少なくとも前半を見る限りでは、“あの試合” を思い出す人もいただろう。3月3日、横浜ビー・コルセアーズがアウェーで川崎ブレイブサンダースを破った試合は、第1クォーターが30-7、前半を終えた時点で45-17。横浜BCが立ち上がりにたたみかけて川崎を圧倒したところは、同じ川崎市とどろきアリーナで開催された昨シーズンのチャンピオンシップクォーターファイナル第2戦とよく似ている。
異なるのは、前日も勝っていたか否か。前回は勝ち、セミファイナル進出に王手をかけた状況で迎えた試合だったが、CS進出へ崖っぷちという状態で臨んだ今回は前日の敗戦を受けての試合だった。それを踏まえ、須藤昂矢も「ディフェンスから良い流れになったというのはCSのときと同じような展開だったかなと思います。メンバーは変わりましたが、そういう試合ができないとCSも近づいてこないと思うので、今日みたいな試合を続けられるようにしたい」と気を引き締める。
この試合の前半20分間で、河村勇輝が放ったシュートは3ポイント1本のみ(成功)。フリースローも打っておらず、45点のうち42点までは河村以外の得点によるものだった。もちろん河村のゲームコントロールがあってこそではあるが、日本人選手初のBリーグ得点王も見えてきている河村がシュートを打たずに主導権を握ったことは、横浜BCに新たな可能性も見える戦いぶりだったと言うことができるだろう。
その前半、須藤は試合開始から1分34秒で1つ目のファウルを犯すと、その9秒後に2つ目のファウルを取られ、ベンチに下がらざるを得なくなった。そして、後半も開始1分9秒で3つ目のファウル。この事実だけを列記すると、須藤は貢献していないように見えるかもしれないが、青木勇人ヘッドコーチは須藤の働きこそが試合の流れを作ったと明言。「信じることで人は伸びる」と語る青木HCの期待に応え、横浜BCに不可欠な戦力となっていることを改めて証明したのだ。
「今日、最初にアグレッシブにいって2つファウルをして、ベンチに帰ってきた彼をみんなが拍手で迎えたんです。これで今日のディフェンスの強度が保てる、そんな2ファウルだったと思います。第3クォーターもフィジカルに戦ってくれて、その結果3ファウルになりましたが、あれでまたトーンをセットできた。素晴らしいプレーだったと思います。
僕がこのチームに再び来るまではプレータイムに苦しむ時期もあった中で、彼を相手のエースにつけて、開始2分で2つか3つファウルしてその後試合に出ないということもあったんですが、彼自身がディフェンスで期待されてることに感づいて、今のディフェンスのプライドを身につけてここまでやってきたと思います」
須藤自身もディフェンスが自身の武器であることを自覚し、この試合に関しても「やることは変わらないし、徹底できた」と自負。ファウルトラブルに陥ったとはいえ、時としてそれにも大きな意味があるということをわかっている。
「誰かがプレッシャーをかけたり、アグレッシブにディフェンスするというのは他の選手にも影響を与えると思いますし、1人ひとりのちょっとずつの頑張りが連鎖していくと思うので、ファウルにはなってしまいましたが、今日に関しては良い方向に働いてくれたかなと思います。ディフェンスを期待して試合に出させてもらってるということはすごく感じてますし、期待してもらってる以上、コートの中でしっかり表現していく責任があるという自覚を持ってプレーしてます」