでは無いかというのが見えてくる。
しっかり検討して、それ(基準)に至らないチームは下部リーグで力を溜めて環境を整備していく。マーケティングや収入が得られるならば、ちゃんと配分するような形になれば一番良いと思っている。
ー Jリーグを作った時はどのような壁があり、それをどう乗り越えて来たのか?
サッカーの場合は、一番最初に成功するわけがない、こんな環境であり1万5千人収容できるスタジアムがそもそもないのに、よく作れと言うな、とかいろいろあった。ともかく、今、首都大学の理事長をしていますが、コペルニクス展開ということを説いています。180度考え方を変えたら、新たに良い方法が見つかるかも知れないという感じを結果的にこれまでやってきた。
バスケも5千人収容できるアリーナが必要と言ったら、今の体育館ではカバーできず、ほとんどが無理である。しかも、現状1500人くらいしか入っていないわけだから、5千人のアリーナを作っても無駄に終わると、普通は思われてしまう。
なので今は、Jリーグがスタートする時と全く同じ。しかし一番の違いは、10年間プロリーグをやってきて、赤字から黒字に転換するチームが出て来たということは、そうとうな経験がそこにはある。その経験をどううまくみんなに広げていくのかが大事。
僕がJリーグで先行してきたわけだが、皆さんが僕に賛同して言うことを聞こうとは思われないでしょう。僕も、第一義に昔こうしたんだからあれやれ、こうやれなんて言うつもりもありません。
しかし、もう少し発想を変えることは必要。コペルニクスのように180°考え方を変えてみる。
どこまで行っても解決しない時は、たとえ常識に反していても、考え方を180度変えてみろ、というのがコペルニクス的な転回。ここはそういうところではないか。
良い見本となる成功しているチームもあるわけだから、コペルニクス的な発想をみんなが持って、今までの凝り固まった自分本位の話ばかりではなく、バスケ界全体のために犠牲になるのはしょうがない、バスケ界のためにこうしてあげようというような考え方を持つ人がどれだけ出てくるかが一番の頼りどころです。経験を語ることはできるが、Jリーグの成功を自慢げに言っていては誰もついては来ない。でも、自分としてはベストを尽くしたい。
ー ビジョンや理念といった共通項が有効になるのでは?
実は、僕の孫娘は小学校時、6年間バスケをしていました。しかし6年間ずっと補欠であり、なんで試合に出さないんだろう、と僕は不満がありました。でも、最近はどんな下手な子でも試合に出せる仕組みに変わり、これこそがスポーツをエンジョイさせるための一番のキーポイントだと思っています。
その中でバスケは手を使うことができ、決められた範囲内で誰もが気軽に、手軽にやれるスポーツ。日本の子どもたちの運動能力低下は恐ろしいほど落ちており、手軽にやれるバスケが担うところも大きいはずです。一流選手を目指すというところではなく、一緒に体を動かしてスポーツすることの楽しさを一番味わえるのがバスケットだと思っています。そう言う意味でもバスケットはもっと発展して欲しいし、3×3もこれからさらに発展していくことでしょう。
なかなかバスケットでは得点を入れるのは難しく、運動神経があっても僕は全然ダメでした。うちの孫が、6年間で何点獲ったかは知らないですが、点を獲らない子に対して、点を獲らせてあげようと一生懸命ボールを回し、そこで得点したときの仲間たちの興奮、そしてゴールした子の興奮した顔を見ると涙が出ます。バスケにはみんなが気軽に楽しめるスポーツの良さがあるわけです。
バスケットは半分以上に女子競技者がいるのは素晴らしいことであり、誰もが簡単にできるからこそやる人が多いわけです。日本の子どもたちのためのスポーツを愛するという気持ちの上に立っても、バスケットが発展していけば良いと思っています。
ー 新リーグ開幕時期は従来通り2016年秋を予定しているのか?
開幕は2年間待ってくれ、どうしても時間がかかると言ったのですが、(バウマン氏を差し)バッドボーイは(笑)この秋から開幕して欲しいと言う。それはナンボ何でも無理という話です。
2016年秋開幕を目標したい。そこが遅れてもいけないし、新しいトップリーグを盛り上げるためには、一気呵成にいく必要もあると思っています。そこを目標にやりたいと思っています。
ー 協会の組織改革について
正直言ってまだ分からない。どういう人材がいるかも分からない。議論を重ねてより良い方向を見つけて行きたい。僕からのアイディアは今のところありません。
ー バスケはプロリーグは何度も立ち上げようと思ったが実現に至らなかったわけだが?
はじめに各リーグのチームに対し、今回のこの決定について従うような、契約書みたいなものを交わせるかどうかが一つの不安がありました。
協会に除名された形でbjリーグはスタートしているわけですから、その中で地方協会やアリーナ(行政)との関係性をしっかりすることにより、予想外のチームが出て来ないように周辺整備が必要です。もっと言ってしまえば、バスケットに関係のない人が何を言ってるんだ、そんなこと守ってられるか、と言われたらどうするのか、それをどう担保してくれるのか心配する部分があったわけです。でも、JBA梅野会長以下が、きちんと遵守して動くと言ってくれている。やはり文科省、JOC、日本体育協会、トップリーグ連携機構を含め、これらをJBAが無視したら成り立たない。はじめはこの部分がすごく心配でしたが、そこは心配しなくて良いということです。
ー 第1回MTGについて
2時間ほどの会議でした。午後2時半開始予定でしたが、午後3時頃からスタートし、終わったのが午後4時半。僕はズルズルと引き延ばすのは嫌いなので、終了時間は厳守した。終了時間の1分前である29分には終わらせました。
ー ワーキンググループとは?
3種類あります。トップリーグをいかに創っていくか、その責任者は僕です。次の協会のガバナンスについて、そして日本代表の強化・若手の育成は、ヴァイスさんがチェアマンとなります。バウマンもこの3つに対して、JBAが変革して欲しいとずっと言われてきました。それに則った形で3つのワーキンググループを使りました。それぞれに担当をつけて、必要に応じて委員を増やすことはチェアマンが決めれば良いこととなっています。
ー サッカーと状況は違うが、今回に対する希望と難しさをどう考えているか?
どちらが易しかったかと言えば、Jリーグの方。なぜかと言えば、今回は期間が4ヶ月ほどしかありません。バウマンに伸ばしてくれ、と言ったが、リオ五輪予選(女子8月末/男子9月末※男子は東アジア予選に出場しなければならず6月開催か?)が待ってくれない状況。どうしても6月中に期限設定し、FIBAへ改善案を提出しなければ出場が認められないわけです。
そうなると4ヶ月ちょっとしかない。でも、やることはいっぱい。とりあえず1週間に1回は時間を取るようにしたが、それでも足りない。集中的にやならければならない。
試合を見に行って、どんな感じかを把握する。BSフジのbjTVはよく見ているんですよ。結構、お客さんが入ってるな、それなりに人気があるなと思って見ていました。でも、テレビで映っているところはいっぱい入っているような感じだが、実際には1500人くらい。琉球や秋田が3千人程度。はじめに考えたことは、どうしても5千人を入るアリーナを確保しない限り、入場料収入でチームを運営していくのは難しいということ。
それを関係者に言ったら、それは無理ですと言われました。現状では3千人がいっぱいであり、バレーボールも3500人を目標にしているそうです。それを考えた時に、それでしょうがないと言ってしまって良いのか。サッカーであれば、もうダメだ、って言うよ。でも、今までそうだったから3千人でしょうがないとしてしまっては、トップリーグとして成功するわけがない、と僕は思っています。入場料金を3倍にすれば良いのかも知れないが、そうもいかない。今の入場料は1500円足らず。詳細を調べているが、1500円で1500人というと、225万円。体育館の使用料が高いところがあれば、入場料収入でチームが利益を上げられないケースが結構あるわけです。
だからこそ行政との話し合いが大事であり、地元に根付いて、地元を代表するチームにするからアリーナの使用料を安くしてください、ここをずっと使えるようにしてください、というような交渉をこれまでしていないのではないか、と思ってしまう。これは聞いてみないと実状は分からない。
Jリーグがスタートする時は…自慢げに言うようだが、自慢しながら言うんだけどね(笑)。
全部の市長や知事に俺が会いに行き、Jリーグの理念を説きながら各個撃破で歩き回った。はじめは横浜の高秀市長に認めてもらって、その後の鹿島や川崎も同じようなことあって今がある。そういう努力を協会や地方協会がチームと一緒になってやったことがないはずだ。どうやら地方協会とチームの連携もゼロのようだ。その実体はこれから調べないといけないが、それでは話にならない。地方協会とチームが一体になって、行政に訴えかけ、その地域にバスケットを盛んにするためにこそ市民を巻き込みながらやっていかなければならない。
だからこそ、今日の会議で最初に言ったことは「地域に根差すことで良いですね」と聞いたら、みんなが了承してくれました。これが無かったら始まらないし、無理なんです。今の企業チームを見れば、お客さんがいっぱい入っているようには見えません。アイシンは多少入っているようだが、トヨタですらあまり入っていない。1000人を切る入場者数のチームも結構あるわけだから、やはりよりどころは地域社会とどう密着して、“オラが町のプロバスケチーム”にしていくかということです。
そのためにも行政サイドへのアプローチが大事であり、行政からアリーナを優先して使わせてあげるよ、と言ってくれるようにしなければいけないです。そうなれば、ホームアリーナとしていろいろ飾りづけし、物販やその他、子どもたちが喜ぶようなことを常設できるようになります。言うなればマイホームであり、今はそれができない。琉球の木村オーナーが言ってましたが、沖縄市に8千人のアリーナを作ってくれると市と約束を交わしたそうです。実際に見てないからまだ分かりませんが、彼はそれをできているわけだから、他のチームは努力が足りないと言える。
協会もあげて協力し、会長が行くことも今後は必要になるでしょう。僕に言わせれば、今までの話し合いでは社団法人トップリーグという形を作りたい、と深津さん(前会長)はずっと言っていました。それで、そもそも池田(弘)さん(bjリーグ取締役会長)のところのbjリーグは株式会社であり、いろんなことがあって、最終的にはトップリーグの法人化で良いという話にもなっていた。そのトップにふさわしいという人がいたら、自分のことを言うようで申し訳ないけど、その人のリーダーシップのもとに世の中が動いて行くんです。それが決まらないまま、いろいろやるのは正直言ってしんどい。そこに据わりの良い人がドンといて、走り回ってくれることが必要なのだが、プロリーグの成功に向けて奔走するという構図が今はない。
そういう人がいれば、もっととっくに良いリーグができていたのだろうけど。適任者がいるのかどうかも分からないし、見つかるかどうかも分からない。そこがつらいところ。どうしたって、タスクフォースは余所から来た外国人部隊のような感じになってしまう。でも僕としては、引き受けたからには絶対に成功させたい。でも、現実を見れば難関が山ほどある。サッカーなんかよりも全然多い
Jリーグ立ち上げ時は、全国あらゆるところを歩き回ったからね。もちろん当時は若さもエネルギーがあったし、今はそんな若さもエネルギーもない。
ー bjリーグの池田取締役会長が表立って出て来ていないが?
池田さんもある種のネックになっているところになっているのではないか。bjリーグを作って、株主をいっぱい集めて、いずれ上場すれば配当できるようになる、株価が上がると、夢を持って株主を集めた。それは池田さんの努力は大変だったと思う。今あるのは池田さんのおかげだが、それが自転車操業になり、ハッキリは分からないが15億円と言われる負債があるわけだ。それを解消する見通しが立たない中で、トップリーグへ移行することができにくいというのは分かる。この辺が一番の難関でもある。
ー そこを乗り越えなければ前には進めないのでは?
もちろんそこは乗り越えてみせるよ。
その負債を誰が負担するのか、またはそれだけの価値があるという考え方もある。ともかくそれについては黙って見てもらうほかない。この場では言いにくい。
ー NBLには現在5チームの企業チームがある。企業チームが新リーグに参加するための要件として「分社化」し、独立採算の形態に移行するというのが必須なのか?
それは絶対!分社化して別法人にならなきゃ話にならない。それは譲れないな。それは絶対条件だね。
ー タスクフォースに東芝の方が入っているが、今の話はされたか?
まだしてない。してないけど、皆、そっち(分社化・独立採算企業)の方向に行ってもらいたい。それが今、会社の中でどういう問題になるのかを確認できたときに、だったらこの方がいいね、という考えになるかも知れない。僕の考え方を話しているだけで、この話が決定ではないよ。あくまで僕の頭の中にあるだけだから。
企業名についてはJリーグがスタートするときも、半分ぐらいは企業名が付いていても仕方がないといって始まった。企業名抜きじゃなきゃダメだと反対しても、Jリーグ自体の発足が絶対できないとなり、ならば割り切って1990年に決めてしまい、1年目と2年目は、マスコミのみなさんに何とか地域名+愛称で報道してくださいとお願いをした。ただ、読売新聞と日本テレビだけは仕方がなかった。ナベツネさん(渡邉恒雄氏)がオーナーだからね。1年だけ、読売ヴェルディとか、三菱レッドダイヤモンズと表記したかな、それでも1年だけ。その後は日テレも読売も地域名+愛称だけで報道してくれました。
今のバスケットボールリーグは企業にお金を出してもらわないと選手たちは高給をもらえない。選手のためにも企業は残ってもらわないと困る。一番困るのは選手であり、リーグではないか。年俸500万円ぐらいでプロと言えるのか。実態はよく知らないけれど、200万円の選手もいると聞く。NBLはサラリーキャップが1億5000万円、1チーム15名だとしたら平均1000万円ぐらい。2000万の選手もいれば500万の選手もいる、ということになる。だから、プロとしてちゃんと高給をもらえるチームがあることが必要なんです。
日本代表クラスであればお金のあるチームに行く。ならば、そのチームの外国人選手は1人にして、代表クラスがいないところは外国人を2、3名にして、日本人と外国人がマッチアップするような戦い方にすればいいんじゃないかと、聞いたりもする。ただ、どうすれば公平なかたちになるかはさっぱりわからない。だから、それは専門家に聞いてトライ&エラーでやってみないとわからない。
ただ、代表クラスがいっぱいいる企業チームが高い金を出して運営しているのに、外国人が3人のチームに負けてるようじゃ話にならない。これではおかしいじゃないか、ということになるかも知れない。その時に説明をして、外国人が1人なら外国人同士がマッチアップして、残り4人は日本人同士のマッチアップしてしまって強化にならないんですよ、と言えば良い。戦力を均等にするにはどうすればいいのか、これについては木村さん(琉球)などアイデアをお持ちのようだから、専門家の話を聞きながら、外国人選手はチームに1人が絶対だとか決めていけば良い。
サッカーの場合は11人でプレイし、そのうち優秀な外国人選手が3人いたからと言って勝てない。でも、バスケで3人外国人が入れば相当強いだろうなっていうのは僕だってわかる。それは専門家の意見を出し合って、チームに1人なのか2、3人なのか、チームによってそういう区分けをするのは、強化のために絶対必要だろうと、僕は思っています。
ー 新リーグへの参加条件について、Jリーグでは芝のピッチであるとか、照明の明るさなど、非常にこまかいハードルを設け、そのハードルを飛び越えてください、というやり方だった。また、別のところではもっと大きな理念、スポーツ文化に貢献するとか、二つの大きな目標設定があった。今回の場合はアリーナがその最低条件に当たるのか?
僕に言わせればアリーナ。これは絶対だね、サッカーが芝なら、バスケはアリーナ。ホームアリーナ。1500人しか入らなくて、誰もプロのチームとして成功するとは思わないでしょ?J2やJ3になれば、プロ選手はチームに2〜3名でいいとか条件は緩和されるけど、これはアマチュアの延長で、誰にもサラリーは出さないから入場者は1000人でもいいよ、ということ。J3ならそれは可能だと思うけど。決定事項じゃないけど、さっきも言ったけどあくまで僕のアイデアとして、プロバスケ選手の年俸は最低1000万円以上。
アリーナが第一で、その場合は行政の許可なくして自由に使えないから三位一体となる。プロバスケチームがアリーナを優先使用できることで、飾り付けもチーム仕様にする。多くのファンが足を運んで楽しめる雰囲気を創り出すのでよろしくお願いします、という話。そのためにチームと行政と地方協会が三位一体で、地方のアリーナの使用に関してコンセンサスを取らなければならない。それも参加条件のひとつです。年俸最低1000万円、僕に言わせれば5000万だけど、独占的・優先的に使えるアリーナが必要である。
アリーナなんとか委員会というのがあって、いろいろやっているそうだが、せいぜい3500人が限界なんて言っているけどこれも今後の検討課題。それに練習場。1週間に5時間、週5日間をしっかりと借りられるのか。企業チームは練習する自前の体育館を持っている。リーグで練習場を確保したりする動きは無かったのだろうか。これについて 調べてないけど、bjリーグのチームはどこも専用練習場を持っていないのではないだろうか。では、どうやって練習しているの?という話になる。bjリーグのスコアを見ていると100点行っている試合はあまりない、60点とか70点とか……いかに練習していないかだと思ってしまう。それはわからないけどね。
ー 2020年東京オリンピックの5年前ですが、経済状況など影響はがありますか?ー
この時期とか経済状況云々というより、リオ五輪に出れるか出られないかと切羽詰まった状況だから。
ー 世の中の状況など、追い風になることはありますか?
それはある。FIBAがこういうことを言ってくれたので、このような状況になった。FIBAの動きがなかったら絶対ダメだったと言える。今は圧力によって動いているけど、なかったら変わりようがない。そういう意味ではありがたいというか、JBAにとっては不愉快なことではあるかも知れないけど、長い先のことを考えれば(今回のことが)きっかけになって欲しいし、なるように努力したいと思う。それが肝心要のところであり、それがなかったら動きようがない。ガバナンス云々なんて、外から言われたくないよな。
理念とかビジョンとか、そんなことまでとやかく言われたくないんだよ。NBLだってbjだって、理念はあるのだから。ただ、それらをしっかりやっているか、そういうことが肝心なのでしっかり外側に向けて発信して、世間に知ってもらうことが大事になる。
(Jリーグ発足時でいうところの)ナベツネさんがいなんだよ。ナベツネさんがいたからPRができた。ナベツネさんはJリーグの恩人。彼の意見に対してああです、こうですとマスコミに対して言えたから、皆さんにJリーグの理念などを知ってもらえたわけです。もう一度、ナベツネさんに登場してもらう?(笑)
パトリック・バウマン事務総長(FIBA/国際バスケットボール連盟)
ー 「JAPAN 2024 TASKFORCE」はなぜ2024なのか?
2024年は10年後を定めたこと。10年という長期スパンで物事を見て、計画を立てて欲しいということで設定しました。
2020年東京五輪はもちろん、2019年ワールドカップ、2024年にまた五輪がやって来ます。その時に日本代表が予選を通過して出場できるためのベース作りをするため、長期スパンとさせていただきました。
2020年は目標にするのではなく一つの通過点であり、そこから日本バスケがステップアップできるようにしてもらいたく、その起点になればよいと思っています。
ー 川淵チェアマンに託した決め手とは?
感覚があったというか、お互いに共有するビジョンが一緒であり、やりたいことが一緒であり、情熱の部分でも一緒だったのだと思います。私たちが求めていたものを川淵さんが持っており、その部分に期待してお願いしました。
ー サッカーでの成功者ということは知っていたか?
もちろんです。
バスケ関係者だけではこの問題を解決するのは難しい。だからこそ外部から招へいするのが一つの手段だと思っていました。
サッカー界での成功をバスケ界にも良い形で寄与してくれると期待しています。
川淵さんはまるで私よりも若いようなエネルギッシュな方です。例えれるならば、F1ドライバーのようです。
バスケ関係者は来年やろうとか、先延ばしにしていました。だからこそ、川淵さんのような人が本当に必要でした。これまでの10年間の問題点を挙げてるだけではなく、どうすれば良いのかについて向き合ってくれる人を探していました。
ー タスクフォースメンバーの選定方法とは?
オリンピック予選もあり、各行政との兼ね合いがある中、いろんな多方面に向けて声をかけて来ました。バスケ関係者もそれぞれのポジションで責任ある方ばかりですから、誰かを特別に指定するわけではなく、タスクフォースには同じようなフィーリングで問題解決を望んでいる人を推薦して欲しいということで、本当にいろんな方面の方に声をかけながら、ミーティングをたくさん重ねて、このようなメンバーに決まりました。
文科省の下村(博文)大臣ともお会いして、何度も話し合いをしてきました。この問題について難しいかと聞かれましたが、そうではない、と自信を持って私は言えます。
今回、結果としてバスケ界のみんなが幸せになれるような形に持って行きたいだけです。
ー タスクフォースによって日本に新たなビジネスモデルが構築されることはFIBAにとってどんなメリットがあると思うか?
FIBAとして直接的なメリットがあるわけではありません。その国自体が、バスケとともに成長してくれることが何よりの狙いです。とくに日本はワールドカップやオリンピックへ向けて、きちんと戦えるようなチーム作り、代表強化につながることを期待して関わってきました。東京五輪もあるので、国際舞台でもっと活躍し、アジアの拠点となれるようになって欲しいです。
ー タスクフォースが成功するためにクリアすべき点は?
それはもうこれからはタスクフォースの仕事であり、FIBAとして一歩離れられることは私にとってはうれしいことです。FIBAとしてはプロセスの枠組みを作り、それを後押ししただけ。今後のミーティングで何を見つけ、どうしていくかはもうタスクフォースメンバーの仕事です。私はそこに関わるつもりはありません。
ー 6月に制裁解除されたらすぐに国際舞台に復帰できるのか?
もちろんです。ただ、男子日本代表が出場しなければならない東アジア予選については、FIBA ASIAが決めること。当面は8月末の女子、9月末の男子それぞれのFIBA ASIA選手権を目指し、6月の制裁解除へ向けて進めて行くだけです。
ー 6月までにどこまで解決してれば良いのか?
3つの軸となるトップリーグをどう作って行くのか、組織の見直し、育成の部分をしっかりオーガナイズし、この先、どう流れを作るかが見えるような状態を作って欲しいです。
インゴ・ヴァイス チェアマン(FIBA財務部長/ドイツバスケットボール協会 会長)
ー 6月までにどこまで解決してればよいのか?
6月が締切期限であり、そこまでに全ての問題を解決しなければ先には進めません。問題を解決した上で、我々タスクフォースは、FIBAへこのようなビジョンが描かれました、これで資格停止処分を解除できます、と提示する必要があります。
ー ビジョンや理念といった川淵チェアマンの回答を受けて (バスケットは半分以上に女子競技者がいるのは素晴らしいことであり、誰もが簡単にできるからこそやる人が多い)
バスケットボールマンではない川淵さんがすごくステキな説明をしていただき、ありがとうございます。
バスケは一人でプレイし、一人で達成感を得られる希有なスポーツです。
ボール一つあればプレイでき、ゴールを決められなくてもボールはまた自分のところに戻って来ます。
バスケットの魅力は誰でもプレイできる、団体競技として友達同士でゴールがあるところに行けば、みんなでプレイできる、学校でもプレイできるのが利点です。
ー ドイツの事例で参考になる点は?
ドイツで得た経験を日本にそのまま写すつもりは全くありません。もちろん過去に得た経験をアドバイスとして提示することはあります。
我々ドイツは組織変革をしました。その時、キーとなったのは専属の職員に対して、もっと責任を持たせたことです。
理事会は専任職ではなくボランティア職です。そこまでに移行するにはすごく時間がかかりました。しかしその結果により、今のドイツ協会はモダンであり、活気があり、そして新しいものです。
リーグ改革も行い、会社組織にしました。協会や各チームから参加したことで、みんなとの連帯感を持つようにしました。当然、各所で摩擦は起きましたが、それぞれが共通のビジョン、一つの目標を持つことによって、1部〜3部リーグの構造組織を作り上げています。
一部リーグは、マーケティング(放映権)や財政に関しても独立して運営しているリーグです。もちろん協会が支援もしています。
独立しているとはいえ、1部リーグの中には代表選手がおり、リーグと協会にとっても牽引力であることを承知しているので、若手の育成にも関連してきます。協会とともに密になってバスケットを盛り立てています。
実はサッカーで有名なバイエルンミュンヘンが3年前にバスケチームを設立し、なんと昨年優勝しました。できたばかりのチームでありながらも、全試合1万枚のチケットを売り、年間予算は1400〜1500万ユーロ(約20億円)。他のチームも経営は安定しており観客数も年々増えています。リーグ全体予算は数億ユーロに上ります。
イツの経験を踏まえ、それを一つの提案事項として、日本の議論のベースになれば良いと思っています。
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泉 誠一